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住替え・空き家無料相談室
空き家のはなし (事例検討) 空き家問題
 空き家問題のリスクと対策

全国の空き家の状態
2015年の住宅の空き家数は820万戸となり、5年前に比べて63万戸(8.3%)増加しました。この20年では、1.8倍以上増えています。
全国の住宅総数に占める空き家の割合は13.5%で、およそ7軒に1軒が空き家となる計算です。
その内訳を建て方別にみると、一戸建の空き家が49.6万戸で空き家全体の8割を占めています(総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」)。
(出所:総務省統計局)
このページをご覧になっている方も、今自分が暮らしている地域や、かって暮らした街で、”ああ、この家も空き家なんだ”と、空き家の増加を肌で感じることが増えたのではないでしょうか。
今後もこの数字は増え続け、2033年には27.3%で、およそ4軒にl軒が空き家になると予想されています。
空き家問題の背景と行政の対応

空き家となる原因
  • 新築住宅の供給過多と中古市場のバランス

    • 少子高齢化が進む中で、総住宅数が総世帯数を上回り、その差が徐々に開いています。
    • 日本人は新築志向が強いため、中古住宅はまだ流通量が少ない状態です。
      日本の新築住宅着工戸数は98万戸なのに対し、既存住宅流通量は17万戸(住宅需要に占める中古住宅の比率は15%弱(国土交通省のデータ))。
  • 相続問題

    • 空き家となった住宅を取得した経緯として、「相続」が52.3%と半数以上を占め、「新築・新築を購入」が23.4%、「中古を購入」ものが16.8%と続きます(国土交通省「平成26年空家実態調査」)。
      相続でなくても、所有者である親が高齢化し、介護施設に入居したり、子と同居するために空き家になる事例(何れ空き家の相続に繋がる)もかなりあります。
    • 空き家を相続しても子はすでに自分の家を持っているケースが多く、住む訳ではないが思い入れのある家なのですぐに売却や解体したいと思わない、又は、”誰が相続するか”で揉めたりして空き家のままになることも少なくありません。
  • 税制的な問題

    • 空き家は、所有しているだけで毎年固定資産税・都市計画税(土地と建物)を支払う必要がありますが、土地の固定資産税は、「土地に建物が建っていると土地の面積200uまでの分について6分の1に減額」という特例があります。
      空き家を解体して更地にするとこの特例の対象外(固定資産税の負担額が6倍)になってしまうので空き家のままにしておくという事情があります。
行政の対応
  • 空き家増加に対応すべく、2015年には「空家等対策などの推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」が施行されました。

    • 空き家を「空家等」と「特定空家等」の2種に区別し、「特定空家等の所有者等」に対しては、立ち入り調査や、指導、勧告等ができるようにし、行政の代執行により強制執行も可能として、空き家を防ごうとしています。
  • 地方自治体では、「空き家バンク」という空き家の登録制度を設けて売手と買手のマッチングを図っています。
    現状では登録数、取引量とも少なく、成果はまだまだなのが実情ですが、不動産業者団体との運営協力体制の構築等により登録数は増加傾向にあります。


空き家を放置すると

空き家を保有することにはリスクが伴います。
一般的に、2年間人が住まない家は売却が難しくなります。空き家を長期間保有することはリスクこそあれ、良いことはないと言えるでしょう。
  • 景観や治安の悪化など周辺への悪影響と、空き家の所有者が賠償責任を負うリスク。

    • 伸びた樹木の枝が近隣に迷惑をかけたり、雑草が伸びて景観が悪化したりする。
    • 老朽化した家屋が倒壊したり、不衛生な環境から悪臭が発生したりといった問題が発生する。
    • 不審者などの不法侵入、失火、放火、粗大ゴミ等不法投棄の温床となるリスク。小動物等が住みつくリスク。
  • 住宅の価値が下がる。

    • 人が住まない家の劣化は急速に進みます。景観の悪化と併せ、住宅としての価値がどんどん下がって、いざ売却しようとしても思うような価格での売却はできなくなります。
  • 空き家を維持 するには経済的負担を強いられます。

    • 固定資産税、火災保険料、水道・光熱費、管理業者への管理委託費、修繕費、遠方の空き家の状況確認のための交通費等、利用しない空き家を維持するためのコストを負担しなくてはなりません。
  • 相続手続き未了のまま放置したり共有名義にすると、争いの種になります。

    • 空き家の処分や利活用の検討以前に、数代の相続手続きが未了のため相続人が多数となる場合や共有名義にしたばかりに相続人の間での処分や利活用などの合意が取れないなどの相続を巡る諸問題が発生するリスク。

空き家を放置しないために
  1. 人は、自分の命の終わるときや認知症になるときを、自分で決めることはできません。
    自分が元気なうちに、自分が正常な判断ができなくなったときの対策をしておかなければ、大切な不動産が空き家となり、次世代に財産どころか重荷を残すことになりかねません。

    • 認知症などで判断能力が大幅に低下してしまうと、相続対策はできません。
      それどころか、財産の売却など契約行為ができなくなり、資産は凍結されてしまいます。
      • 私たちは契約を前提とする社会に生きています。コンビニで買い物をするとき契約書は作りませんが、”売ります/買いましょう”という契約になります。
      • 判断能力が低下してから行った契約行為は、”「意思能力がない人の契約行為」と扱われて無効”となることがあります。
  2. 実家にひとりで住んでいる親が介護施設に入居することになっても、すぐに実家を売る決断ができずに放置すると、その実家は空き家となる可能性が高くなります。

  1. 前述のとおり、空き家の取得経緯で最も多いのは「相続」であり(「相続」が52.3%で半数以上)、相続に至るまでに対策をすることが必要となります。
  2. 親はは思い出がある自宅を簡単には手放したくない、最期は自宅で迎えたいと考えるかもしれません。
    そうした考えや気持ちを酌み取りながら、具体的な対策を早めに話し合えるように、普段から親が実家についてどのような考えを持っているのか、親と子がコミュニケーションをとり、共有しておくことが大切です。


空き家対策のひとつとしての家族信託

判断能力の低下と不動産の活用
今や、国民病といわれるほどまでに増えている認知症患者。その数はうなぎ上りで、2015年には500万人を超え、2025年には675万人、30年には744万人にまで増えると予測されています。
65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)でしたが、2025年には約5人に1人になるとの推計もあります(出所:内閣府ページ)。


認知症などで判断能力が大幅に低下してしまうと、相続対策はできません。それどころか、財産の売却、賃貸などの契約行為ができなくなり、資産は凍結され活用できなくなってしまいます(既述)。
 (事例)
 花子さんさんはご主人に先立たれ、ご主人から相続した住宅で独り暮らしをしていました。ときどき様子を見に来てくれる長男の一郎さんが、花子さんの言動がおかしい事に気付き、お医者さんに見て貰ったところ認知症との診断でした。
 そこで、一郎さんは、花子さんの介護施設への入居を検討したのですが、待たないで入居可能な民間施設は入居一時金をはじめかなりの費用がかかる事が分かりました。
一郎さんは、花子さんが設備や環境が整った施設で穏やかに過ごしてほしいと考え、施設入居・利用費用捻出のため花子さん名義の住宅を売却しようとしたのですが…。
  • この事例のように、たとえ所有者(花子さん)本人の生活のためであっても、親(花子さん)の資産を子(一郎さん)が売却することは原則としてできません。
判断する能力が十分ではない人を法律に基づいて支援する制度として思い浮かぶのが、「成年後見制度」でしょう。
  1. 「成年後見制度」は、認知症や精神疾患などとで判断能力が低下した人を保護する制度で、現在では20万人を超える人が利用しています。
    成年後見制度の利用によって、本人に代わり、成年後見人が介護施設の手続きや、預貯金の入出金ができるようになります。
  2. それでは、花子さんが成年後見制度を利用することで、一郎さんは後見人に頼んで花子さんの家を売却をできるようになるのでしょうか。
    実は、成年後見制度では、原則的に資産の売却をすることはできません。
    • 成年後見制度は本人の財産を守ることが目的の制度で、資産の運用などが目的ではないからです。売却するには家庭裁判所の許可が必要で、売却しなければ介護施設に入居できないなど相当の理由がなければ、原則として認められません。
  3. 成年後見制度の利用には、費用の問題もあります。
    親が資産を保有したまま認知症となって、弁護士等の専門家が成年後見人が選任されることになると、月額2万円から5万円の報酬が必要となります。認知症の期間が長引くと、仮に月額5万円の報酬とすれば、成年後見人への報酬は「年間60万円×年数」という金額となる可能性もあり、その負担は重くのしかかります。
家族信託
そこで、最近注目され始めたのが成年後見制度よりも使い勝手がいいとされる「家族信託」という仕組みの活用です。
  • 登場するのは、持っている財産を委託する「委託者」、委託された財産を管理・運用する「受託者」、そして、財産から生み出される利益を受け取る「受益者」、この3者によって成立する仕組みです。
  • 事例だと、実家の所有者花子さんは(花子さんがお元気のうちに)、将来起きるかもしれない難しい局面に備え、花子さん(委託者)の資産(実家)の管理・運用を、子(一郎さん(受託者))に委託し、資産の運用収入を花子さん(受益者) のために使えるようにしておくという構図になります。

    具体的な手続きは、

    1. まず、名義を移す原因を「信託」として実家の名義を花子さんから一郎さんに移して一郎さんに実家を預ける形とし、信託財産の売却、管理、処分等の権利を設定します。
      • 委託者と受益者が異なってもよいし、委託者と受託者の兼任なども可能です。
      • 委託した財産の所有権については、事例の場合、信託された財産の名義は花子さん(母)から一郎さん(長男)に移るものの、信託財産が長男のものになるというわけではありません。 名義が移る理由は、受託者である長男が信託財産の管理や運用を行う必要があるからで、名義上の所有権の移転になります。
      • 名義を移す際の登録免許税と固定資産税は課されますが、不動産取得税や贈与税は課税されません。
    2. 一郎さんは、信託契約を結ぶ際に決めた範囲であれば、受託者として自由に財産の売却や運用を行つことができます。 ここが成年後見制度との大きな違いです。
      • 花子さんが認知症を発症してしまっても、一郎さんは実家をリフォームして人に貸したり売却することが可能となり、家賃収人や実家を売却して得た金銭を、花子さんの資産として花子さんが入所している施設の支払い等に充てることができます。
        • 受託者である一郎さんは、花子さんが(委託者)のために実家の名義を預かっただけであり、一郎さんが実家を売却するなどによって得た代金を花子さん(受益者でもある)の介護に使うことができます。
  • 家族信託を活用するには専門家への費用負担が生じますが、一般的には登記費用も含めて50万円程度(不動産の価格や数、個々の事情によって異なる)であり、既述の成年後見制度と比較すれば負担は軽いと言えるでしょう。
  • 家族信託は、遺言よりも優先されたり、遺言と違って次の次といった、世代を超えた承継が可能であるなど、認知症に限らず、事業承継でも使え、利用シーンが多岐にわたる優れた制度だといえるでしょう。

