特別寄稿 第三部 ”カド号千里を走る   俊水 (c)
類は車輪を二度発見することはできない…か?

溜まりも越える。
 神のトリックとは、「左右の脚でペダルを交互に踏む」この部分に隠されていた。
詳しくお話ししよう。
ペダルは脚からの動力を受けとめる役割、180度位相の異なる左右のクランクに取り付けられている。上死点をすこし過ぎたところからグイと踏み下げられ下 死点までの間で動力を受け取りギヤを回す、下死点を過ぎてからは次の仕事のために上死点へ向けて上昇して行く、このとき動力の授受は行なわれない。上死点 へ向けて上昇して行くのは慣性と反対側ペダルがグイと踏み下げられることによる反力による。
クランクはクランクアームと呼ぶのが正しい、アームだから長さが重要であるが一般には頓着されていない。
適正ア−ム長は乗り手(漕ぎ手と言うべきか)の身長×10%といわれているが、身長サイズで一括りする考え方には賛同できない、自転車発祥国 の人々の骨格と日本人の骨格、筋肉は同じではない、サドルに跨がってペダルまでの脚長で割り出すべきと常々主張しているのだが、まぁいいか。
5mm飛びにサイズと形状 素材の異なるクランクアームが自転車店に用意してある、一本一本とっかえひっかえして自分の好みや体力、レースコースの特性に 合わせて最大トルクを引き出せる、最適のアームを見つけ出す作業はじつに楽しい。拙僧は 170mmと 165mmを使い分けている。
アームの長いものは軽く踏み回す感覚が得られるが、下肢の回転半径が大きくなるから運動で消費する熱量は、短い場合と結局同じ。例の法則通りなのだ。
ちなみに、自転車の構成部品には一定の規格があって、プロのレース専用に特化したものを除けば、どこのメーカーの自転車でもピッタリ取り付けできる、ネジが合わないなんてことはけっして起こらない。
「ドライジ−ネ開発公社」が最初に定めたこの規格は200年の時を経ても脈々と受け継がれ、新機構が考案開発されると、最初に実用化して市場に送り出したメーカーの規格、技術がワールドスタンダードとなる。
現在、世界中のあらゆる工業製品、商品のなかでワールドスタンダードの考え方を取り入れ尊重して、技術に凌ぎを削っているのは、自転車産業ただ一業界だけである。

 すこし話しがそれた。神のトリックのはなしである。
自転車でフルマラソンのコースを往復し、まだまだ走れると豪語する彼は特別な訓練を積んだエリートなのだろうか、ランナーが3時間で走った同じコースを自転車の彼は二倍の距離84.4Kmを走り終えて、なおも走れると言う。
疲労度はこの時点でランナーと同じで一杯いっばいになっているはず、最初のスタートでふたりの身体能力はほぼ同等と書いた、あれは嘘だったのだろうか。
神のトリックとは、「左右の脚でペダルを交互に踏む」この部分に隠されている。
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