■ 定年時の社会保険基礎知識 |
- 会社勤めをしていても、「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格のある者は年金が受給できます。
受給額は、「総報酬月額相当額」と、「老齢厚生年金の月額」の合計額によって変わり、一定以上の収入があると受給できません。
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- 老齢厚生年金の月額
- 経過的加算額(加給年金額)を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12の金額(月額)。
- 総報酬月額相当額(給与・賞与の月額)
- 「年金事務所に届出た標準報酬月額」+「その月以前一年間の標準賞与額の総額÷12」
60歳台前半(60~64歳)の在職老齢年金
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65歳以後の在職老齢年金の計算方法
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- 「合計額」が47万円に達するまでは、年金の全額が支給されます 。
- 「合計額」が47万円を上回る場合は、年金受給額=「老齢厚生年金の基本月額」-(「合計額」-47万円)÷2。
- 昭和12年4月1日以前生まれの者は、調整対象ではありません。
- 老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります。
- 70歳以上については、厚生年金保険の被保険者ではありませんので、保険料負担はありません。
- 退職日まで継続して2ヵ月以上健康保険の被保険者期間がある人は被保険者の資格を喪失した日(退職日の翌日)から20日以内に申出をすれば、2年間任意継読被保険者となる。
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- この場合、被扶養者については、引き続き要件を満たしていれば、そのまま被扶養者となることができる。
- 任意継続被保険者の被扶養者となる場合は、国民健康保険被保険者資格取得の手続きをする必要はない。
- 国民年金第3号被保険者である無職の妻は、未の退職後、国民年金第1号被保険者に種別変更をして60歳まで国民年金に加入する必要がある。なお、種別に変更があったときから、14日以内に届出をする必要がある。
- 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある被保険者(60歳以上65歳未満)の60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下した場合、「高年齢雇用継続基本給付金」が支給される。
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- 高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以上65歳未満で一定の要件を満たした人が受給でき、65歳以上の人は受給することはできない。
- 支給対象月に支払われた賃金が、支給限度額以上の場合、60歳到連時の賃金の75%未満に下がっていても高年齢雇用継続基本給付金は支給されない。
- 最高で賃金額の15%に相当する額を支給。支給限度額は毎年8月に見直される。
- 「高年齢雇用継続給付」と「在職老齢年金」の受給要件を満たした場合
- 在職老齢年金は、併合調整により60歳以降賃金(標準報酬月額)の最高6%が減額される。
- 厚生年金保険の被保険者で、特別支給の老齢厚生年金など65歳になるまでの老齢年金を受けている者が雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受けられるときは、在職による標準報酬月額に応じた年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止される。
- 老後の所得保障である老齢厚生年金と、再就職の意思を待った人への生活保障である雇用保険の基本手当と、趣旨の異なる保障を同時に受給するのは不適切という考え方により、同時受給はできない。
退職後、公共職業安定所(ハローワーク)に求職の申込みをした月の翌月から、基本手当の受給期間が経過するかまたは所定給付日数分の支給を受け終わるときまで60歳台前半の老齢厚生年金の支給が停止される。
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■ 退職金
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- 退職金の所得税額=「退職所得金額」×所得税額
- 「退職所得金額」=(退職金の額-「控除額」)×1/2
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勤続年数 |
控除額 |
20年以下 |
「勤続年数」×40万円(最低80万円) |
20年超~ |
(「勤続年数」-20年)×70万円+800万円 |
- 勤続年数
- 勤続年数に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げる。
- 同じ年に2ヵ所以上から退職金を支給されたときは、それぞれの退職金の計算期間となる勤続期間のうち最も長い期間で勤続年数を算出する。
退職金の計算基礎となった期間に、最も長い期間と重複しない期間があるときは、その重複しない部分の期間を最も長い期間に加算して勤続年数を算出する。
- 退職年金
- 大企業が行っている各企業の独自積立、厚生労働省所管の独立行政法人が運営する中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度なども退職金の一種として挙げられる。
- 退職金を一時金でなく年金で受け取る場合、雑所得となり老齢厚生年金と同じく「公的年金等の雑所得扱い(公的年金等控除対象)」となる。
- 相続税法上、「みなし相続財産」となる退職手当金
- 中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度。
- 新規加入助成
- 新しく中退共制度に加入する事業主に対して、
(1)掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成する。
(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者については、(1)に次の額を上乗せして助成する。
