特別寄稿 第三部 ”カド号千里を走る   俊水 (c)
類は車輪を二度発見することはできない…か?

 拙僧の草庵では、土日が休み、年次有給休暇が40日、そのほか国民の休日とさらに年末年始とお盆休みとゴールデンウィークがそれぞれ10日間、さらにさらに県民の日が 1日、そこへ叔母さんが死んだりすれば読経休暇が 3日、猫の不妊手術に 1日 え−と え−と
ともかく、ペダリングの負荷率より低い稼働率である、われらが労働組合 僧坊ユニオンズは偉い。
そんなの ありかよ、と諸氏は驚くが、この事実を発見したときの拙僧も、宇宙の大原則に仇(あだ)する悪魔の仕業かと驚愕したものである。(僧坊ユニオンズに驚愕したのではない、ペダリング負荷率に驚愕したのである)
 永い間秘匿されてきた神のトリックを、今回、“ペダリングと筋肉の相関”として陽の元にさらけ出したのは、自転車 200年の歴史、ダ・ヴィンチから 500年の歴史のなかで初めてのことと自負する。
リタイヤ間近の団塊諸氏のなかの、肥満削減に悩む大多数のおじさん体型者に、ひとりでも多く自転車へ目を向けてくれる、奇篤の志の現れんことを真に願うからである。

 ペダリングについてさらに考察する。
3時間で84.4kmを走破した彼のその後である。
躊躇せず三本目を走り続ける彼の足元に注目してみる。
彼 の自転車はロードレーサーだから、当然ペダルはヴィンディングタイプである。専用の靴の底はカーボンで出来ていて、その理由は軽量化だが、カチカチで履い てかがんでも反らない。底部の前三分の一くらい、親指の付け根のグリグリに当たる部分にペダルシャフトのセンターがくるように位置調整したクリートと呼ば れる装置が付いていて、靴底とペダルを強固に結合する。
この靴を履いたまま地面を闊達に歩くことは出来ない、靴底よりクリートが出っ張っていて砂利やコンクリートの上を歩くとたちまち磨り減ってしまう、せいぜい休憩時にトイレ内を歩く程度である。靴底が反らないからロボット歩きでガチャガチャと音を立てて進む、
もしあなたがトイレで用を足しているとき背後からガチャガチャ音が近付いてきたら、急いで用を済ませ便器をガチャガチャ君に譲ろう、彼はレース中だから急いでいるのだ。
親指の付け根のグリグリ部分を拇指球という。ここでペダルを踏むのが最も効率的といわれ、たしかにその通りだ。
届 いたばかりのロードレーサーの運転性に馴れるまで数日、ママチャリから借用したペダルと運動靴で乗ってみたが、もしも土踏まずでペダルを踏んでいると、土 踏まずと拇指球間の距離のぶん靴先が前に出て、ハンドルを切ったとき前タイヤと靴が接触干渉して急制動が掛り、落車しそうになったことがある。それ程まで にロードレーサーのフレームは寸法的にきつきつに出来ているのだ。スパルタン まさにその通りだ。
ヴィンディングペダルを買うと専用クリートが付いてくる。
靴にはどのメーカーのクリートでも取り付けを可能にするネジ穴が用意されている。
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