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5: 「休暇」 Q
 有給休暇は会社の都合で変更できるか?
  • 有給休暇は法律で発生する要件が決まっており、「6ヵ月間の継続勤務をする」、「その間に8割以上出勤する」という場合、10日間の有給休暇が与えられることになっています。
    そして、その後は1年ごとに8割以上出勤していると、有給休暇が与えられます。

    有給休暇は法律で決められた権利ではありますが、「会社に有給休暇の届出を出すだけで有効となるか?」、「いつまでに会社に伝えればよいか?」が問題となります。
    例えば、風邪で会社を休む場合、始業までに電話をし、有給休暇を取得しているケースが多いです。
    しかし、就業規則では「原則、1週間前までに届出する」などとしながらも、急な病気などにも対応できるようにしていることが大半です。

    まずは、就業規則の参考条文をみてみましょう。 
従業員が年次有給休暇を取得するときは、原則として1週間前までに、少なくとも前々日までに所定の手続により会社に届け出なければならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えることができる。
  • 条文は「原則、1週間前までに」、「少なくとも前々日までに」、「突発的な場合は事後でもOK」というフレキシブルな対応としていますが、これには理由があります。
    • それは、「会社は有給休暇を請求された日に与えなければならない(原則)」、「事業に支障があれば、日をずらしてもらうことができる(会社の権利)」ということになっているからです。
    • つまり、会社の都合でずらしてもらうこともあるため、フレキシブルな条文となっているのです。
      よって「正常な運営を妨げる場合、有給休暇を与えないことは当然」となっており、判決での判断も同じです。
  • だから、会社が「業務上やむを得ない」と考えた場合、社員が請求した有給休暇の日をずらすことは適法なのです。
    この判断をしなければならないので、就業規則の条文で「原則、1週間前までに届出する」としているのです。
    しかし、「少なくとも前々日までに」との記載もあります。これは代わりの人を手配するのに最低限の時間は必要だからです。そこで、急な事情等たったとしても、その対応をする時間として「前々日までに」としているのです。
  • さらに、「突発的な傷病その他やむを得ない事由」で休む場合、原則的には欠勤となりますが、会社の運用として有給休暇としているのです。
    つまり、病気などの理由で急に会社を休む場合、有給休暇に振り返るかどうか、会社が自由に決める事ができるのです。
今回のテーマは有給休暇でしたが、この仕組みを正確に理解している社員は少ないでしょう。それだけにきちんと説明をしておく必要があるのです。
 有給休暇の理由を聞くことは違法?
ある社員から、「有給休暇の申請書に理由の欄がありますが、これは違法です」と言われました。これは本当ですか?
  • これは法的に考えるとどうなのでしょうか?
    そもそも、有給休暇は従業員の権利として与えられているものです。しかし、繁忙期に有給休暇を請求されたら、会社は他の日に変更してもらうことができます。
    これを「時季変更権」と言います。もちろん、有給休暇の利用目的は「労働者の自由」です。だから「どこで何をしようが、会社には言う必要が無い」という理屈も通ります。

    これに関して、参考となる判例があります。

    <林野庁白石営林署事件 最高裁 昭和48年3月>
    • 営林署職員が2日の有給休暇を申請
    • この職員は別の営林署のストライキに参加
    • その事実を知ったため2日分の賃金を減額
    • これを不服として営林署(国)を訴えた、

      そして、最高裁までこじれた結果、
    • 繁忙期でない限り、有給休暇は従業員が自由に取ることができる
    • 本件は有給休暇が成立
    • 有給休暇の使い方は労働者の自由である

      としたのです。
  • ここで冒頭のご質問に戻リましょう。「有給休暇の申請書に理由を記載することは違法か?」ということです。

    この場合ですが、「有給休暇の取得理由が記載されていないと承認しない」、「この理由により承認する、しないの判断をしている」という場合は「違法」となります。
    しかし、「理由の記載欄を設ける」、「従業員の任意で理由を記載する」ということは違法ではないのです。

    これに関して1点補足します。
    多くの従業員が同時に有給休暇の申請を出した場合、会社はどのように対応すればよいでしょうか?

