特別寄稿 第三部 ”カド号千里を走る   俊水 (c)
類は車輪を二度発見することはできない…か?

 ヴィンディングペダルでない自転車、ママチャリのような自転車でも引き脚効果はある程度まで出せる。
足裏に意識を集中して、下死点を過ぎたらふくらはぎ側の筋肉に気を送り、ペダルにトルクを掛け続けるように意識してペダリングするだけで、車体の進み具合がなめらかになり、自転車の速度が上がること、ペダリングが楽しいこと、違いが明らかにわかるはず。
靴裏に付いた泥を道端の堅いところに擦り付けてこそげ落とすときの足の感覚、あれをイメージして裏側筋で引き上げるように回せば、超回復も発生する。
タイヤのエア圧とサドルの高ささえ適正なら、ママチャリとてあなどれぬパフォーマンスを発揮するノダ。
引き足を意識した乗り手が漕ぐママチャリの、後ろについて走るのは気持ちがよいものだ。
車体が左右にプレることもなく、自転車と乗り手が渾然一体となって、シャ−ッと走りシューッと曲がる、静かなのに速い、後ろについて走るのが楽しい、追い越すのが惜しくなる。こんなママチャリの奥さんは、決まってふくらはぎの綺麗な、飛びきりの美人なのだから。
 超回復とはいえ、回復しきれない疲労はもちろん蓄積してゆく。
無限に走り続けることは不可能で、その距離は拙僧の身体能力の場合、平坦路ならフルマラソンの四倍、約 170Kmと考えている。
ただし所要時間は 1.5時間の四倍= 6.0時間という訳にはゆくまい、止まっての補給やトイレにも行きたいから 7時間はみて欲しい。
 一本の脚を前側筋、裏側筋と 自動的に使い分けることで脚二本として使える、左右あるから 2×2=4本脚ということになる、そこへクランク一回転につき出力の時間帯が左右交互に回ってくるから 2回×4本= 8本脚、
ランナーは 2脚である。2 対 8=1 対 4すなわち四倍
 神のトリックにより私たちの自転車は、マラソンの四倍の効率を手にいれた。
ウルトラトライアスロンといわれるアイアンマンレースで、バイクパートの最長距離が180Kmに設定されているのは、180Kmが人間の競争での限界と経験的に知ってのことだが、では何故 180Kmなのか? との問いには、
180Km/6.0時間 は、フルマラソンの四倍以上に相当するのさ、鉄人だけが成し得ることさ、と答えるしかない。
 鉄人たちはバイクのフィニッシュ手前でシューズのバックルを緩め靴をペダルに残したまま足を引き抜き、ラインを越えるやバイクを飛び降りランシューズを求めて裸足で走る。
無人で暴走するバイクに防護服とプロテクターのスタッフが飛びつく。
鉄人は自分のシューズを鷲掴ん(わしづかん)でさらに走る、走りながら靴を履く。
ライバルの猛追を振り切り一秒でも早く靴を履いてランのコースへ進むため、鉄人はランシューズの靴紐(くつひも)を手造りのゴム入りに替えて一発で履く。
なんという執念だろう、この先42Kmの山坂をランで越えるというスタートに、靴履きなが
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