住宅の性能評価と瑕疵担保責任
我が国の建築物は建築基準法で構造、設備等の最低の基準が定められ、最低限の品質性能が示されています。
しかし平成7年の阪神・淡路大震災では、築年数の長短にかかわらず建築物の倒壊が確認され、そのなかには建築基準法が求めている最低基準を満たしていない事例も多数発覚しました。
このような背景もあり、平成12年4月に、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、「住宅品確法」)が施行されました。その主な内容は以下の3項目です。
  • 住宅瑕疵担保履行法

    • 平成17年に発覚した構造計算偽装問題では、売主の倒産により、買主が補修等に係る経済的負担を抱えることとなりました。
      これを受けて、瑕疵担保責任履行の資力を確保するため、平成21年10月に「住宅瑕疵担保履行法」が施行されました。
    • 同法は新築住宅を供給する売主等に対し、新築住宅を引き渡す場合、住宅品確法で定める瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保証金の供託又は住宅瑕疵担保責任保険の加入を義務づけるものです。万が一、売主等が倒産した場合等でも、2,000万円までの補修費用の支払いが保険法人から受けられます。
      • 供託すべき保証金

        • 売主等が供託すべき保証金の額は、過去10年間の新築住宅の供給戸数に応じて設定される。
        • 過去10年間における新築住宅の供給戸数が200戸の売主等の場合、保証金は、1億1、000万円(10万円×戸数+9,000万円)となり、30,000戸の場合は、8億1,000万円(1.8万円×戸数+2億7,000万円)となる。
        • (出所:FPジャーナル2016/12)

      • 責任保険

        • 売主等は保証金を供託するほか、責任保険に加入することも選択できる。
          • 保険期間10年、保険金の上限は2,000万円(オプションで2,000万円超も可)、免責金額10万円。
          • 加入手続きは保険を引き受ける指定保険法人(平成28年9月末現在5法人)に対して行う。
          • 保険料
            • 戸建住宅か共同住宅、延床面積や戸数等により指定保険法人ごとで異なるが、建設地域による差はない。
              • 戸建住宅(延べ面積120u、支払限度額2、000万円)の場合、保険料および検査料の合計は概ね7万〜8万円程度、各種特約や割引制度等も用意されている。
          • 責任保険を付保する場合には、指定保険法人による施工中の検査を受けることとなり、指定紛争処理機関による紛争処理を受けられる。
          (出所:FPジャーナル2016/12)

      • 利用状況

        • 平成27年3月時点での保証金の供託と責任保険の選択割合(売主等ベース)は、保証金の供託が0.6%、責任保険が99.1%、両制度の併用が0.3%。
        • 新築住宅の戸数ベースでは、供託金が47.8%、責任保険が52.2%であり、概ね半分ずつ利用されていることになる。
        (出所:FPジャーナル2016/12)

  • 紛争処理の仕組み
     
    • 住宅に係る紛争が生じた場合、「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター」で無料相談を受けられる仕組みがあります。
    • さらに建設住宅性能評価書の交付を受けている住宅、責任保険が付保されている住宅を取得した人は、紛争解決に向けて全国の弁護士会に設置されている「指定住宅紛争処理機関」(名称:住宅紛争審査会)による第三者性の高い裁判外のあっせん・調停・仲裁も受けられます。
      • 紛争処理の費用負担は申請手数料1万円のみで、それ以外の費用(紛争処理委員への謝金、現地調査費用等)は原則かからない。
      • 住宅紛争処理の申請件数は制度開始から概ね増加傾向にあり、平成26年度で164件、制度開始から同時期までの累計は786件になる。
        平均処理期間が6.7ヵ月と、建築関係訴訟全体の平均審理期間17.8ヵ月に比べ迅速に解決されている。
    • (出所:FPジャーナル2016/12)
  • 制度等の認知度
  • 平成24年に発表された総合住宅展示場来場者アンケート調査によると「安心・信頼できる住宅会社の条件」の問いに対して「保証・アフターサービスが充実」と答えた割合は82%と高い一方で、制度等の認知率は住宅性能表示制度が28%、住宅瑕疵担保履行法は30%となっている。
  • (出所:FPジャーナル2016/12)
マンション管理組合

マンション管理組合

 マンションのように、複数の独立した居宅から構成されている建物を「区分所有建物」といいます。そして、その独立した居宅(=「専有部分」)を所有している人を「区分所有者」といいます。
  • 区分所有建物 専有部分
    • 居住用や事務所として利用される部屋
    • 所有している人を「区分所有者」という
    共用部分 法定共用部分 廊下や階段、エレベーターなど、みんなで共用する部分
    規約共用部分
    • 集会所や管理人室など、一見専有部分だが、規約によってみんなで共用すると決めたもの
    • 規約共用部分は登記が必要
 区分所有者は、分割出来ない敷地や1棟の建物を区分して所有し共同生活をするため、騒音、ペット、駐車場、ゴミ等、トラブルも様々あり、1棟の建物や敷地を共同で管理する必要があります。
その管理するための組織が、「マンション管理組合」(以下管理組合)です。
  • 各区分所有者は管理組合の構成員(組合員)となります。
  • 管理組合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成を得て、主たる事務所の所在地において登記をすれば法人(マンション管理組合法人)となることができます。
 区分所有者の管理組合への加入や運営方法等については、「建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)」で定められています。
多くの管理組合は、管理会社と管理委託契約を締結し、毎月の管理・運営費用として管理費を徴収し、将来の大規模修繕等に向けて、修繕積立金を徴収しています。

 日常的な管理・運営だけでなく、区分所有建物(特に共用部分)について物事を決めるには、区分所有者全員で協議する必要があります。 「集会」は、区分所有者の全員が参加する意思決定機関です。
  •  マンションが抱える問題を解決する手段の1つが管理組合の「集会」です。
    「集会」は、一般的には「管理組合総会」、「管理組合集会」、「総会」とも呼ばれますが、区分所有法では「集会」という名称を使用しています。
  • 国土交通省が、集会の招集、成立、決議の定数について「マンション標準管理規約(以下、標準規約)」を公表しています。

管理組合の「集会」(総会、以下総会)
  • 総会(集会)の招集
  • 区分所有法には、管理者は、少なくとも毎年1回、集会を招集しなければならない、と定められています。
  • 標準規約では、管理者は「理事長」、集会は「総会」と表記され、理事長は、通常総会を毎年1回、新会計年度開始以後2ヵ月以内に招集しなければならないと定めています。
    • (国土交通省 「マンション標準管理規約 (単棟型)」)

      (総会)
      • 第42条
        • 2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
        • 3 理事長は、通常総会を、毎年1回、新会計年度開始以後2ヵ月以内に招集しなければならない。
      (招集手続き)
      • 第43条
        • 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2ヵ月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
          • 区分所有法における「区分所有者」は、標準規約では「組合員」と表記される。
          • 区分所有法では、集会の招集通知は少なくとも1週間前(建替え決議を目的とする場合は2ヵ月前まで)と定められており、この期間は、規約で伸縮することができるとしている(建替えの決議を目的とする場合、伸長はできるが、短縮はできない)。
            ( 標準規約では区分所有法よりも早めに通知することを求めている)
      (総会の会議及び議事)
      • 第47条
        • 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
        • 2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
    • 区分所有法では、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができると定められている(定数は、規約で減ずることができる)。
  • 総会の議決事項および会議の成立要件 
  •  標準規約では、下表の事項について、総会の決議を経なければならないと定めています。
  • 収支決算及び事業報告、収支予算及び事業計画、管理会社との管理委託契約の締結、役員の選任及び解任の他、長期修繕計画の作成又は変更や、特別の管理の実施(大規模修繕等)に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しをする場合にも総会の決議が必要となります。
  • 総会の議決事項

    • 収支決算及び事業報告
    • 収支予算及び事業計画
    • 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
    • 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
    • 長期修繕計画の作成又は変更
    • 特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
    • 建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
    • 修繕積立金の保管及び運用方法
    • 管理組合が一体として行う専有部分の設備の管理の実施
    • 区分所有法で定める義務違反行為の停止等の請求及びー定の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
    • 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
    • 建替え
    • 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
      • 理事長、副理事長、会計担当理事は理事の互選により選任する。
    • 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
    • その他管理組合の業務に関する重要事項
  •  標準規約では、総会の会議は議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならないとしています。
  • 総会に出席する者、書面または代理人によって議決権を行使する組合員が、議決権の半数に満たない場合、総会の会議は成立しません。 
  • 区分所有者(組合員)と議決権
  • 区分所有者とは、員数(頭数)を指し、議決権とは共用部分の持分割合であり、専有部分の床面積の割合を指します。
  • 下図マンションの例だと、区分所有者=7人、議決権は全体で12となります。

    • 3階 A
      301
      A
      302
      A
      303
      B
      304
      C
      305
      2階 D
      201
      D
      202
      E
      203
      E
      204
      E
      205
      1階 FG
      101
      HI
      102
      共有部分
      1号室 2号室 3号室 4号室 5号室

      全室同じ面積(議決権)とする
      区分所有者=7人 議決権は全体で12
      A 3
      B 1
      C 1
      D 2
      E 3
      FG 1
      HI 1
    • 床面積割合が高い区分所有者(組合員)は、多くの議決権割合を有します、管理費や修繕積立金の負担割合も多くなります。
    • FG(二人合わせて1組合員)およびHI(同)は、夫々二人で1議決権を持つことになります。
  • 「総会の議事の決議
  •  区分所有法では、通常の議事は「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」としていますが、標準規約では「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」としており、2点について定めが緩和されています。

    • 1点目は、「全議決権の過半数ではなく、出席組合員の議決権の過半数で決すること」、
    • 2点目は、「区分所有者(組合員)の過半数という要件がないこと」。
  • これは、総会欠席者が少なくない現状を踏まえ、普通決議事項は会議一般の原則に従い、出席組合員の議決権の過半数で決しても差し支えないとの考えに基づきます。
  • ただし、重要とされる特別決議事項は、区分所有法に定めるとおり、標準規約でも組合員総数及び議決権総数の4分の3以上または5分の4以上で決します。
  • 総会の議決事項