    この場合は「有給休暇の利用目的の重要性、緊急性、優先順位」などを考慮します。
    そして、「有給休暇の日をそのまま取ってもらう人」、「有給休暇の日を変えてもらう人」を判断することも妥当です。

    実際に、「昭和48年11月の大阪職安事件(大阪地裁)」でも、「有給休暇を利用目的で考慮する」ことはOKとされています。
  • いずれにせよ、有給休暇の利用目的を任意で書かせることは違法ではないのです。
    ただし、有給休暇を多く取得すると、「人事考課が下がる]、「賞与が減額される」、「昇給、昇格がなくなる」などのことは違法行為となります。

    有給休暇はあくまでも働く従業員のリフレッシュのためにあるものです。ここはきちんと考慮しなければなりません。
    特に社歴の長い会社の場合、「沢山働くことは美徳」という文化がまだ残っている会社もあります。しかし、休まずに働けばいいというものでもありません。高度経済成長期とは状況が違います。うつ病になる人の数も増えています。経身雇用という時代でもありません。

    時代が変わっているのですから、会社も変わらなければならないのです。
 年休の計画的付与に関する協定
年次有給休暇の計画的付与の要件
  • 労働者が行使できる年次有給休暇のうち5日を超える部分の日数は、事前に取り決めをした日に使用者が付与することができます。
    これを一般的に「年次有給休暇の計画的付与」といいます。
  • 計画的付与の制度を導入するためには、あらかじめ労使協定を締結する必要があります。
    この労使協定は所轄の労働基準監督署長に届け出る必要はありませんが、就業規則の作成義務がある事業場(常時10人以上の労働者を雇用)は、就業規則に計画的付与について定め、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

労使協定に定める事項

労使協定では次の事項を定めておきます。
  1. 計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)

    • 計画的に付与する時期に育児休業や産前産後の休業などに入ることがわかっている人や、定年などあらかじめ退職することがわかっている人については、労使協定で計画的付与の対象からはずしておきます。
    • また、計画的付与の対象となる日数が足りない人や、採用後間もないために年休がまったくない人も含めて計画的付与の対象者とする場合は、付与日数を増やすなどの措置が必要となりますので、その扱いについても定めておくことが望ましいとされています。
  2. 対象となる年次有給休暇の日数

    • 計画的付与の対象となる年次有給休暇の日数は5日を超える日数とされています。つまり、少なくとも5日は労働者が自由に取得できるようにしなければなりません。
    • 例えば、対象となる年次有給休暇の日数を法律どおり「5日を超える日数」と定めたときは、付与日数が10日の労働者に対しては5日、20日の労働者に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
    • なお、前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇も含めて、5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。
  3. 計画的付与の具体的な方法
    計画的付与の方法は、主に次の3つがあります。

    1. 事業場全体での一斉付与方式
      事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
    2. 班別の交替制による付与方式
      事業場で一斉に休みを取ることが難しい場合は、課・班・グループなどの単位でそれぞれ交替で年次有給休暇を付与する方式が考えられます。この方式の場合も具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
    3. 計画年休表による個人別付与方式
      比較的小規模な事業場では、個人ごとにローテーションで付与する方式が考えられます。この場合は、具体的な付与日までを協定に示す必要はありませんが、計画表を作成する時期、手続きなどについては定めておく必要があるでしょう。
時間単位年休の扱い
改正労働基準法に盛り込まれた「時間単位付与」の年次有給休暇については、労働者が請求した日に時間単位により年休を与えることができるという趣旨のものですので、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められません。
 合併や出向における年次有給休暇の取扱いについて
今日では会社の合併は珍しいことではありません。
ある日突然、勤務先の会社が合併したり出向を命ぜられたりすることも日常的です。さらに今後は、定年退職後に子会社や出向先で再雇用される方も増えてくるでしょう。そのとき自分の有給休暇がどのように取り扱われるのかは、とても気になるところです。

年次有給休暇について労働基準法では「使用者は、その雇人の日から起算して6ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続しまたは分割した10労働日(最低付与日数)の有給休暇を与えなくてはならない」と定めています。
合併や出向の場合、その時点で、これまでの有給休暇はどうなってしまうのでしょうか。

該当者の有給休暇について会社の具体的な取り扱いを考えてみましょう。
1.合併の場合
  • 複数の会社が1つの会社になる場合、形式上は合併前の会社と合併後の会社は別の会社で、労働契約の当事者も変更になったように見えるものです。吸収され消滅した会社に勤務していた方であればなおさら、まったく新しい別会社で勤務するように感じるかもしれません。
  • しかし、合併ではすべての権利が新会社へ移行するため、合併前の会社との労働契約もそのまま引き継がれます。
    合併後の新会社は、合併前までの勤続年数を通算し有給休暇を与えなければならないのです。
2.出向の場合
  • @「在籍出向」
    • A社からB社への在籍出向の場合、出向者は、出向元のA社との労働契約関係がそのまま続く状態です。
    • 在籍出向者の有給休暇は、出向元の勤務期間を通算した勤務年数に応じて与えなければなりません。ただし、在籍出向していた先で再雇用されることになった場合はAの「転籍出向」と同様に取り扱います。
  • A「転籍出向」
    • 親会社A社から子会社C社へ転籍出向する場合は、転籍の時点で使用者(雇用者)が変わります。
    • つまり継続勤務に該当しないため、転籍前の会社での勤続年数は通算せず、新たに転籍時点から起算して有給休暇を与えることになるのです。

