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特別寄稿 ”われら団塊S”   俊水
…この アミゴナリン、効力は絶大で 古くより火事場くそ力として知られ、瑞穂国(みずほのくに)のへラクレス田力王命(たじからのみこと) 天の岩戸こじあけ事件や 極真空手(ゴッドハンド)マス大山の猛牛脳天割りなど枚挙にいとまがない。
 じつはこれが、伝説のランナーズハイ現象である。
ドーピング違反とは無縁 別次元のものであること明白。
これぞ合法麻薬(ハイパ―ドラッグ) 否 これこそが不老不死の妙薬。
それでなくて何であろう 他に説明がつこうか。
 伝説は本当だった。

 世のアスリート、ランナーズハイをひとたび知るや それ忘れがたく、ハイ現象の早い現出とその持続を渇望し、自ら望んで敢えて苦行の道を辿りおのれの肉体を痛めつけてハイの到来を待つのである。
 アスリートと呼ばれる人、間違いなくマゾヒストであろう。                               
その典型が、峩々(がが)たる山々を喜々黙々と千日駆ける修行僧であり 棘(とげ)薔薇に打たれながら十字架を背負いて歩む スーパー スター ジ−ザスクライストであり 炎熱百魔の大砂漠(タクラマカン)で清(さや)かに微笑む玄奘三蔵であり 涅槃に横たう妖艶の釈迦である。

 そういえばよくすれ違うあの犬、砕け飛ぶ拙僧の汗のなかに微か漂う同種族(アミゴナリン)の匂い、さすが嗅覚専門職 敏感に嗅ぎ取ったに違いない。言葉交わすうち 思わぬ彼の素性を知る。
名前は渋谷ハチゴロー 毎日日暮れに駅前に座り主人博士の帰りを待つという。
もう何年も終電まで待ちこがれ 暗い夜道をひっそり走り 冷たい犬舎で寂しく夜を過ごす。
朝日昇れば今朝こそはお見送り、玄関前に勢いよく座り千切れるほどに尾を振ればタイルは扇型に摩耗す。
玄関に人影近づきハチゴロー 心拍150 尾振り100 さあ!いよいよアドレナリン
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