特別寄稿 ”われら団塊S” 俊水 | ||||||||||||
…ガラリ戸が開き 若奥さん「はいハチ ごはん、あんた年なのによく食べるねぇ」 ハチゴロ−の食欲は己欲にあらず、先々々代 初代ハチより受継がれし伝家の DNA 脈々満々とハチゴロ−の体内に溢れ 五代目だからハチゴロ−。 初代より きつく申し送りの主人面影を頼り 今日帰らぬならまた明日と10里の道をひた走る。 行って帰って往復20里 この体力保つなら 何を言わりょと何を出さりょと すべて食べます食べてみせます若奥さん。 あっしゃ―ね 若奥さんが写真でしか見たことない 博士先生の顔が分かるんだ、 匂いだって 声だって覚えている、 いいかい こーやって上と下 両のまぶたをぴったり合わせりゃー思い出す せんせー。 逢いてぇなぁ 今夜こそ先生が電車から降りて来るぞ、山高帽にステッキだ 背が高くって素敵(ステッキ)だねぇ 聞いてるかい 洒落(しゃれ)言ってるんだよう じれってぇな。 こうゆうふうに少し斜(はす)になって改札を出て来るぞッ。 よーっ団十郎! 大向うから声が掛るよ なに言ってやんでい!オレの先生だい 食いつくぞチキショウメ。 「おおハチ待たせたね」 なんてオレの前に来るよ オラ−飛びついちゃうよ本当に。 顔中ペロペロしちゃうもんね んー♪ 早く夕方にならないかなー (博士先生と同時代 月の家円鏡という芸人がいた 彼の芸風で読んでネ) ハチゴロ−折角の独演会だが若奥さん 向こうで洗濯物干している。 畜生と侮るなかれ 拾われ育てられた大恩 一緒に遊んだ先生と転びまろびつ走った夕日の土手道の記憶、鮮やかに子に残し孫に伝え アドレナリンをアミゴナリン(ハイパ− マッスル)に変えて日毎(ひごと)20里を走るアスリ−ト、ハチの情熱。 初代から数えたらハチの駅詣出、千日をはたして幾つ重ねたか。 人にも出来ぬ大阿闍梨 あっさりとやってのける強烈な想い。 一宿一飯の恩義をはるか超越してこれは愛だ。 いきものに あまねく共通する唯一は愛だ。 畜生などという言葉 国語辞典より抹消してしまうが相当。 |
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