      会社を定年などで退職した後に子会社で再雇用となった場合も、これまでの勤続年数は通算せず再雇用時から起算して付与します。
合併や出向における有給休暇の取り扱いが、行政ではどんな解釈になっているのかを調べたところ、以下の場合には「実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する」という通達がありました。
  • 会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括継承された場合
  • 在籍型の出向をした場合
会社合併・在籍出向は「勤務年数を通算する」ので、有給休暇もそれにあわせて付与すればよいのです。
この通達には、定年退職後も引き続き嘱託などで再雇用している場合など、勤続年数を通算する事例が記載されています。

継続勤務の意義(行政通達:昭和63年3月14日基発150号)


継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。

継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。
この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。
  • イ 定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合(退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む。)。ただし、退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない
  • ロ 法第二十一条各号に該当する者でも、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
  • ハ 臨時工が一定月ごとに雇用契約を更新され、六箇月以上に及んでいる場合であって、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
  • ニ 在籍型の出向をした場合
  • ホ 休職とされていた者が復職した場合
  • へ 臨時工、パート等を正規職員に切替えた場合
  • ト 会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括承継された場合
  • チ 全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を再採用したが、事業の実体は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合
 育児休業中の年休付与は必要か?
育児休業から復帰した女性社員に年次有給休暇の残日数を質問されたので回答したところ、「それは間追っていませんか?」と言われました。
法定の産前休暇開始日より連続して約1年2カ月休んでいて、その間に年次有給休暇の定期付与日がありましたが、休業中でしたので付与しませんでしたごこの扱いは問題があるのでしょうか?
  • 【「出勤率」の算定における休業の扱い】

    • 労働基準法(第39条)では、年次有給休暇(年休)の付与について「全労働日の8害り以上出勤」という要件を定めています。
      したがって、この出勤率を算定する期間(採用日から6ヵ月間、その後は1年間)において、全労働日数に対する出勤日数の割合が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数分の新たな年休が発生することになります。

      • この「全労働日]とは、労働契約のうえで労働義務が課されている日(いわゆる所定労働日)をいいますので、休日労働があってもその日は全労働日に含まれません。
      • 出勤率の算定にあたってば、労働者が正当な理由で休んだ日を単純に欠勤として扱うと、出勤率が基準を下回ってしまい年休が発生しなくなるという不利な事態になることもあるので、労基法では、次の期間については、「出勤したものとみなす」と定めています。
        • 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
        • 育児・介護休業法に定める育児休業、介護休業をした期間
        • 労働基準法に定める産前・産後の休業をした期間

          これら以外に、行政解釈では、年休を取った日についても出勤したものとして取扱うことが必要とされています。
      • 一方で、就業規則などで独自に定める慶弔休暇や特別休暇などについては、出勤とみなすべきだとする法令の定めはありません。

        しかし、8割以上の出勤率を条件としたのは、とくに出勤率の低い労働者を除外するという趣旨であって、正当な手続により出勤の義務を免除されている日を、勤務成績が不良の評価を受けるような欠勤と同様に取り扱うことは妥当ではないとして、出勤率の算定にあたっては、むしろ全労働日から除外するほうが適切であると解されています。
  • 【休業終了時に年休を加算】

    • 今回のケースでは、出勤率の算定にあたっては法定の産前・産後休暇と育児休業を出勤とみなして扱わなければなりませんので、算定した出勤率が結果的に8割を超えていれば、休業中であっても付与の基準日に新しい年休が発生することになります。
    • ただし、育児休業期間中の所定労働日は、もともと労働者からの申出に基づいて出勤が免除されている日なので、年休を行使する余地はないものといえます。
      したがって、実務上は、休業終了時に所定の日数分の年休を加算することでも差し支えありません。
 復職後の年休日数は減らせる?
採用後5年目から1年以上の間、私傷病のため休職していた従業員がこのほど復職する予定なのですが、年次有給休暇は休職期間中には新しく付与しなくてもかまいませんか?
また、1年以上勤務していないので、復職後は新規の採用と同様に6ヵ月経過後に10日与えることで問題はありませんか?
  • 休職期間中休のの年休の付与