    • 区分所有者および議決権 決議内容
      区分所有者および議決権の、各5分の4 以上の賛成が必要 建替え決議
      • 規約で別段の定め(定員の増減)はできません。
      • 建替えに賛成の区分所有者は、反対の区分所有者に対して、区分所有権の売渡請求をすることができます。
        • 売渡請求権は「形成権」(権利者の意思表示のみで法律効果を生じさせられる権利)と解釈されています。
      区分所有者および議決権の、各4分の3 以上の賛成が必要
      • 共用部分の重大変更
        • 規約により区分所有者の定数を過半数まで減らすことができます。
          • 議決権の定数を減らすことはできません。
      • 規約の設定・変更・廃止
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その者の承諾が必要です。
      • 管理組合の法人化
        • 規約による別段の定めはできません。
      • 専有部分の使用禁止請求
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 決議の時に、義務違反者(所有者)に弁明の機会を与えた上で、裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
          • 使用禁止の期間は、裁判所によって相当の期間が定められます。
      • 専有部分等の競売請求
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
      • 占有者に対する引渡請求
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 決議の時に、義務違反者(占有者)に弁明の機会を与えた上で、裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
      • 大規模滅失の復旧決議
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 大規模滅失とは、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合をいいます。
      区分所有者および議決権の、各過半数 の賛成が必要
      • 共用部分の軽微な変更
        • 規約によって別段の定めができます。
      • 行為の停止請求
        • 規約によって別段の定めができます。
        • 騒音や悪臭などの迷惑行為の停止請求は、区分所有者の1人または数人、もしくは全員、管理組合法人などが自由にすることができますが、訴訟を提起するには過半数の賛成が必要です。
      • 小規模滅失の復旧決議
        • 規約によって別段の定めができます。
        • 小規模滅失とは、建物の価格の2分の1以下の部分が滅失した場合をいいます。
      区分所有者および議決権の、各5分の1 以上の賛成が必要
      • 集会の召集
        • 規約により、区分所有者の定数も議決権の定数も減じることができます。
        • 専有部分を借りている者(占有者)は議決権を持たないので決議に参加することはできませんが、集会に出席して意見を述べることはできます。そして、決議の効力は占有者に対しても及びます。
      単独で可能
      • 共用部分の保存行為
        • 規約によって別段の定めができます。
      • 小規模滅失の復旧
        • 規約によって別段の定めができます。
        • 1人で直して、その費用を他の区分所有者に請求することができます。
          • 決議により復旧させる場合は過半数の賛成が必要です。
      • 区分所有者の共同の利益のために行う行為の停止請求
        • 規約による別段の定めはできません。
        • 訴訟を提起するには、集会の決議によらなければなりません。
    • 総会では、特別決議事項等一定の定めを除き、標準規約とは異なる規約を定めることもできます。夫々のマンションの実状に照らし合わせ、規約を制定、変更または廃止することができます。
    • 規約および総会の決議は、そのときの区分所有者だけではなく、将来、売買や相続により専有部分を取得する者に対しても効力を生じます。
      • 賃借人等の占有者に対しても、使用方法については効力を生じます。
    • 組合員にとって、マンションは自らが属する「自治体」であり、その運営に対して参加する権利がある一方で、費用負担等の義務も発生します。
分譲マンションの必要経費
不動産の税金

マイホームの取得や増改築などしたときの所得税特例措置
  • 住宅を新築や購入又は増改築等をした場合で、住宅ローンを利用し一定の要件に当てはまるときは、その借入金等の年末残高の合計額を基に計算した金額をその住宅を居住の用に供した年以後の各年分の所得税額から控除するという特例(住宅借入金等特別控除)があります。
    • 税額控除であるため、控除できる所得税や住民税を納めていないと、その効果は得られません。
    • 住宅借入金等特別控除は時限立法で、その時々の経済状況や税制体系の変化との関係の中で、制度の延長や改正が行われています。
  • 平成31年6月30日までに、自身の居宅を、省エネ改修工事、バリアフリー改修工事、耐震改修工事した場合、住宅ローン等の利用がなくても、一定の要件の下で、一定の金額をその年分の所得税額から控除できます(住宅特定改修特別税額控除)。
    • 省エネ改修工事、バリアフリー改修工事について借入金等があり、住宅借入金等特別控除又は特定増改築等住宅借入金等特別控除のいずれの適用要件も満たしている場合は、これらの控除のいずれか一つの選択適用となります。
  • マイホームの取得や増改築などしたときの特例
     区分  ローン利用の場合 (住宅借入金等特別控除) ローン利用がなくても利用可能 (住宅特定改修特別税額控除)
    項目 住宅の新築・取得・増改築等 住宅の改修  新築取得等 住宅の改修
    一般住宅 認定住宅 バリアフリー改修 省エネ改修 3世代同居
    ※3
    認定住宅 バリアフリー改修 省エネ改修 耐震改修 3世代同居
    ※3
    資金の
    要件
    償還期間10年以上の
    住宅ローン
    償還期間5年以上の
    リフォームローン 
    自己資金または住宅ローン
    適用
    居住年
    平成31年6月30日まで
    控除額 最大控除額
    400万円
    最大控除額
    500万円
    最大控除額、62.5万円  控除限度額
    65万円
    控除限度額
    20万円
    控除限度額
    25万円
    (35万円※1)
    控除限度額
    25万円
    控除期間最長10年 控除期間最長5年  併用の場合:控除限度額70万円(80万円※1)
    特例の
    併用
    特別控除(耐震改修以外)
    との併用不可
    特別控除との選択適用  住宅ローン控除
    との併用不可
    住宅ローン控除との選択適用 住宅ローン控除
    との併用可※2
    選択適用

「住宅借入金特別控除」の活用
「住宅借入金等特別控除」とは、住宅ローン等を利用して住宅を新築や購入又は増改築等をした場合で、一定の要件に当てはまるときは、その借入金等の年末残高の合計額を基に計算した金額をその住宅を居住の用に供した年以後の各年分の所得税額から控除するという特例です。
税額控除であるため、控除できる所得税や住民税を納めていないと、その効果は得られません。
  • 住宅借入金等特別控除は、住宅ローン等を利用して、「新築住宅」、もしくは「中古住宅」を取得、または「家屋の増改築等」を行い、平成31年6月30日までに自己の居住の用に供した場合、所得税額から一定額が控除される制度です。
  • 適用を受けるためには、「対象者」、「対象となる家屋等」、「対象となる借入金等」などの要件を満たす必要があり、それぞれ詳細に決められています

  • 対象者

    • 住宅借入金等特別控除は、自宅の取得を促進するための税制であり、自分が居住していなければ控除の対象にはならない。

      • 取得後6ヵ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き居住する必要がある。
    • 所得要件
      • この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下であること。

        • 合計所得全額が3,000万円以下でないと住宅借入金等特別控除は適用されない。
        • 退職金など一時的に多額の収入があり、その年の1年間の合計所得金額が3、000万円を超えてしまうと、その年の住宅借入金等特別控除は受けられない。
          この年の分は繰り延べされず、入居した年からの所定期間(現在は10年間)のままとなる。
  • 住宅借入金等特別控除の対象となる家屋等

    • 一定の要件を満たす「新築住宅」、「中古住宅」、「家屋の増改築等」である。
    • 新築住宅 「新築住宅」とは、住宅を新築した場合または新築住宅を購入した場合を指し、面積要件を満たすものをいう。

      • @.登記簿上表示される床面積が50u以上の家屋
      • A.床面積の2分の1以上が、専ら自己の居住の用に供される家屋であること
      • 認定住宅の適用を受ける場合は、認定長期優良住宅建築証明書、認定低炭素住宅建築証明書等の書類の提出が必要
      中古住宅 「中古住宅」とは、新築住宅の要件の2つの面積要件(@.A.)を満たし、
      取得日以前20年以内(耐火建築物は25年以内)に建築されたもの、又は、新耐震基準適合住宅(築年数要件なし)で、建築後使用されたことのある家屋等をいう。
      家屋の増改築等 「家屋の増改築等」とは、自己の所有している家屋で、自己の居住の用に供するものについて、適用対象となる工事であることを前提に、

      • 工事に要した費用の額が100万円を超えていること、
      • 工事後の床面積が新築住宅の要件の2つの面積要件(@.A.)を満たすこと(新築住宅や中古住宅と共通の要件)。
      • 「適用対象となる工事」とは、増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕・大規模の模様替えの工事等である。
        • 建築基準法に規定する工事とは、一定の「家屋の壁、柱、床、はり、屋根又は階段のいずれか一種以上について行う過半の修繕又は模様替」をいう。
        • マンションなどの区分所有建物については別段の要件がある
        • そのほか、新耐震基準に適合させるための工事や高齢者等が自立した生活を送るための工事なども対象。

  • 対象となる住宅借入金等

    • 対象となる住宅借入金等は、契約における償還期間または賦払期間が10年以上のものに限られる。
    • 借入先は、金融機関等だけでなく、勤務先からの社内融資でも適用される。
      • 社内融資で金利が1.0%未満の場合は、会社から利子補給を受けているとみなされるため、控除対象から外れる。
      • フラット35を含む民間の金融機関等からの融資等の場合、金利水準は問われず、1.0%未満であっても住宅借入金等特別控除の対象外とはならない。
    • 家屋とその敷地を一括して購入した場合は、その両方の購入に係る借入金が対象になるが、家屋に係る借入金があることが要件とされる(敷地に係る借入金のみの場合は対象外)。
      • 家屋の新築の日前2年以内にその家屋の敷地を借入金で購入した場合も、新築家屋を目的とする抵当権が設定されているなどの要件を満たせば、敷地に係る借入金は適用対象となる。
  • 住宅借入金等特別控除可能額

    • 平成26年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等特別控除額
      • 年末借入金等残高(4,000万円を限度)×1%
        • 消費税がかからない個人間売買等は2,000万円を限度
        • 認定長期優良住宅(200年住宅)または認定低炭素住宅(省エネ住宅)を取得した場合
          • 「年末借入金等残高(5,000万円を限度)×1%
            • 消費税がかからない個人間売買等は3,000万円を限度
    • 控除額に100円未満の端数が生じた場合は切り捨て
    • 所得税の住宅借入金等特別控除可能額のうち、所得税において控除しきれなかった額は、翌年度の住民税から控除できる。
    • 平成26年4月1日から平成31年6月30日までに入居し、契約に適用された消費税率が8%である場合
      • 控除の限度額が136,500円になる
        • 消費税がかからない個人間売買等は97,500円

原則として確定申告により控除されます。給与所得者については、最初の年分について確定申告をすれば、その翌年以降の年分(控除期間内)については年末調整により控除できます。



不動産の譲渡に関する税制
    • 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家の3,000万円特別控除)
      (平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に一定の要件を満たした売却に適用)
      • 適用には、
        @家屋が区分所有建築物でないこと、
        A昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(旧耐震基準)、
        B相続開始の直前まで同居人がいなかったこと、  の3つの要件を満たすことが必要。
        適用要件を満たした空き家を相続した相続人が、必要な耐震改修などを施して売却するなど一定の場合、「居住用財産の譲渡所得の3、000万円特別控除」を適用できる(所得税・住民税)。


