特別寄稿 第二部 ”風の考察   俊水 (c)
「何を小癪な 経験不足の若造供め、みごと果たせるか掛かって参れ 返り討ちにしてくれるわ」
この御仁もまた 永い政界競泳のなかで「抵抗こそおのれを鍛えてくれるメイトである」と達観されたものであろう。
 精神論的にはそれでよいとして、さて実際にわれらの心臓のはなし。
心臓を始めとするからだの臓器は成長期を過ぎれば、その後のトレーニングで強化されることはない。 会議だ接待だと無節操な飲み食いの果て、脂肪太りの今の体重を成長期の最後の時期に想定し得、さらにそれに備えて強化した心臓他の臓器など聞いたことがない。
若いときの抵抗に見合った、必要十分の臓器しか用意されていないのだ。
と なれば、心臓も肝臓も成長期最後の時期の体重しか支えきれないということになる。
現在体重が19才のときのそれを25%以上うわ回っているひとで、喫煙習慣のあるひとは、走ってはいけない 階段を登ってもならない、エレべ−タを使うべきだ。
明日 いや今すぐ心臓が止まって死んでも何の不思議はない、病死でも事故死でもない、自然死だが天寿全うでもない。検死票には、首をすくめて両手を肩の前 で広げるポーズがサインペンでなぐり描きしてあるだけだ、保険支払い欄はNGに丸印 自己責任の文字に二重線が引いてある。
軽くてスリム しなやかなレスポンス 内に隠した「絶対無敗」の闘争心 アスリートへの条件はどれを取ってもオジサン達に味方しない、辛く厳しいのは当たり前である。
不摂生のつけが回って来ただけのこと、宗教用語にて輪廻天誅という。
ど−だ 世の小肥りオジサンども まいったか−
「これはいかん 何としても体重を減らさんと 定年まで持たん ローンが済まん」
そう思った団塊sのあなた、もう遅い。 三年前なら間に合った 拙僧がバイクを始めた時期なら間に合った。
この三年の意義は大きい、なにしろXデーまであと一年 なのだから。
あきらめて今すぐ『植村直美冒険賞基金 俊水係り』に賛助の一口を振り込みなされ。

 拙僧の自転車 最初の年に買ったフラットバ―のクロスバイク「カリフォルニア‐ドリーム号」略して「カド号」は堅牢ながら軽量優美 高い走破性と高速巡航性を兼ね備えたリムサイズ700cスローピングフレームのオールラウンダ−である。
初めて入った正月初売りセールのサイクルショップで、足元から天井まで ところ狭しと展示してある色とりどりのスポーツバイクを、藍染め作務衣の尻ポケットに両手を突っ込んで眺めていた。
「いや−たまげた進化だわ 装備重量8kgとは、宇宙ロケットの技術革新を遙かに凌ぐ、宗教用語でいう処のヌーベルバーグっちゅうもんかいの−」
拙僧 正直な感想をつぶやくところへ、この店の店長(あるじ) 下卑た愛想笑いを浮かべ揉み手をしながら近付き、
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