    • 労働基準法(第39条)では、使用者は、雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10日分の年次有給休暇を与えなければならないとし、その後は1年ごとに、継続勤務年数の区分に応じて所定の日数を加算した年次有給休暇を与えなければならないと定めています。ただし、1年ごとの各期間の全労働日の8割以上出勤する要件を満たすことが必要とされています。
    • 休職の理由が業務上以外の負傷・疾病の療養である場合、出勤率の算定の際には、休職期間は出勤しなかったものとして扱うことができます。
      したがって、休職期間中に到来した付与日の前1年間の出勤率が全労働日の8割未満であれば、新規に年次有給休暇を与える必要はありません。
    • これは、法律に基づいた扱いですが、就業規則などで出勤率の算定に際して休職期間を出勤したとみなすような定めがある場合は、休職期間中でも新規に付与しなければならないことがあります。
  • 「継続勤務」の意味

    • 一方、「継続勤務」とは、使用者と労働者の間に労働契約が存続している期間、つまり在籍期間をいい、継続勤務にあたるか否かについては、勤務の実態に基づいて実質的に判断するべきものとされています。
      具体的には、主に次のような場合が継続勤務に含まれるとされています。
      • 定年退職者を引き続き再雇用する場合(ただし、退職と再雇用との間に相当期聞があり、客観的に労働関係が断続していると認められる場合は除く)
      • 在籍型の出向をした場合
      • 休職とされていた者が復職した場合
      • パートなどを正規職員に切替えた場合
    • 休職期間があっても労働契約は存続しているので、年休の付与における継続勤務年数から休職期間を除くことはできません。したがって、復職後に到来する次の付与日において、採用日からの継続勤務年数をもとに新規の年休日数を決めることになります。(ただし、前述の出勤率の算定結果により、新規に発生しないこともあります。)
  • 復職者への説明

    • 病気休職が終わって復職する人は、自分の病気が再発するのではないか、また体調を悪くするのではないかなどと考える傾向があり、休職期間中または復職後の年休付与がどうなるのか関心を持つことでしょう。
      就業規則などを確認して、年休の扱いについて本人にしっかり説明しておくことが大切です。
 退職日までに年休を使い切りたいと申し出られた
退職する社員から退職日までに残っている年次有給休暇を全部使い切りたいと言われた場合、これを拒否したり、退職日を前倒しすることはできるでしょうか?
  • 退職時の年次有給休暇の扱い

    • 年次有給休暇(年休)は、原則として労働者が請求した時季に与えなければならないとされています。
      ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者はこれを他の時季に変更させることができます。これを「時季変更権」といいます。
    • しかし、20日の年休の権利を有している労働者が、解雇予定日までの20日間の年休取得を申し出た場合、「当該20日間の年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇子定日をこえての時季変更は行えない」とされる労働基準法の解釈例規がありますが、一般の退職の場合も同様とされています。
    • つまり、年休は、在職している間に取得することが前提で、退職後には取得できないものなので、労働者が退職日までの間に残っている年休をすべて取得して辞めたいという場合なども、退職予定日をこえての時季変更権は行使できず、その申し出は認めざるを得ないとされています。
  • 退職日の調整はできるか…

    • 退職前に年休を取得させないために、退職日を一方的に前倒ししてしまうことは、労働者からすると解雇と同様の扱いを受けたと解釈され、変更した退職日まで間がないときは解雇予告手当の支払いを要するだけでなく、不当な解雇とみなされることにも繋がるので、適切な対処方法ではありません。
    • ただし、一方的ではなく、話し合いにより退職日を前倒しする余地は残されていますので、退職により消滅してしまう部分の年休を一定金額で買い上げることなどを条件に、あくまでも合意の上で退職日を調整することは可能であるといえます。(時効や退職により消滅することが確定した年休や、法定日数をこえて与えられている有給休暇を買い上げしても法違反とはなりません)
  • 懲戒の要素がある場合は…

    • 退職前の年休取得を認めたくない心情は、退職にあたっての社内ルールを無視し、会社や同僚などに迷惑をかけるような退職のしかたの場合に増幅されることが多いとされます。
    • 年休を使い切ってから退職することを申し出た労働者が、年休に入る前に必要な業務の引き継ぎを怠ったり、申し出の日が直前であったりする場合は、就業規則などの規定と照らし合わせて違反行為に該当すれば、一定の懲戒の対象とすることも考えられます。
    • 退職前の年休取得の申し出を躊躇させるためには、就業規則などの中に退職にあたって必要なルールを盛り込むとともに、ルールを守らない場合には懲戒を行うことを日頃から意識させておくことも大切なことでしょう。
    • 年休を取得することにより申し出た退職日までに必要な引き継ぎなどが行えない状況であれば、ルール遵守をよく言い聞かせて年休の申し出を自主的に取り下げてもらったり、退職日を調整してもらったりすることも、適切な対処方法といえます。
 休日に移動したら休日出勤か?
社員が出張する場合、仕事は月曜日の朝からで、出張先への移動は日曜日、となることがあります。この場合、移動時間は労働時間となるのでしょうか?
  • 結論から言うと、移動時間は労働時間ではありません。例えば現場に向かう車中では、新聞を読もうが、寝ていようが本人の自由です。これは時間的には拘束されるが、何をしても自由ということです。だから、「労働時間ではない」、「残業手当や休日出勤手当も必要ない」となるのです。