        主な適用要件

        @.相続前
        • 相続直前に、被相続人の居住用家屋(被相続人以外に居住している者がいないこと)と、その敷地の用に供されていた土地等
        • 昭和56年5月31日以前建築の家屋(旧耐震基準)であること
        • 家屋が区分所有建築物でないこと
        A.相続後
        • 相続開始日より3年を経過する日が含まれる年の12月31日までに売却
        • 相続後、売却時まで、建物もその敷地等も事業・貸付・居住の用に供していないこと
        B.売却時
        • 売却対価は1億円以下であること
        • 次のいずれかに該当すること

          1. 耐震工事パターン(上図@)
            • 相続した空き家に耐震リフォームを行い、現行の耐震基準に適合させた上で売却
          2. 除却パターン(上図A)
            • 相続した空き家を除却してから売却
              • 「売買契約」と「取り壊し工事請負契約」の何れが先に締結されてもよい。
                但し、確定申告時に、「譲渡の日」=「売買契約日」とする場合、「売買契約日」までに家屋の取壊し完了要。
              • 取壊し工事は、引き渡し日までに工事が完了すれば買主が行っても対象となる。
                但し、「譲渡対価1億円以下」の判定を買主負担の工費用を含めて行う必要がある。
        C.確定申告時 確定申告書に、一定の要件を満たす証明書類の添付必要

        • @譲渡所得の金額の計算に関する明細書
          • ・確定申告書の提出に合わせて、「譲渡所得の内訳書」として提出。
        • A被相続人居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書等
          • ・法務局にて家屋及びその敷地等の登記事項証明書等を取得可能。
        • B被相続人居住用家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等
          • ・家屋又は敷地等の買主との売買契約書の写し等を提出。
        • C被相続人居住用家屋等確認書
          • ・被相続人居住用家屋の所在市町村に申請し、交付を受ける。
            • 申請に必要な書類
              1. 売買契約書
              2. 取壊しから譲渡までの敷地の状況が分かる写真
              3. 取壊しの請負工事契約書の写し
              4. 被相続人と相続人の住民票
              5. 電気、ガス、水道などの閉栓証明書等
              6. 固定資産税課税台帳コピー
        • D被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し(耐震工事パターンのとき)
        D.その他
        • この特例は、「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税額のうち一定金額を取得費に加算)」との選択適用。
        • 居住用財産についての譲渡所得の他の特例(措法36の2、41の5、41の5の2)とは重複して適用することができる。


住宅資金の贈与に関する税制
借地借家
借地権について
  • 借地権とは
  • 第三者の土地を借りて、その土地に自己所有の建物を建てられる権利。具体的には、建物の所有を目的とする「土地の賃借権」、「地上権」が一般的な借地権と言われるものになります。
    • 借地契約の期間・更新などについては従来の借地法(旧法)と、1992年(平成4年)に施行された「借地借家法(新法)に規定があり、いずれの法でも借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいうと定義されています。その場合の土地の所有権を底地といいます。
    • 借りる人=借地権者、貸す側の地主さん=借地権設定者や底地人とも呼びます。
    • 地主さんには土地を借りる対価として借地権者は毎月地代を支払います。
    • 借地権のメリット 、デメリット
      • 借地権のメリット
        • 借地権のメリットとしてあげられるのは、
          土地に対する固定資産税がかからない、
          所有権を購入するより安価、
          借地権付き建物として借地権の権利を売却する事も出来る、 等があります。
      • 借地権のデメリット
        • 建物は自分のものですがその下の土地は他人のものなので、地代の発生や、建物賃貸借契約上・借地借家法上で地主との間にどうしても様々な制約が発生します。
          • 増改築や名義変更等に伴い各種手数料が発生します。
          • 売却や譲渡、増改築には地主の承諾が必要です。
        • 売却する際、所有権に比べ土地を借りるだけの権利なので資産価値は低くなります。
    • 旧借地権と新法借地権の違い

    • 旧法借地権(借地法) 借地権者側の立場を守る意味合いが強い。
      当初旧借地権で契約したものは、更新などでも新法に自動的に切り替わることがない。
      平成4年に制定された新法
      (借地借家法)
      旧借地権においては、地主側との間にトラブルが多く発生し、次第に借地権の取引き自体が少なくなってきたため、双方の便宜をはかる為に改正したのが新法。
      旧借地権から新法に切り替えるには契約自体を新たに取り交わさなければならない。
      「一般定期借地権」、「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付借地権」などがある。
  • 借地の対抗力
  • 借地権を対抗するためには借地上の建物は借地人名義でなければなりません。

    • 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条、建物保護法第1条)ことになっていますが、借地上の建物は借地人名義でなければならないというのが最高裁判決です(最高裁第三小法廷、昭和50年11月28日判決等)。
    • ただし、底地の買受人が借地権の存在を知リながら買い受けた場合には、対抗力否定の主張には権利濫用が認められる場合もあります。
  • 居住用借地の地代の相場
  • コスト面から見た場合
    • 一般に、「地代=固定資産税(都市計画税を含む、以下「固定資産税相当額」)+地主の報酬(必要経費も含む)」という算式で表されます。
      • 「借地権」を主張するための地代(年額)の最低水準=「固定資産税相当額」の2倍〜4倍(2.5倍) 。(月額地代は1/12)
      • 土地の固定資産税相当額を調べる。
        • 借地人は、土地所有者の承諾なしに、土地の固定資産税評価証明書を市役所で取ることができます(有料)。
          借地契約書や身分証明書など必要書類(市役所によって異なる)を持参し、市役所の担当課でこの証明書を発行してもらって下さい。
    「固定資産税相当額」=100,000円の場合、
    • 地代(年額)=200,000〜400,000 (250,000)
    • 月額地代≒16,700〜33,300 (20,800)
    更地価格×地代利回 更地価格( 「相続税路線価」から推定)に、地代利回りを乗じて地代を試算してみる方法。 
    • 路線価は時価の80%相当なので、路線価を0.8で割り戻せばおおよその更地価格を推定することができます。
    • 地代利回りは地域性や個別性に左右されるので、確定的な数値は出せないのですが、一般に住宅地の地代の期待利回りは1.5%〜2.0%程度だと言われています。
    地積=100u、路線価=100,000円、地代の期待利回り1.5%の場合、
    • 推定更地価格=100,000÷0.8=125,000
    • 地代(年額)=125,000×1.5%×100=187,500
    • 月額地代≒15,625
    周辺地代水準との比較
  • 借地権の評価

借地に関する各種承諾料

増改築承諾料、条件変更承諾料、譲渡承諾料、更新料など借地における各種承諾料について(出所:全国宅地建物取引業協会編集、弁護士、柴田龍太郎氏の紙上研修等)
  • 宅地建物取引業者が借地を取り扱うことは少なくありません。既存の借地契約の更新事務が比較的多いと思われますが、借地権付き建物の譲渡や建替えについての案件もあると思います。
  • その場合、借地における各種承諾料(増改築承諾料、条件変更承諾料、譲渡承諾料、更新料など)を無視することはできません。取引においては、これら各種承諾料が現実に授受されることもありますし、これら各種承諾料の金額を考慮して取引価格が決定されることもあります。
  • そして、最近では高齢者の借地人、地主の取引案件も急増しており、その際の注意点もあります。
  • 借地に関する承諾料の目安
  • (1).増改築承諾料
    • 増改築承諾料が問題になるのは、「増改築禁止特約」があることが前提となります。
    • 借地非訟裁判(しゃくちひしょうじけん)では、全面改築の場合で、承諾料は更地価格の3%の裁判例が多いと言えます。全面改築ではなく、部分改築や増築の場合はどれくらいになるかですが、当然それより少なくなります。
      • 「借地非訟事件」とは、借地権の法律関係に関して、裁判所が、通常の訴訟手続によらず簡易な手続で、賃貸人に代わり、借地人に対し地代や承諾を決定することをいいます。
        裁判所は当事者の主張に拘束されず、その裁量によって将来に向かって法律関係を形成します。”「借地権が存在するか否か」という「権利の有無」ではなく、承諾する対価(承諾料)をいくらにするかという「内容」を「裁量」をもって判断する”ということです。
        借地非訟の申立ては、5種類あります。
        • 建物の構造や用途を変更する際に地主の承諾が得られない場合の「借地条件変更申立」
        • 建物の増改築をするにあたり地主が承諾しない場合の「増改築許可申立」
        • 借地権を第三者に譲渡するための「賃借権譲渡・土地転貸許可申立」
        • 競売で借地権購入トラブルに関して非訟裁判をおこす際の「競(公)売に伴う土地賃借権譲渡許可申立」
        • 地主が、借地権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取る場合(介入権事件)の「建物及び土地賃借権譲受申立」(借地借家法19条3項、20条2項)
    • 実際の借地非訟裁判では、諸般の事情が考慮されますので一概には言えませんが、概ね全面改築の場合の3%を基準に、増改築部分の面積比により減額することが多いようです。例えば延床面積増大約37%・更地価格の1%という事例があります(横浜地裁川崎支部・平成3年4月判決)。
  • (2).条件変更承諾料
    • 借地非訟裁判では非堅固目的から堅固目的への変更の場合で更地価格の10%の裁判例が多いです。残存期間が1年足らずと少なかった等の事情を考慮して15%とした事例もあります(東京地裁昭和56年5月判決)。
    • 裁判所の決定があると、その時点から30年の借地期間が設定されます。
  • (3).譲渡承諾料
    • 借地非訟裁判では借地権価格の10%の裁判例が多くなっています。
  • (4).更新料
    • 借地非訟制度が存在しないので裁判所の基準はありません。
    • 裁判所は更新料の支払義務を認めませんが(最高裁第二小法廷・昭和51年10月判決)、任意に授受される場合の目安は、借地権価格の3〜5%、更地価格の2〜4%くらいでしょう。
  • 借地権更新料(ただし、法的請求権なし)  借地権の契約更新時に借地権価格の3〜5%、更地価格の2〜4%が一応の目安(実際には、土地の広さ、借地人の支払能力に左右される)
    条件変更を伴わない建替え、増改築時 更地価格の3〜5%前後
    条件変更承諾料 非堅固→堅固建物利用等への条件変更時に更地価格の10%前後
    名義書換料(譲渡承諾料) 借地権の売却時に借地権価格の10%前後
  • (5).その他留意点
    • @ 借地非訟手続
      • 耐震構造のための改築でも、承諾料は発生します。
    • A 借地人の相続に関して
      • 借地人乙が死亡し、妻Aが相続した場合、承諾料は発生しません。
      • 借地人乙が死亡し、遺言で孫Dが特定遺贈を受けた場合、承諾料は発生します。
        • 目的物件の引渡しまたは所有権移転登記に先立って借地権譲渡についての賃貸人の承諾またはこれに代わる裁判所の許可を求めます。
        • 遺言執行者がいる場合は遺言執行者が申し立てを行います。
        • 近親者や縁故者に借地権を遺贈する場合に、賃貸人に優先買取権を認めることは、借地人の意思を全く無視し、かえって優先買取権に関する法の趣旨を失わせるものでありますから、このような場合には、賃貸人に優先買取権はありません(東京高裁・昭和55年2月決定)。
      • 借地人乙が生前に長男Bへ贈与する場合、承諾料が発生します。
      • いったん妻Aが相続し、建物名義を妻Aから長男Bへ変更した場合、承諾料が発生します。
      • 妻Aが借地権を相続したが、建物名義は父乙から長男Bに書き換えた場合、承諾料が発生します。

