特別寄稿 第二部 ”風の考察   俊水 (c) 
を両手に摘んでバサリひと振りすれば皺も消える。 ためしに摘む位置を両端の合わせ目に変えて同じ要領でバサリとやってごろうじろ。
左右の上腕二頭筋と三頭筋 グワシと感じる大地の力、これが空気の重さ 空気抵抗 エア−レジスト。
この重さ分を曳きずって、さらに前に立ちはだかる空気の壁をおのが肌を刃(やいば)に変えて、切り裂いて押しのけて 切り開いてすり抜けて 切りかかってねじ伏せて しゃにむに進むのが自転車だ。 格闘技である。
オリンピックのスキー競技 回転、選手たちはカーボン繊維のウエアの肘に防具を内装し行く手に立ちはだかる旗門の林を必殺の肘打ち技、払っては裂き 払っ ては砕き 払っては断ち、接触抵抗に速度を失うどころか旗門バーの反発力を推進力に昇華して背中を押させ、しゃにむに進む。
彼らは皆 あの最強の剣法、「絶対無敗 二天一流 宮本武蔵『喝吐切先返』」の技を完璧に駆使体現しているに違いない。
 風とは空気密度の密エリアから疎エリアへ大気が移動するときの、秒あたりの移動距離をちから(フォース)として とらえ表したもの。
転じて ある種のちから たとえば、権力に立ち向かう民衆の意思のうねり と言ったものを風という。
だがここで民衆運動について語るのは危険である、鉄格子から昇る月は青白く冷えびえとし、飢餓と寒さの夜が拙僧の読経の邪魔をする。
おいおい何を言い出すのだ 戻せ 本題に戻せ。

 正面からの風にからだが押し戻されるのは、密度の高くなった空気 言い換えれば向かいの堅い空気を切り裂く刃の切れ味が鈍っている、というべき。
つまり前面投影面積のでかいデブでは空気抵抗がそのときの自転車速度の二乗倍プラス空気速度(風速)の二乗倍となって、デブ面(めん)の隅々を後ろへ押しつけようと働くのである。
さらにデブでは体重も重かろう、自転車には垂直方向に重量がのしかかり自転車をその場に留め置こうとする抵抗力も作用する。これを ころがり抵抗という。
前に進むとき、速度が早ければ早いほど、形状ではデブほど空気抵抗が増し、重ければ重いほどころがり抵抗が増す。
冷静に考えてみたい、無風状態のなかでバイクに跨がって止っているとき、自転車と乗り手に関わる抵抗はゼロである。だから心拍が上がることも体温が上昇し て汗が滴る(したたる)こともない。 スポーツトレーニングとは筋肉に負荷をかけ、心拍を上げて大量の酸素を血中に取り込み、脳を興奮させて全身を奮い立 たせること。 と簡単に結論づけるなら抵抗は敵ではない、無くてはならないメイトである。
本編第一部第一ページにご登場戴いたシャチョ−こと小泉某氏が、越えても払っても次々現れる抵抗勢力の攻勢に対し、眉根をヒクリとさせるや
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