    • しかし、移動時間が労働時間としてカウントされる場合もあります。それは「商品、製品を管理しながら移動する場合」、「会社の現金などを待って移動する場合」などです。例えば運送業務のように、その移動自体に業務性がある場合は労働時間となります。
      この場合、通常は会社からの業務命令もあるでしょう。
    • それから、これに関連したご質問で、「出張中に休日がはさまった場合の取り扱いは?」というものがあります。この場合も上記と同様の考え方となり、労働時間としてカウントする必要はありません。
    • 今回は出張の移動時間などをみてきました。
      ただ、誤解が生じやすい部分でもあるので、出張時の取り扱いを就業規則で明らかにしておくといいでしょう。
      明示すれば、つまらないトラブルは減少します。

      私がお薦めする条文は次となります。

      • 第○条(出張等)

        出張その他会社の用務を帯びて事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時問の労働をしたものとみなす。
        ただし、会社があらかじめ別段の指示をしたときはこの限りでない。

      • この条文のポイントは最初の「出張その他会社の用務を帯びて」「事業場外で業務に従事」という部分です。
        この条文を入れておけば、移動時間は「会社の用務」を帯びてはいない、出張の谷間の休日も同様、とすることができるのです。
      • この条文を入れつつ、趣旨についても説明しておくといいでしょう。そうすれば、移動時間などに対する誤解がなくなります。そして、この条文をきちんと機能させるために「出張承認申請書兼出張報告書」を作成しましょう。ここに具体的な日程(移動日時も含めて)、内容を記載してもらいます。
      • また、この「出張承認申請書兼出張報告書」の欄外などに就業規則○条に基づき、休日に出張先へ移動した時間、出張中に休日がはさまった場合の当該休日は労働時間になりません」と記載しておきましょう。そうすれば、会社も出張の詳細が分かりやすく、移動時間などに関して、もめることはなくなります。
      • 就業規則そのものは文章も固い表現で分かりにくいこともよくあり、書いてあっても、もめる可能性を合んでいます。だから、こういう現場での運用書類に「分かりやすい表現で」記載し、その可能性を下げる必要があるのです。重要ですので覚えておいてください。
 「契約社員」のような有期契約労働者の有給休暇や育児・介護休業
いわゆる「契約社員」と言われるような有期契約労働者であっても、一定の要件を満たせば年次有給休暇や育児・介護休業などの法令で定められた休暇が適用されます。
  • 年次有給休暇

    • 「6ヵ月間継続勤務」については、契約期間が6ヵ月を超えている場合はもちろんですが、3ヵ月契約のような短期契約であっても、契約が更新されて6ヵ月を超えて勤務する場合もこれに該当します。
      また、継続勤務の要件に該当するかどうかについては、勤務の実態に即して判断されるものなので、それぞれの契約期間の終期と始期との間に短期間の間隔を置いたとしても、それだけで当然に継続勤務が中断することにはなりません。
      • これは、定年退職による退職者を引き続き嘱託社員などとして期間を定めて再雇用している場合にも該当します。 したがって、再雇用であっても実質的に雇用関係が継続している場合には、定年の時に残っていた年次有給休暇の日数は引き継がれることになります。
  • 育児休業・介護休業

    • 引き続き雇用された期間が1年以上あり、かつその養育する子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる有期契約労働者から育児休業の申し出があった場合、事業主はその申し出を拒むことはできません。(ただし、子が1歳に達する日から1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、契約の更新がないことが明らかである有期契約労働者は除かれます。)
    • 介護休業の場合も同様で、引き続き雇用された期間か1年以上あり、かつ介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる有期契約労働者からの申し出があった場合、それを拒むことはできません。(ただし、93日を超えて1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、契約の更新がないことが明らかである有期契約労働者は除かれます。)
  • 子の介護休暇

    • 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する有期契約労働者から、病気やケガを負ったその子を看護するために休暇(年5日まで)の申し出があった場合、その申し出を拒むことはできません。
 

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