    • B 複数の土地上にまたがる建物について、地主の一人が優先譲受の申立てをしたが、却下された事例(最高裁・平成19年12月判決があります。
      • その理由の要旨は下記のとおりです。
      • 借地権者が、賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を第三者に譲渡するために、借地借家法第19条第1項に基づき、賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申立てをした場合において、借地権設定者が、同条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることは許されないものと解するのが相当である。 なぜなら、裁判所は、法律上、賃借権及びその目的である土地上の建物を借地権設定者へ譲渡することを命ずる権限を付与されているが(同項)、賃借権の目的外の土地上の建物部分やその敷地の利用権を譲渡することを命ずる権限など、それ以外の権限は付与されていないので、借地権設定者の上記申立ては、裁判所に権限のない事項を命ずることを求めるものといわざるを得ないからである。
        抗告人は、抗告人の設定した賃借権の目的である土地と相手方の所有する土地とにまたがって建築されている建物及び上記賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをするものであるから、その申立てが不適法であることは明らかであり、これを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。
      • なお、またがリ建物の譲渡承諾を、地主の不利益を考慮して借地権価格の15%とした例があります(東京地裁・平成21年6月判決)。

  • 賃料増減額請求のみの場合は、調停を経る必要がある

    •  借地借家法は、借地契約の当事者に地代の増減額請求権を認めています(借地借家法第11条)。
    • 地代が「土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる」と規定されています。
    •  借地非訟裁判においては、当事者からの地代増減額請求権の行使がなくても、増額相当の場合であれば、裁判所は、付随処分として地代の増額を命じますが、減額相当の場合については地代の減額を命じることはありませんので、この場合、借地人は別途、減額請求権を行使する必要があります。また、借地非訟裁判の場合以外においては、職権で増減額がなされるということはあリ得ませんから、当事者は、自ら増減額請求権を行使しなければなりません。
    •  地代・家賃の増減額請求権を行使しても、相手方がそれに応じなければ、最終的には裁判所で決着を付けなければなりません。地代・家賃の増減額請求権に関しては調停前置主義が採用されていますので、原則、訴訟を提起する前に調停を提起する必要があることにご注意下さい(民事調停法第24条の2)。
    •  なお、地代・家賃の増減額請求権を行使しても、その当否についての裁判が確定するまでの間は、原則、従前の賃料が授受されるべきことになります。貸主側か地代・家賃の増額請求権を行使した場合には、借主側は「相当と認める額」を支払えば足りることになっていますので(借地借家法第11条第2項、第32条第2項)、原則、従前賃料を支払えば足ります(ただし、従前賃料が公租公課の額を下回るなど明らかに不相当な金額である場合には従前賃料では足りませんので、この点は注意が必要です)。
    •  借主側か地代・家賃の減額請求権を行使した場合にも、同様に貸主側は「相当と認める額」の支払いを請求することができますので(借地借家法第11条第3項、第32条第3項)、原則、従前賃料の請求が許されます。この場合、借主側か勝手に減額後の賃料しか支払わない場合は、不足分について賃料不払いということになりますので(契約解除事由となります)、注意が必要です。
    •  なお、増減額についての裁判が確定した場合には、増減額請求権行使の時に遡って過不足額を精算しなければなりませんが、この際、年10%の利息を付ける必要があります。増減額請求権行使の時から裁判確定までに長い時間がかかるケースにおいては、年10%の利息の負担が大きくなりますので、この点も考慮して、増減額請求権行使に対する対応を決定する必要があります。
  • 「更地価格」や「借地権価格」の査定方法
  • 増改築承諾料、条件変更承諾料のパーセンテージ計算は更地価格を基準とし、譲渡承諾料のパーセンテージ計算は借地権価格を基準とします。
  • では、「更地価格」や「借地権価格」の査定方法は?
    •  「更地価格」とは文字通り「更地」の価格ですが、「更地」とは建物が存在せず、かつ借地権等所有権を制限する権利が設定されていない状態の宅地をいいます。
    • 借地における各種承諾料を算出するために更地価格を評価する場合には、現実には借地権が設定され建物も存在しているのですが、評価に当たってはそれら借地権や建物が存在しないと仮定して評価することになります。
    • 「借地権価格」は、更地価格に借地権割合を乗じて算出されます。
       不動産の評価方法については、不動産鑑定評価基準というものがあり、不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合は、これに基づいて評価をすることになります。更地価格を求める場合の不動産鑑定評価基準の手法を簡単にご紹介しておきます。

      • 不動産鑑定評価基準における正常価格

      •  不動産の鑑定評価の基準における不動産の価格にはいくつかの種類かおりますが、更地価格を求める際に参考とされるものは「正常価格」です。これは、合理的な自由市場で形成されるであろう価格を意味します。つまり、売り急ぎや買い進みなどの特殊な事情がなく普通の状況で取引される場合を前提に、市場で実際に成立するであろう価格を意味します。
      • なお、不動産の鑑定評価においては、この「正常価格」の他に、「限定価格」「特定価格」「特殊価格」といった価格の種類があります
        (「特殊価格」は、平成15年1月から施行されている新しい不動産鑑定評価基準により新たに導入された価格です)。
      • 鑑定評価の3手法

      •  一般に、入が物の価格を判定する場合、
        • @ それに、どれほどの費用が投じられたものであるか(費用性)
          A それが、どれほどの値段で市場に取引されているものであるか(市場性)
          B それを利用することによって、どれはどの収益が得られるものであるか(収益性)
      • という3つの点が考慮されるものと言えます。これが、価格の3面性と言われるものです。不動産鑑定評価基準は、この価格の3面性を前提に、それぞれの考え方に基づく評価手法を用意しています。
      • @.原価法
        それに、どれほどの費用が投じられたものであるか(費用性)
        「原価法」は、「価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法」と定義され、この手法によって求められた試算価格を「積算価格」と呼びます。
        つまり、価格時点において新しく同じものを作るといくらかかるかを計算し(再調達原価)、対象不動産の古さ等に応じて価格を修正して価格時点現在の価格を求める方法と言えます。
        建物や、土地であっても最近において造成された造成地であるような場合に有効な手法と言えます。
        A.取引事例比較法
        それが、どれほどの値段で市場に取引されているものであるか(市場性)
        「取引事例比較法」は、「まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の価格を求める手法」と定義され、この手法によって求められた試算価格を「比準価格」と呼びます。
        簡単に言うと、実際の取引事例を集めて、それとの比較により対象不動産の価格を求める方法です。
        近隣地域、同一需給圏内の類似地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行われている場合に有効な手法です。
        B.収益還元法
        それを利用することによって、どれはどの収益が得られるものであるか(収益性)
        「収益還元法」は、「対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法」と定義され、この手法によって求められた試算価格を「収益価格」と呼びます。
        簡単に言うと、不動産が生み出す収益に着目し、その不動産を買うことによっていくらの収益を得られるか、という観点から不動産を評価する手法と言えます。
        貸賃用不動産について特に有効性が発揮される手法と言えますが、自用の住宅地のように現在は収益目的に供されていない不動産であっても将来の賃貸を想定することにより採用が可能と言われています。

        • 原則として、積算価格(原価法)、比準価格(取引事例比較法)、収益価格(収益還元法)、以上3つの試算価格を併用して対象不動産の価格を決めることになります。

借地非訟について
(出所:全国宅地建物取引業協会編集、弁護士、柴田龍太郎氏の紙上研修)

借地非訟における、「更地価格」や「借地権価格」の決定
  • 借地非訟では、「更地価格」や「借地権価格」は鑑定委員会が査定し、裁判所はその意見を聞いて決定をする。

    •  裁判所が借地非訟に関する裁判を行うには、原則として鑑定委員会の意見を聞かなければなりません(借地借家法第17条第6項、第18条第3項、第19条第6項、第20条第2項)。
      鑑定委員会は3入以上の委員で組織されますが、実務的には必ず1入は不動産鑑定士が入り、概ね不動産鑑定評価基準に則リ、「更地価格」、「借地権価格」に関する意見を述べることになります。しかし、時間、費用、資料等の制約がある中での評価ですので、厳密な意味での不動産鑑定評価とは異なります。
       鑑定委員会の意見が相当でないと考えられる場合には、場合により、当事者において自らの費用にて不動産鑑定を行い、鑑定書を資料として提出することもありえます。
  • 「更地価格」や「借地権価格」に関し、簡易な査定方法として路線価を使用する方法がある。

    •  土地の価格の簡易な査定方法としては、公的価格を参考とする方法があります。
    • 土地のの公的価格としては適正な時価を示すものとして、@公示価格、A基準地価格、があります。また、これらの価格を基準として、B路線価、C固定資産税評価額、が定められています。
       