- 掛金月額2,000円の場合は300円
- 3,000円の場合は400円
- 4,000円の場合は500円
- 掛金納付月数引き継ぎ
- 中退共に加入している企業を退職した従業員が他の企業へ就職した場合、就職先の企業が中退共に加入していれば、退職して2年以内に申出を行うことにより、前の企業での掛金納付月数を引き継ぐことができる。
- 「中退共制度」と商工会議所・商工会等が行う「特定退職金共済制度」との間で相互に退職金相当額を通算をすることができる。
- 中退共と特定退職金共済団体との間で、退職金相当額の引き渡しまたは受け入れに関する契約を締結している場合に限る。
- 退職金
- 退職金は中退共から退職した従業員へ直接支払われる。
- 退職金または解約手当金を受け取る権利は、被共済者である従業員本人(従業員が死亡した場合は遺族の方)に限る。
- 被共済者が未成年者であっても親権者や後見人の同意を得ることなく独立して退職金等を請求することができる。
- 退職金額
- 退職金額は掛金月額と納付月数に応じて定められている。
- 退職金は、加入後11ヶ月以下の場合は支給されない。12ヶ月以上23ヶ月以下の場合は掛金納付総額を下回る額になる。
- 過去勤務掛金の納付があるものは、11月以下でも過去勤務掛金の総額が支給される。
- 掛金月額を減額する場合は、従業員の同意が必要。従業員の同意が得られないときは、現在の掛金月額を継続することが著しく困難である旨の厚生労働大臣の認定書が必要。
- 退職金は、「基本退職金」と「付加退職金」の2本建てになっているが、付加退職金は運用状況によっては支払われないことがある。
- 退職事由により減額されることはない。ただし、懲戒解雇の場合は、減額されることがある。
- 退職金が減額された場合、その減額分は事業主に返却されない。
- 退職金の受取方法は、一時払いに限らない。一定の要件を満たしていれば、5年間または10年間にわたって分割して受け取る分割払い、一時払いと分割払いを組み合わせて受け取る一部分割払い(併用払い)の2つの方法がある。一時金として受け取った退職金は退職所得となる。
- 全額分割払いの要件
- 退職した日において60歳以上であること。
- 退職金の額が5年間の分割払いの場合は、80万円以上であること。
- 10年間の場合は、150万円以上であること。
- 中退共では、融資は行われていない。
- 「特定退職金制度」とは、個人事業主又は法人が、所得税法施行令第73条に定める特定退職金共済団体(商工会議所、商工会、商工会連合会等)と退職金共済契約を締結し、加入事業主に変わって特定退職金共済団体から被共済者(従業員)に直接退職金等の給付を行う制度をいう。
- 「中小企業退職金共済制度」が「中小企業退職金共済法」という法律に基づいて設立されているのに対して、この制度は地域の商工会等が国の承認(所轄税務署長の承認)のもとに特定退職金共済団体を設立して実施するもので、税法上、中小企業退職金共済制度に準じた多くの特典が与えられている。
- 特定退職金共済団体の要件
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掛金の負担 |
事業主の全額負担 |
加入者の範囲 |
一定の者を除き原則全員加入 |
掛金等の事業主への返還禁止 |
掛金は、加入事業主にはいかなる場合も返還されない |
掛金の限度 |
一人について月額3万円(30口) |
不当差別の禁止 |
掛金の額又は退職給付額について、特定の者につき不当に差別 的な取扱をしないことが必要 |
- 加入できる企業(共済契約者)
- 商工会議所(商工会)の地区内に事業所を有する事業主であれば、退職金共済契約を締結することがでる。中退共のような従業員数等の制限はない。
- 加入口数の変更、共済契約の解除
- 中退共と同様、増口については上記を限度に自由に行える。
- 減口については被共済者(従業員)の同意及び事情を明示した書類を添付したうえで商工会議所に提示し、承認を受けた場合以外はできない。
- 共済契約の解除は、共済契約者(加入事業主)の都合で解除することはできない。やむを得ず中途解約することができるのは次の場合に限る。
- 被共済者の同意を得たとき
- 掛け金の納入を継続することが著しく困難であると商工会議所(商工会)が認めたとき
- 税法上の取扱
掛金に対する税金 |
全額損金経理できる |
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給付金に対する税金 |
退職一時金
退職年金
遺族一時金
解約手当金 |
退職所得扱い
雑所得扱い 死亡退職金として相続財産とみなされ相続税の対象 一時所得扱い |
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■ リタイヤ後の税金 |
公的年金等は、年金の収入金額(雑所得)から「公的年金等控除額」を差し引いて所得金額を計算し、5.105%を乗じた金額が源泉徴収される。
- 国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法の規定による年金
- 過去の勤務により会社から支払われる年金
- 外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度で社会保険、共済制度に類するもの
「公的年金等控除額」の計算は、65歳未満と65歳以上で計算テーブルが異なる。
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■ 事業承継 |
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■ 資産運用 |
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■ 事業主の退職金準備 |
自営業者や中小企業の事業主が退職金準備のために加入できる主な制度には、
がある。
名称 |
小規模企業共済 |
国民年金基金 |
個人型確定拠出年金
(第一号加入者)※ |
加入対象者 |
一定の中小企業個人事業主・
共同経営者や役員など |
国民年金第一号被保険者で60歳未満 |
拠出限度額 |
月額70,000円 |
合算で月額68,000円 |
受給開始時期と
受取り方 |
共済事由により異なる。
老齢給付金では一時払いまたは分割払い。 |
一口目は65歳支給開始の終身年金。
確定年金や60歳支給開始タイプもある。 |
老齢給付金は原則60歳から受給可。
年金または一時金。 |
掛金の税の取扱 |
所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
