特別寄稿 第三部 ”カド号千里を走る   俊水 (c)
類は車輪を二度発見することはできない…か?
ワールドスタンダードの自転車業界であるが、ペダルと靴クリートに関しては、スポーツウエアメーカーや変速機メーカーも参入し、各社それぞれの意見が別れ、着脱のし易さ、回転の確実さや、国定圧の調整、重量、車体を傾けたときどこまで地面との干渉を避けられるかなどで形状の合意が得られず、自由競争の商品となったが、選択、取り付けの自由度ではワールドスタンダードがかたくなに護られている。
着脱の容易さではスキー用ヴィンディングをはるかに勝る。装着はエッジを合わせて踏み込めばシャキンと嵌まる(はまる)。足元を見ず、視線を前方の路上に置いたままシャキンと決めるのが玄人の粋である。
脱出はさらに簡単で、足首に気を集中し踵を外向きに5度ひねるとフッと外れる。
これが順調に外れないと、信号待ちで停車したときに大変なことになる、自転車とカラダがおつながりしたまま不様に倒れる、いわゆる立ちゴケという、ただでさえ目立つロードレーサーである、衆人環視のなかの立ちゴケは玄人としてはやってはならぬ大失態である。
 人間力を総力してクリートへ出力し、ペダルへ入力してクランクで倍力する、一連のパワー伝達をスムーズにまとめる最後の仕上げがQファクターと呼ばれる微調整。
人間力の出力点は拇指球、すなわちクリートセンターだと前述した。
ドライジーネ 1817年(文化14年)

日本がまだ鎖国をしていた1817年、ドイツのドライス伯爵によって発明された世界最初の自転車。

ほとんどが木製で、ハンドルがついていたので、方向を変えることはできた。しかし、ペダルは付いていなかったのでまたがって地面を足でけりながら進んだが、時速15kmを出した記録もある。
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