      • @の公示価格は、地価公示法に基づいて、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格として評価され、これが官報で公示されます。
      • Aの基準地価格は、国土利用計画法施行今に基づいて、各都道府県が実施する地価調査で毎年7月1日現在の基準地の価格が評価され、これが都道府県の公報に公示されます。
      • Bの路線価は、相続税、贈与税等の課税の基準とするために国税庁が路線ごとに設定する価格です。
      • Cの固定資産税評価額は、固定資産税及び都市計画税を賦課するための課税標準額を定めるもので、市町村が定めます。
    •  @の公示価格とAの基準地価格は同じ性格を有するものであり、基準時点、基準日が異なるだけであり、概ね適正な時価を示すものと言われており、実際の取引価格のほぼ90%程度の水準にあると言われています。
    • Bの路綿価は公示価格のほぼ80%、固定資産税評価額は公示価格のほぼ70%「の水準にあると言われています。
    •  @からCの中で、宅地建物取引業者にとって一番使いやすいものは、Bの路綿価です。路線ごとに価格が付けられていますので、更地価格を算出するのに最も簡便です。また、路線価図には借地権割合も指定されていますので、借地権価格の算出も簡単です。もちろん、実際の適用においては、面積や地形等による補正作業が必要となることには注意が必要です。
       この路線価は公示価格の80%程度と言われていますので、実際の取引価格と比較すると、その70%程度と言えるかもしれません。路線価を使用する場合には、実勢価格への割戻作業(路線価水準が実勢価格の80%であると考えれば0.8で除す作業、70%と考えれば0.7で除す作業)が必要となりましょう。
適正地代額の鑑定手法には、@利回り法、Aスライド法、B賃貸事例比較法、C差額分配法、がある。
 適正地代額の算定も不動産鑑定評価の対象となるものであり、その手法については、不動産鑑定評価基準に定めがあります。
適正地代額を求める場合の不動産鑑定評価基準の手法を簡単にご紹介しておきます。
  • 不動産鑑定評価における継続賃料
    •  不動産鑑定評価における賃料には、大きく分けて、「正常賃料」と「継続賃料」の2種類があります(このほかに「限定賃料」かあります)。
      「正常賃料」とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)のことです。
    • 「継続賃料」とは、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間、こおいて成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料のことです。
    • 借地非訟において問題とされるのは、当然、後者の「継続賃料」です。
  • 鑑定評価の4手法
    • 不動産鑑定評価基準は、継続賃料の評価手法として、@利回り法、Aスライド法、B賃貸事例比較法、C差額分配法、の4つを用意しています。原則として、4つの試算賃料を併用して対象不動産の継続賃料を決めることになります。
      • @利回り法 基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費を加算した額を試算賃料とする手法です。
        Aスライド法 従前の支払い賃料、従前賃料決定後の物価変動等の変動率を乗じて算出した額を試算賃料とする手法です。
        B賃貸事例比較法 近傍の賃貸借が継続中の事例を多数収拾して、適正な事例の選択を行い、これらの賃料に必要に応じて事情補正、時点修正をし、
        さらに対象物件との地域要因や個別要因等の要因比較を考慮して試算賃料を求める手法です。
        C差額分配法 対象不動産の経済的価値に即応した適正な賃料と実際の支払賃料との差額部分のうち、賃貸人に帰属すべき適正な額を求め、
        この額を従前の支払賃料に加減した額をもって試算賃料とする手法です
  • 借地非訟では、地代額はどうやって決められるのか?
    •  借地井訟裁判においては、現行地代が不相当である場合には、付随処分として、適正地代額への増額を命ずることが通常です(ただし、減額を相当とする場合には地代額の変更を命じません)。
    • そして、裁判所が借地非訟に関する裁判を行うには、原則として、「更地価格」や「借地権価格」と同様に鑑定委員会の意見を聞かなければなりません(借地借家法第17条第6項、第18条第3項、第19条第6項、第20条第2項)。
    •  鑑定委員会は、概ね不動産鑑定評価基準に則リ、「継続賃料」に関する意見を述べることになります。しかし、時間、費用、資料等の制約がある中での評価ですので、厳密な意味での不動産鑑定評価とは異なります。
       鑑定委員会の意見が相当でないと考えられる場合には、場合により、当事者において自らの費用にて不動産鑑定を行い、鑑定書を資料として提出することもありえます。
  • 適正地代額(継続地代額)の簡易な査定方法として、固定資産税・都市計画税を使用する方法が使われることがある。
    •  土地の価格と異なり、賃料については公的価格というものがありません。そのことも関係しているようですが、地代については、当事者間で任意に取り決める際には、固定資産税と都市計画税の合計額の何倍(2〜3倍が多いでしょうか)という基準で計算する例を目にします。固定資産税と都市計画税の合計額以下の金額では、およそ賃料とは言えないでしょうから、その意味で、税額を把握すべきことは当然です。
       しかし、税額を基準にその何倍という基準が合理的と言えるかについては、何とも言えません。
    • 特に、税額については、その基準となる地価(固定資産税評価額)が上昇していても、政策的に減額されるということが過去にもありましたし、将来的にもあるでしょう。政策的に税金が減っただけなのですから、このような場合については、地代も連動して減額するというのは、不合理と言えるでしょう。
       地代の何倍という基準は、およその目安として使うだけであれば、有効とは思いますが、限界のあるものとご理解ください。
  • 地主に「担保差入承諾証」発行義務はない。
    •  担保差入承諾書を発行するか否かは完全に地主の自由であり、発行を強制する法的手段はありません。借地非訟の対象となるのは、あくまでも借地権譲渡の承諾それ自体であり、銀行に担保差入承諾書を発行することは、借地非訟の対象とはなりえません。
  • 更新料が任意に授受される場合、何か目安になる客観的基準があるか。
    •  借地非訟手続で示されているような裁判所の基準がありません。しかし、かつて東京地裁で1度だけ法定更新に際して事実たる慣習に基づき更新料の支払い義務を認めた判例があリ(東京地裁・昭和49年1月28日判決・判例時報740号66頁)、その判決は鑑定意見を参考にしながら更新料は借地権価格(更地価格の70%)の3%前後が相当であると判示したのです。
      しかし、その後、最高裁判所(最高裁・昭和51年10月1日判決・判例時報835号63頁)は、明確に更新料の支払義務を否定してしまいましたから、これも法的な意味を持つものではないのですが、裁判所の示したオフィシャルな判断として実務上参考にされているのです。
       したがって、東京近郊の更新料の一応の目安としては、更地価格の2〜3%(借地権価格を基準とすると3〜5‰)ということになるでしょうか。もちろん、地主と借地人との力関係の問題ですから、実際にはこれよりもずっと高額な例もあるようですし、地域の慣行や借地人側の支払能力の問題から、これよりも少ないことも多いようです。
       いずれにしても、更新料については法的請求権が認められていないので、地主側かあまり爪を長く伸ばすと一銭ももらえなくなるということに注意を要します。
       なお、更地価格、借地権価格は一般には路線価が使用される例が多いようです。
  • 借地人に更新料の支払義務がないのであれば、支払う必要はないのではないでしょうか。借地人側であえて支払うメリットはあるのでしょうか。
    •  更新料を支払うことによる法律上のメリットはありません。
    • しかし、支払うことによる事実上のメリットはあると思います。次のようなことが言われています。
      • 更新料を支払うことによる事実上のメリット
      • 1.法定更新よりも合意更新の方が借地権をより強化する。
        • @借地借家法施行前に設定された借地については、法定更新の場合、期限前に建物が朽廃したときは借地権が消滅するのに対して、合意更新の場合は、期間満了までは終了しない。
        • A合意更新の方が、将来の更新の際の地主の更新拒絶についての正当事由の判断について、借地人側に有利な事情となりうる。
        • B更新料の支払の事実自体が、Aと同様になる。
      • 2.合意更新を拒否して地主との関係を壊してしまった場合、将来、建物を建て替える場合や、借地権を換価する際に支障が出ます。
      • もちろん、地主が任意に承諾しなくとも借地非訟の制度は利用できますが、そのためには、裁判の費用も時間もかかりますし、特に、借地権譲渡許可の申立の場合には、譲受人を特定する必要があります。更新料を支払ったからといって将来、地主が承諾してくれるという保障はありませんが、喧嘩状態であれば地主の承諾はまったく期待できないわけですから、いずれにしても「自分の借地権を強化したいのであれば、更新料を払って合意更新しておきなさい」という説得はそれなりに有効ではないでしょうか。
      • 実際に、更新料の支払が行われているという実態は、このことを反映していると言えましよう。
  • 高齢者の借地人と借地権に関する交渉をする場合の注意点。
    •  まず、高齢者との取引一般に言えることですが、取引能力(判断能力)についての注意が必要となります。高齢者の場合、世間話し程度ができており、一見すると正常な能力があるように見える場合であっても、実際は認知症の症状がかなり進んでいる、ということかあります。やっつけ仕事で形式的に面談だけを終えてしまおうという態度ですと、取引能力(判断能力)についての観察が甘くなるようです。十分な注意が必要です。場合により、医師の診断を仰ぐ必要がありましょう。
    •  そして、その結果、取引能力(判断能力)に問題がある(可能性がある)ことが判明した場合には、成年後見制度を利用する必要があります。なお、借地人に成年後見人が付けられた場合であっても、借地人の自宅の売却については、裁判所の許可が必要となることに注意が必要です。
    •  また、高齢の借地人の場合、取引能力(判断能力)には問題がないのですが、地主側からの働きかけによって、経済的な観点から見て極めて不合理な内容の処理に応じてくることがあります。極めて安い立退料での合意解除に応じてくるようなケースです。借地権の財産価値に対する正確な理解がないというケースが多いようです。
    • このような高齢者の理解不足に乗じて不当な内容の合意をさせることに問題があることは言うまでもありません。詐欺取消や錯誤無効の可能性もないわけではありません(場合によリ消費者契約法による取消の可能性もあるでしょう)。この点にも十分に注意を払って取引をしてください。
  • 借地人の相続人の一人と借地権に関する交渉をする場合の注意点。
    •  相続人の一人が交渉窓□となることは多く、そのこと自体に問題があるわけではありません。しかし、最終的な合意、取引をするには、当然のことながら、相続人全員を相手にしなければなりません。各相続人が一人の相続人に対し委任状を発行して代理権を授与している場合には、当該代理人と取引をすればよいのですが、その場合には、本人と面談して代理権限授与に関する意思の確認をしておくことが必要です(その上で、実印を押捺した委任状と印鑑証明書を徴求する必要があります)。
    •  以上のことは、土地の売買において土地所有者側に相続が発生しているというようなケースにおいては、手抜かりなく行っているようです。ところが、例えば地主が借地人から借地権を買い取る取引において、借地人の側に相続が発生しているが、地上建物の相続登記が未了ないしは建物の登記自体がない、というケースにおいては、手抜かりが見られます。特に地上建物を取り壊して引き渡すケースの場合には、相続人代表者との合意で済ませてしまうことがよくあります。
    •  しかし、当たり前のことですが、借地権には相続性があります。相続人全員が権利者であり、その全員との取引が必要となることは余リにも当然です。この点を肝に銘じて取引に当たってください。
作業中
相続の手続き
「相続開始」から「相続税申告」までの手続き
  • 各局面での、面倒な手続き・相続人間の調整、必要な資金繰りを、10ヵ月以内に終わらせなければなりません。

    1. 相続財産と相続人を特定し、
    2. 相続割合を決め、
    3. 相続財産の名義を変更し、
    4. 相続税の申告と納税を行う 。
相続登記 (不動産の登記名義人を被相続人から相続人へ変更する手続き)
  • 不動産を所有していた者が亡くなり相続開始後、遺産分割協議が成立すれば、不動産を取得する者が確定します。
  • ただし、不動産の登記名義人を被相続人から相続人へ変更する手続き(以下「相続登記」)をしないまま放置すれば不都合が生じることも考えられます。
  • 「相続登記」の意義
    相続により不動産を取得し、「自分は所有者だ」と主張しても、それだけで誰でも認めてくれる訳ではありません。法律的には第三者に対して自分の権利を主張できること(第三者対抗要件)が重要です。第三者対抗要件を満たす手段として「登記」があります。
    しかし、登記には義務も期限もないため、登記をしないまま放置されてしまうケースもあります。

    相続登記をしないデメリットは多く、何代にもわたり放置しているといたずらに相続人が増えることになり、手続きを複雑化させるだけでなく、相続人同士が揉める可能性も高まります。

