特別寄稿 第三部 ”カド号千里を走る   俊水 (c)
類は車輪を二度発見することはできない…か?

しでこの糖質を素早く分解して収縮エネルギーに変える。
(すね)と腿の前側の筋肉が速筋繊維でできていると考えてよい。X線で透視すると白い。
一方、遅筋繊維は脛(すね)の裏側筋すなわち、ふくらはぎ、太腿(ふともも)の裏側筋すなわち、ハムストリングを差し、姿勢制御をつかさどる。X線透視では赤く映る。
この筋繊維は有酸素運動でよく働き、収縮速度は遅いが疲れにくく長時間の運動に耐える。
毛細血管とミトコンドリアが豊富で、血液で運ばれた糖質や脂質をミトコンドリアでATP(アデノシン三リン酸)に変換しエネルギーを得ている。有酸素運動を続けると毛細血管が増え、ミトコンドリアが活性化してスタミナがアップする。赤筋繊維ともいう。
  自転車のペダリングは、上死点をすこし過ぎたところから下死点手前までにトルクの伝達が行われると前に書いた、この期間、脚の筋肉(速筋繊維)は収縮の最 大値を示すが、下死点を過ぎると弛緩する、この期間は位相180度遅れの反対側の脚の筋肉が収縮の最大値を示す番だ。ポイントはここである。筋肉は収縮と 弛緩、収縮と弛緩、を繰り返し、繰り返して自転車を前に押し出す。
収縮と弛緩、言い換えたら、運動と休息と言えまいか。神のトリックとはこのことである。
なんと、自転車乗りの筋肉は走りながら休息しているのだ。漕げば漕ぐほどリフレッシュしているのだ。踏めば踏むほどパワーアップしているのだ。
筋肉は収縮から弛緩にモードを変えた瞬間、超回復により筋繊維を整列修復させ、次の収縮のときには筋力を増強させて、負荷に立ち向かうのだ。
超回復には2〜3日の休息が必要とされている、たしかに体幹部の大きな筋肉が疲労すると回復まで時間を要すのは本当だ。拙僧が体験的に言えることは、ペダルに直結する 踝(くるぶし)やふくらはぎ、ハムストリングなどの筋肉は、超回復の時間が早いということだ。
限界の垣根を越えてしまうもっと手前で、酸素と補給を切らさずに運動を続けるならば超回復は運動中にも期待できる。
それと、ここも大事なポイントなのだが、ペダリング時の負荷は非連続であること。
何度も言うが、乗りだしの最初のひと漕ぎを除けば、連続回転中のペダル負荷は、上死点をすこし過ぎた10度くらいから始まり、下死点手前 175度くらいまでの 165度が負荷の範囲である、残り 195度は無負荷つまり弛緩の超回復期間なのだ。
上死点から下死点までの全域 180度でトルクをクランクへ伝え切れないということは容易にご理解いただけるはず、真上と真下の位置のペダルにはいくら体重を掛けても動かないこと体験済みのはず。ちなみに90度位置での伝達トルクが最大になる。
  ペダル回転期間を時間で表すと、60回転/分でペダリングした場合、膝は一秒間に1回転する、つまり360度/秒(これをt0とする)踏み込みの 165 度を回転させるに要する時間すなわち負荷を背負う時間(t1)は 165÷360 = 0.458秒、引上げ回転に要する時間すなわち無負 荷の 195度を回す時間(tz)は 195÷360 = 0.542秒。
働いている時間より休んでいる時間のほうが長いのだ。超回復に当てる時間はタップリとあろう。
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