特別寄稿 第二部 ”風の考察   俊水 (c)
ったりと 落ち着きのない男なのだ、 ワシなら全然構まわんぞ。
「あのー お坊さま そろそろカタログを御覧あそばして…」
「ご亭主 そう慌てるな また来る」
悠然と席を立つ拙僧 悄然と首うなだれる店長。
店を出しなに ふと振り返り
「おお そうじゃ ご亭主 その一番いいやつをな 一台、所望すぞ 入荷は明日か ん」
「あいやー お坊さまー とほほ〜 これ かかぁ お坊さまにご酒(ごしゅ)をお出ししろ、ご契約だ 早くしろ 寿司も取れー 表を閉めて芸者を呼べ〜」
泣き顔の店長が恐る恐る釈明するには、世界の自転車はヨーロッパ車の極一部 超一級の高級車を除きフレームの溶接は全て台湾にて行なわれ、日本国内へはフ レーム単体が輸入される、そのフレームに各ショップの店長が経験を駆使し系列店と相談しつつ、 フォークやクランク ギヤやシフタ
 ブレーキ ホイール など構成機材をユーザーの予算と目的 好みに合わせ、世界の一級品から汎用品まで全て網羅のインターネットで取り寄せ、店長みずから腕を振るってグリスも 塗って、センタリングとバランス 締め付けトルクやベアリングの締めしろに細心の注意を払って組み上げにかかる。 リムのスポークはもちろん手組だ。
「だから納期に一ケ月、あっしゃーね こう見えても かつてヨーロッパを転戦したチームHEPPO.comの専属メカニック。 マイスターの認定証を見てくだせー、お坊さまの足腰にピッタリの一台、必ずや組み上げて見せやーしょう」
お酒の入った店長に、こう啖呵を切られては 拙僧応えずにはいられない。
「気に入ったぞ ご亭主 存念の一台 みごと組み上げてくりゃれー 芸者はまだか

正月初日から表を閉めたサイクルショップのラウンジで、店長と にわかコンパニオンの“かかぁ” 弟子と拙僧の四人 さんざんすっかり盛り上がり、夜遅く“かかぁ”の運転する軽トラの荷台に粗雑に積まれて家に帰った。

 一ケ月後 ピカピカの「カド号」と ピチピチ派手派手のサイクルウエアが“かかぁ”の運転する軽トラに積まれて届いた。

さあ いよいよ ここから本題の オールドバイカーズ編の始まりだ。
アドレナリン沸きあがる 次号の発売を待て。

2006-02-23 俊水
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