    • 被相続人の名義のままでは、売却することも借人れの担保とすることもできません。
    • 不動産が共有状態であるとき、相続人の1人が借入れをしていた場合に、債権者が自己の債権を保全するために、債務者(借入している相続人)に代わり相続を原因とする登記をすることも考えられます。
    • 遺産分割協議が成立しても、権利のない他の相続人が法定相続分どおりの登記申請をして自分の持分を第三者に売却し、その買主が先に登記してしまうことも考えられます。
      その場合でも、登記をしていない所有者は原則として自分の権利を第三者(この場合、買主)に対抗することはできません。
  • 「相続登記」の種類とポイント

    • 登記は、登記権利者(登記によって利益を受ける者)と登記義務者(登記によって利益を失うもの)による共同申請が原則であるが、判決や相続による登記など、例外的に登記権利者が単独でできる場合もあります。

      • 相続登記の場合、登記権利者は不動産を取得した相続人であり、不動産を取得した相続人が複数いれば全員が申請人となります。しかし、遠方に住んでいる相続人がいるため全員で申請することが困難な場合や、相続登記を訂正する際に再度相続人全員の訂正印が必要となる手間を回避したい場合などは、委任状を作成し、相続人のうちの1人に登記を委任することもできます。
    1. 遺言書に基づく相続・遺贈による登記

      遺言書がある場合は、その内容に従い相続あるいは遺贈の登記をすることになりますが、遺言書の記載内容により、次の@〜Bのように登記原因(登記記録に記載される原因)と登記申請者がそれぞれ異なります。
      公正証書遺言であれば家庭裁判所の検認を経ることなく、すぐに登記手続きを進められますが、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認が必要となるため、登記手続きに入るまで時間がかかります。

      • @相続人に「相続」させる
        • 登記原因は「相続」。登記義務者である被相続人はすでに死亡しているため、取得者(登記権利者)単独で申請できます。
      • A相続人に「遺贈」する
        • 登記原因は「遺贈」。申請は登記権利者である受遺者と、登記義務者である遺言執行者との共同申請となります。
        • 遺贈の場合も、登記義務者である被相続人は亡くなっているが、「相続」の場合とは異なり、遺言執行者が登記義務者となります。
          • 遺言執行者が指定されていない場合は相続人全員が登記義務者となります。遺言執行者が指定されていると、煩雑さを軽減したり、他の相続人が非協力的であるときに備えることができます。
      • B相続人以外に「遺贈」する
        • 登記原因は「遺贈」。申請は登記権利者である受遺者と、登記義務者である遺言執行者との共同申請となります。
          • 相続人以外に「相続させる」遺言はできません。
          • 遺贈には、「財産の3分の1を遺贈する」のように割合を示した「包括遺贈」、「甲土地を遺贈する」というように特定の財産を指定した「特定遺贈」があります。

    2. 遺産分割協議が完了していない状態で相続登記を行う場合(法定相続分による共同相続登記)

      • 遺産分割協議が完了していない状態では、各相続人は法定相続分どおりの割合で共同相続している共同相続人です。
      • この場合、共同相続人全員で共同申請するのが原則ですが、既述のとおり共同相続人のうちの1人が申請人となることも可能,、ただし自分の持分だけを申請することは認められず、全員分の申請を行わなければなりません。
        • 遺産分割協議が完了していない状態で共同相続登記を行い、協議が整った後、決定した持分に合わせた登記(遺産分割登記)をする場合
        • (法定相続分による)
          所有権移転の共同相続登記

          登記原因:相続
          遺産分割

          持分変更
          持分移転の登記

          原因:遺産分割
          • 共同相続登記(登記原因:相続)をして相続人に所有権を移した後、遺産分割協議による持分で実態に合わせた登記をする場合は、相続人間の財産の移転となるため「相続登記」ではなく「遺産分割を原因とする持分移転の登記」となる。
          • 不動産を相続する場合、「争族」を避けるため、複数の相続人で共有するのではなく、相続人の1人に相続させることがある。

        • 被相続人から、遺産分割協議による持分で所有権を移転 する場合
        • 遺産分割

          持分決定
          所有権移転の
          相続登記

          登記原因:相続
        • ※「相続」を原因とする「相続登記」。

    3. 相続登記、遺贈、死因贈与と、登録免許税、不動産取得税

      登記の原因 相続 遺贈 遺産分割 死因贈与
      包括遺贈 特定遺贈
      相続人 相続人以外
      登録免許税 持分の固定資産税
      評価額×0.4%
      持分の固定資産税
      評価額×2%
      持分の固定資産税
      評価額×0.4%
      持分の固定資産税
      評価額×2%
      不動産取得税 かからない かかる かからない かかる

      「遺贈」、「死因贈与」には、(贈与税ではなく)「相続税」が課税される。
      相続税 かかる
      贈与税 かからない

遺留分の注意点
  •  遺留分(いりゅうぶん)とは、遺言書の内容に関わらず一定の条件を満たす相続人に対して法律上確保されている最低限度の相続財産のことで、遺言書の内容に関わらず保障されます。
  • ただし、自動的に認められるわけではなく、遺留分がある人が実際に遺留分を請求することが必要で、請求期限もあるため注意が必要です。
  • 遺留分は、その分を相続できるということを主張できる権利であり、その主張のもと、法による最低限の保証が得られるという位置づけのものです。
  • 遺言を作る際には、誰にどのくらいの遺留分があるのかを把握することが重要です。 また、遺留分の算定方法や、遺言の内容が遺留分を侵害してしまったような場合の対策などについて考慮する必要があります。
  • 遺留分を考慮しないまま遺言を残すと、遺言者の想定とかけ離れた結果を招き、遺言が争いのもとになることがあります。
注意点
注意点
両親が他界、誰も住まない実家をどうすればよいのでしょうか。
空き家の状況

総務省の統計では2013年の空き家数は820万戸、空き家率13.5%となり過去最高を記録しました。



空き家の数は、調査の度に増加しており、今後も一貫して上昇が予想されます。民間シンクタンクの予測値では、2023年には20%、2028年には25.7‰2033年には30.4%とされています。

空き家が放置されれば、治安、衛生上の不安も生じますし、売却や活用も困難になり、所有者や相続人は深刻な問題をかかえることになります。
放置する期間が長いほど深刻度が増すことを考えると、両親の他界後、自宅が空き家になる場合は、早くから対策を立てておく必要があります。
  • 空き家を放置すると、
  • 1. 資産価値が下がります 。
    • 建物だけでなく、宅地の価値も下がります。 周辺一体の地価相場を下げる方向に影響します。
      • 宅地の価値(売手の希望価額で買手がつくか)は、街並みや市街化の度合いに強く影響されます。
        → 貴方は、隣に廃屋がある不動産を進んで買う気になりますか?
    2. 周囲への悪影響やトラブルの元となります 。
    • 倒壊、脱落、飛散
    • 植栽の繁殖・通行妨害、害獣・害虫 がすみつく
    • 不法侵入の危険、不法投棄の危険
    3. 住宅用地特例の適用除外や強制解体 の恐れも。
    • 住宅用地の固定資産税が最大で1/6まで軽減される特例の適用除外
    • 「空き家対策特別措置法」による、「特定空き家(保安上危険な空き家、衛生上有害な空き家)」について、自治体が強制的に対処。
親が高齢者施設などに入居し自宅が不要になったような場合、固定資産税などの維持コストがかかるため、子は売りたいと考えることが多いのですが、所有者である親の意思なしでは売却できません。
実家の処分や活用について両親が意思決定できる時期に話し合っておくことが望ましいと言えます。

空き家の活用
  • (設例)
    両親が他界し、実家が空き家になりました。自分も妹も自宅あり、どう活用すればいいのでしょうか?
    • 父親が80歳、次いで母親が87歳で他界。金融資産は少なく、遺産として実家が遺った。
    • 相続人は大郎さん(50才)と、妹花子さん(48歳、既婚)の2人。大郎さんは自宅を所有、花子さんは義父が所有する家で二世帯同居しており、兄妹とも住む家はある。
    • 実家は長野市北部の住宅地にある一戸建、最寄り駅から徒歩20分、土地面積280u。築年数は約50年だが数次にわたるリフォームにより良好な状態を維持。
    • 大郎さん、花子さんとも実家にそれなりの思い入れはあるが、2人とも居住の意向はなく、どう活用するのがいいか思案中。
実家の使い道には、@保有し続ける、A住む、B貸す、C売却する、という4つの選択肢があります。
  • 実家の空き家対策の選択肢とポイント
  • 1. 保有し続ける
    • 思い出の詰まった家を残せるが、固定資産税などのコストがかかる。
    2. 実家に移り住む
    • 別に自宅があればそちらを貸す、売るという選択肢も考えられる。
    3. 賃貸として貸し出す
    • 修繕が必要になる場合もある。コストを上回る家賃が得られるかがポイント。
    4. 売却する
    • 場所によっては買い手がつかない場合もある。
実家の所在地や建物のの状況、市況環境も考慮する事はもちろん必要ですが、先ずは、大郎さん、花子さんのライフプランニングを確認し、分析しましょう。
その上で、保有し続けるコスト+貸した場合、売った場合のキャッシュフローが把握できれば、判断がしやすくなります。
大郎さん、花子さん間の情報共有をして禍根を残さないように配慮も大切です。
  • 選択肢の検討プロセス
  • 1. 相続人のライフプランニングの確認、分析
    2. 相続人の長期CF分析を行い、選択肢を絞る
    CFの改善が期待できる収益の希望額を算出する
    3. 住宅の性能評価
    売却価額の査定
    4. 決定
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 (事例検討) 居住用財産を譲渡したときの課税軽減特例等適用の可否
太郎さん(55歳)は、現在(平成29年3月現在)、妻の花子さん(55歳)と夫婦で居住している自宅(以下「甲建物」)およびその敷地(以下「乙土地」)の譲渡を検討しています。
太郎さんと花子さん夫妻の、甲建物および乙土地(居住用財産)の譲渡に係る税金について、具体的な事例によって「居住用財産を譲渡したときの課税軽減特例等適用の可否」について検討してみましょう。
各事例は設定事項を前提とし、問われている論点以外は、すべて手続き、要件および法令に適合しているものとします。
  • 1.相続関係説明図 太郎さんの父(平成27年9月5日死亡)
       |                        |……大郎(長男)
       |                        |     |
       |--------------------------------|   花子(太郎さんの妻)
       |                        |……松子(長女)
       |                             |
     太郎さんの母(平成25年4月22日死亡)      一郎(松子さんの夫)
    2.不動産の概要 甲建物:平成6年5月、太郎さんが、父所有の建物を取り壊し新築。床面積185u
    乙土地:太郎さんの父が、昭和38年7月に取得。父の死亡により太郎さんが相続
    3.その他
    • 太郎さん夫妻は平成2年に結婚し、平成6年の新築以来、甲建物に居住している。
    • 乙土地について、太郎さんと太郎さんの父の間に地代のやりとりはなかった。
    • 甲建物および乙土地の譲渡は平成28年以後に行われるものとする。
    • 甲建物および乙土地の譲渡先と太郎さん夫妻との問に親族等の特別な関係はない。
    • 太郎さんは、太郎さんの父の相続に係る相続税を平成28年5月に納税している。

