特別寄稿 第二部 ”風の考察” 俊水 (c)
|
|||||||||||||
「お坊さま お孫さまにお祝いの自転車でございますか?幼稚園? それとも一年生? 男の子 ?女の子?」 拙僧 いささかムッ としながらも、そこは僧籍の身 温厚に答える。 「これはご亭主、かたじけない 拙僧は戒律により妻も子も持たぬ 孫などあろう筈もない、実はの オホン 近う寄れ 実はの ケホン 乗るのはワシじゃ」 「ひええぇ〜 お坊さま〜 本当でございますか〜」 陽当たりのよいショップの隅のラウンジでコーヒーとケーキを出され、般若湯は出ないのか、などと思いつつ自転車乗りを決断するに至った経緯を話す。 拙著の定期購読読者諸氏には前作『ニュージーランドでへらぶなを釣る』にて細密ご紹介した拙僧の奇病、「大腿血流不良性歩行困難症」 病院では血流改善の点滴や投薬を受けるが一向に良くならない。 薬店や通販でビタミンEやコラーゲン、ヒアルロン酸やらグルコサミン硫酸 プロティンやら鮫の軟骨 黒酢 黒汁 黒胡麻 黒豆 温泉療法 800ガウスの電磁治療器まで試したが、一向に良くならない。 歩くと膝の上あたりから腰にかけ痺れるように痛む、筋肉がバラバラになるように痛む、とても立ってはいられない、しゃがむか座るかして休むと楽になるが、歩き出すとまたすぐに筋肉内の酸素が切れて痛み出す。寒い時期は特に辛い、朝ベッドから出る最初の一歩がすでに痛い。 医師は運動を勧める、体重を減らし筋肉を強化しろと言う、具体的なスポーツ種目として、スケートと自転車の名が挙がる。 減らした体重÷増えた筋量×100=筋負担率 これを下げろと。 なるほど、今や議員先生となられた氷上のマドンナ、聖子選手の太腿 腰回りの筋肉を手に入れて、血流不良を筋力で圧倒しようとの作戦。 よし それならばと“富士霊園”へ住職希望の履歴書を送る、富士の麓に就職し“富士急ハイランド”でスケート三味の毎日だ。 ところがこの名案 なぜ見破られたか一向に分からぬが、宗派の違いを理由に門前払いとなる。 フンだ かようなる狭き了見にはもはや頼まん、世界の平和を祈る者が宗派の違いなど口にしてどうする、 ワシなら全然構まわんぞ。 残るは自転車 中野スプリント名人の太腿なら「絶対不敗」間違いなし、よーし これだ。 拙僧が次の世界大洪水まで生き残り、第二ノア箱舟号で海を越え イタリアはローマバチカンに乗り込んで、世界大僧正となる日は近い。 ツ―ル・ド・フランスのスポンサー権はバチカンが握る。 二杯目のコーヒーがうやうやしく差し出されるまでに、ここまで話す 一時間。 拙僧の話しに店長、相槌打ったり 驚いたり うなづいたり 振り返ったり 頭を掻いたり 電話を取ったり 時計を見たり トイレに行ったり 工具を落とした弟子の店員を叱 |
|||||||||||||
|