所得控除(社会保険料控除) |
所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
「小規模企業共済+国民年金基金」という組み合わせと、「小規模企業共済+確定拠出年金」という組み合わせで利用することが可能。
加入条件や掛金の限度額、受取り方などはそれぞれ異なるものの、掛金が所得控除の対象になるという共通点がある。
ただし、3つの制度のうち、国民年金基金の掛金は社会保険料控除、ほかの2つの制度は小規模企 業共済等掛金控除の適用を受ける。
個人型確定拠出年金の手数料は、通常拠出した掛金から控除されるが、手数料を含めた掛金全額が所得控除の控除額と なる。
※企業年金に加入していない国民年金第2号被保険者向けの制度もある。
- 加入要件
- 業種に応じて、常時使用する従業員数の上限が定められている。
- 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下。
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5入以下。
- 掛金(拠出限度額)
- 掛金月額は加入期間中に増額または減額することが可能である。
- 掛金月額は500円単位で最高限度額(70,000円)まで増額できる。
- 次のいずれかの理由により、掛金の納付の継続が困難であると詰められた場合に限り、1,000円まで減額できる。
- 事業経営の著しい悪化
- 疾病または負傷
- 危急の費用の支出
- 売上げの減少、支出の増加などにより事業経営の著しい悪化が見込まれるとき
- 共済金の計算
- 共済金は、加入者に生じた共済事由による種類があり、該当する事由により共済金の額が異なってくる。
- 共済金A (廃業、配偶者・子以外に譲渡)
- 共済金B (老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金払い込み))
- 準共済金 (配偶者・子に個人事業の全部を譲渡)
- 解約手当金 (任意解約、機構解約)
のいずれかを受け取ることができる。
- 貸付け
- 契約者貸付制度のうち、次の2つの要件を満たす場合「一般貸付」による貸付けを受けることができる。
- 加入後貸付資格判定時(4月末目および10月末目)までに、12ヵ月以上の掛金を納付していること。
- 掛金の納付月数に応じて算定される貸付限度額が、貸付資格判定時において10万円以上に達していること。
- 退職時に共済金を受け取ったときの課税
- 一括で受け取る場合は「退職所得扱い」。
- 分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得扱い」
- 請求事由が生じた時点で満60歳以上であり、共済金の額が一定額以上であれば、一括受取りと分割受取りの併用をすることができる。
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■ 贈与 |
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■ 相続 |
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■ 高齢者等の財産管理のための制度 |
判断力の低下と資産管理
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判断力 |
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特徴 |
注意点 |
あり |
民事信託
(信託法) |
- 信託契約や遺言によって、受託者に財産を譲渡し、委託者が決めた目的に従って、受益者のために財産の処分・管理を行う制度。
信託目的の範囲内で受託者の裁量により、信託財産の自由な管理、運用や処分ができる。
- 委託者が亡くなっても相続手続きなしでスムーズな資産承継が可能。
(本人死亡後も効力を持続させることが可能)
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受託者が行えるのは信託財産の管理、運用、処分に限られる。
(子の認知などの身分行為は不可) |
任意後見制度
(任意後見契約法) |
- 本人の判断能力が低下する前に将来の後見人を指定し、低下したら支援を受ける。
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- 代理権は契約で規定された範囲のみ。原則として財産の維持しかできず、積極的な運用等は不可。
- 任意後見人に対して任意後見監督人や家庭裁判所のチェックがある。
- 本人の判断能力が欠けて初めて利用できる(本人の判断能力が低下しないと効力が生じない)
- 本人の生存中のみ機能する。
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遺 言
(民法) |
- 自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
- 遺産の分割に限らず、子の認知などの身分行為も可能。
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- 判断能力が低下すると遺言書の作成は困難。
- 法律で定められた形式を満たしていなければ無効。
- いつでも撤回や害き換えができる。
(最も新しい日付の遺言が有効)
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リバースモーゲージ制度 |
- 自宅を担保にして老後資金を借り、亡くなった後に、担保不動産を売却し、その代金で一括返済する。
- 不動産担保型生活資全貸付制度。 (国のリバースモーゲージ制度)
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利用額が利用可能額を上回ると、追加で借り入れることができなくなる。 |
なし
認知症等 |
法定後見制度
(民法) |
- 物事を判断する能力が十分ではない人を、成年後見人等が支援する制度。
- 財産管理だけでなく、被後見人の生活を支えること(身上配慮義務)も後見人の役割とされている。
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- 本人の財産を保護するための制度で、相続税対策や投機的な運用は認められない。
- 後見人に対して家庭裁判所や監督人によるチェックがある。
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