■ 太郎さんの所有する甲建物および乙土地を譲渡、または乙土地のみを譲渡した場合における譲渡所得の、「居住用財産の3,000万円特別控除」(以下「3,000万円特別控除」)適用について。
  • Q 太郎さんが、平成6年5月の甲建物の新築において、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた場合、本件譲渡について「3,000万円特別控除」の適用が受けられますか?
  • A
  • 「3,000万円特別控除」の適用を受けることができます。
    • 譲渡した居住用不動産について(過去に)住宅借入金等特別控除を受けていたとしても、所定の要件を満たせば「特別控除」の適用を受けることができます。
    • 取得した居住用の家屋に住み始めた年とその年の前後2年(前々年、前年、翌年、翌々年)に「特別控除」を使っていると、住宅ローン控除を受けることができません。
      • もし住宅ローン控除を受けている家屋について入居した翌年または翌々年にこの3,000万円控除の特例を受ける場合には、既に受けた住宅ローン控除分の所得税を納付する必要があります。

  • Q 太郎さんの合計所得金額が20,000千円を超える場合、「3,000万円特別控除」の適用が受けられますか?
  • A
  • 「3,000万円特別控除」の適用を受けることができます。「3,000万円特別控除」に所得要件はありません。
    • (参考までに)
      「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の特例」の場合は、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下、住宅借入金等特別控除の場合は控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下、という所得要件があります。

  • Q 甲建物を平成28年8月に取り壊し、乙土地について平成29年10月に譲渡契約を締結し、平成30年1月に引き渡した場合には、「3,000万円特別控除」の適用が受けられますか?
  • A
  • 適用を受けることはできません。
    家屋を取り壊してから譲渡する場合でも、その敷地の譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結されるなど、一定の要件を満たすことで「3,000万円特別控除」の適用を受けられます。しかし本設例では、乙土地の譲渡契約は甲建物の取り壊しの日から1年を超えているため、適用を受けることはできません。
    • 家屋を取り壊した場合(敷地だけの譲渡)は、次のすべてを満たさなければなりません。
      • その敷地の譲渡契約を、家屋を取り壊した日から1年以内に締結している。
      • 住まなくなった日から3年目の年の12月31日までの間に譲渡する。
      • 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日までの間、その敷地を貸付けその他の用に供していない。

  • Q 甲建物を平成28年8月に取り壊し、乙土地について平成28年9月から平成29年3月まで近隣のFB社に貸し付け、平成29年4月に譲渡契約を締結し、平成29年5月に引き渡した場合には、「3,000万円特別控除」の適用が受けられますか?
  • A
  • 適用を受けることはできません。
  • 前設例の説明の通り建物を取り壊してから譲渡契約を締結した日までの間、その敷地を貸付けその他の用に供している場合、「3,000万円特別控除」の適用を受けることはできません。

  • Q 「3,000万円特別控除」_の適用を受けてもなお譲渡益がある場合、その譲渡益に対して、「所有期間10年超の軽減税率の特例」の適用が受けられますか?
  • A
  • 「所有期間10年超の軽減税率の特例」の適用を受ける事ができます。
  • 3,000万円特別控除」と、「所有期間10年超の軽減税率の特例」は、要件を満たしていれば併用できます。

■ 太郎さんが甲建物および乙土地を譲渡し、買換資産を取得して直ちに居住の用に供した場合における、「特定の居住用財産の買換え特例」(以下「買換え特例」)適用について。
  • Q 本件譲渡による譲渡対価の額が118,000千円の場合、「買換え特例」の適用が受けられますか?
  • A
  • 「買換え特例」の適用を受けることはできません。
  • 「買換え特例」の適用要件は、譲渡対価が1億円以下であることです。

  • Q 本件譲渡のうち、甲建物の譲渡については所有期間の要件(10年)を満たしているので「買換え特例」の適用が受けられるという考え方でいいでしょうか?
    一方、乙土地の譲渡については所有期間の要件を満たしていないため「買換え特例」の適用は受けられないんでしょうか?
  • A
  • 甲建物および乙土地を併せて、「買換え特例」の適用を受けられます。
  • 「買換え特例」の適用を受けるためには譲渡年の1月1日において、譲渡した自宅やその敷地の所有期間がともに10年を超えるなどの要件を満たす必要があります。
    甲建物については、平成6年5月に太郎さんが新築していますから、所有期間は10年超です。乙土地については、平成27年9月に相続により、太郎さんが取得しています。相続による取得の場合は、被相続人の取得時期を引き継ぎますから、乙土地についても所有期間は10年超となり、他の要件を満たすことで「買換え特例」の適用を受けられます。
  • Q 買換資産の取得の相手方が、太郎さんの親族であった場合でも、太郎さんは、「買換え特例」の適用が受けられますか?
  • A
  • 適用を受けることができます。
  • 「買換え特例」は、譲渡先が配偶者、直系血族など特別な間柄でないことといった制限がありますが、買換資産の取得の相手方について制限はありません。

  • Q 買換資産を取得し、「買換え特例」の適用を受けた場合には、買換え資産について、「住宅借入金等特別控除」の適用は受けられますか?
  • A
  • 適用を受けることはできません。
  • 「買換え特例」の適用を受けた場合は、買換資産について「住宅借入金等特別控除」の適用を受けることはできません。

■太郎さんが、甲建物を譲渡の相手方の要望により、平成28年9月に取り壊し、直ちに乙土地のみを譲渡した場合における譲渡所得等。
  • Q 甲建物の取壊し費用は、乙土地の譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用となりますか
  • A
  • 譲渡費用になります。
  • 譲渡所得は、土地や建物を譲渡した金額から、取得費や譲渡費用を差し引いて計算します。
  • 取得費とは、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費などですが、建物の取得費を出すときは、減価償却費を考慮します。
  • 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用のことで、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代などです。甲建物の取壊し費用は、乙土地を譲渡するために負担したものですから、譲渡費用となります。

  • Q 乙土地の取得費について、「譲渡収入金額の5%の概算取得費の特例」の適用を受けた場合、「相続財産を譲渡した場合の、相続税額の取得費加算の特例」の適用を受けられますか?
  • A
  • 適用を受けることができます。
  • 「相続財産を譲渡した場合の、相続税額の取得費加算の特例」とは、相続で 取得した土地などを一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費として計上できるものです。「譲渡収入金額の5%の概算取得費の特例」の適用を受けた場合でも、相続税の取得費加算の特例の適用を受けられます。

  • Q 甲建物を取り壊して乙土地のみを譲渡した訳ですから、買換資産として土地付き建物を取得した場合、取得した土地部分のみが「特定の居住用財産の買換え特例」の適用の対象となる買換資産となるということでしょうか?
  • A
  • 取得した土地付き建物の建物と土地の両方が「特定の居住用財産の買換え特例」の適用対象となります。
  • 甲建物を取り壊して乙土地のみを譲渡し、買換資産として土地付き建物を取得した場合、一定の要件を満たせば、取得した土地付き建物の建物と土地の両方が買換え特例の適用対象となります。


 (事例検討) 不動産トラブル
売買契約
  • 契約締結日になって一方が白紙撤回損害賠償責任が生じるとされた事例
    (出所:不動産トラブル事例、弁護士、佐藤貴美氏)

    土地の売買契約の締結につき、契約締結予定日の当日になって一方当事者が解消することは信義則上の注意義務違反に当たり、不法行為に基づく損害賠償責任が生じるとされた事例 (福岡高裁、平成5年6月30判決)

    • 事案の概要
      •  原告は、スポーツセンターを建設する目的で、被告ら3入が共有する土地を購入することとした。媒介業者を介して、被告らとの間で売買契約の基本的事項を合意するとともに、所有権移転登記及び代金支払いを一括して行うこと並びに当該決済日を取り決めた。ところが決済日の前日になって売買対象の土地の権利証がないことが分かったため、原告と被告らはあらためて、保証書による所有権移転登記申請と担保権設定による代金の先払いを合意した。
         しかし、被告らの一人が当該取扱に難色を示し、結局、契約締結予定日の当日になって、被告らは本件売買契約を一方的に白紙撤回した。
        そこで原告が被告らに対し、売買代金の融資を受けるに際し負担した金融機関に対する取扱手数料等につき損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
    • 裁判所の判断
      • 裁判所は、概ね以下のように述べて、原告の請求を認めた。
        • 1 原告と被告らとの間の交渉の事実経過からすれば、原告としては、交渉の結果に沿った契約の成立を期待し、そのための準備を進めることは当然である。
          2 契約締結の準備がこのような段階にまで至った場合には、被告らとしても原告の期待を侵害しないよう誠実に契約の成立に努めるべき信義則上の注意義務がある。
          3 本件では、被告らは「正当な理由」なく契約締結を拒否したものであり、これは原告の有する契約締結に向けての利益を侵害した点て違法であり、被告らはその不法行為によって被った原告の損害を賠償しなければならない。

    • 解説

      • 1.「契約締結上の過失」とは?
        •  売買契約が成立するまでの間は、当事者は、基本的にいつでもその交渉を打切ることが可能です。
           しかし、契約締結交渉が相当進んだ段階で交渉を一方的に破棄する行為に対しては、契約がいまだ成立していなくても、破棄した一方当事者は、その相手方に対し、信義則上の損害賠償責任を負わなければならない場合があります。これを「契約締結上の過失」といいます。
           これは契約がまだ成立していない段階なので債務不履行責任ではなく不法行為責任の問題となり、責任を追及する側が相手方の過失等も主張立証しなければなりませんが、いずれにしても具体的事情いかんでは、破棄した側は相手方に対し、契約が成立するとの信頼が裏切られたことによって生じる損害(本事例では売買代金を準備するために要したコスト)を賠償しなければならない場合があることに注意しなければなりません。

      • 2 .契約締結交渉が相当進んだ段階では法的責任も

        •  本事例では、当事者が契約締結に向けて交渉を重ね、いくつか段階を踏んで合意形成を図リ、契約締結予定日の当日を迎えているところであり、この段階での買主側の契約成立に向けての期待は法的にも保護されるとして、原告の損害賠償請求が認められました。
           本事例のように、様々な取引において交渉の過程で依頼者から、その打ち切りを表明されることがあるかもしれ ませ ん。
        • しかし契約締結交渉が相当程度進んだ段階に至っている場合には、以上のような法的責任が発生する可能性を踏まえ、慎重に検討し対応するよう助言することが大切でしょう。


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