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3: 「労働契約」 Q
 労働契約の継続・終了
労働契約が継続しているなかで、出向や懲戒、解雇は労働者に与える影響が大きいため、トラブルになることが少なくありません。そこで、「労働契約法」第14条から第16条では、使用者の権利濫用と認められる出向、懲戒、解雇については無効になることを定めています。
  • 出向 (法第14条)

    使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

  • この条文は、使用者が労働者に出向を命ずることができる場合であっても、その出向の命令が権利を濫用したものと認められる場合には無効となることを示したものです。
    どのような出向命令が権利濫用となるのかを判断するに当たっては、その出向が必要なものであるか、対象労働者の選定が適切であるかを中心に、その他の出向にかかる事情も加味されることになります。
    また、どのような場合に使用者が出向を命ずることができるのかについては明確にされていませんが、個別具体的な事案に応じて判断されることになります。
  • 懲戒 (法第15条)

    使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当てあると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

    懲戒は、企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために必要とされる使用者の権利とされていますが、労働者に労働契約上の不利益を生じさせるものであることがら、判例をみても懲戒は無制限に認められるものではありません。
    第15条は、使用者が労働者を懲戒することができる場合であっても、その懲戒が権利を濫用したものと認められる場合には無効となることを示したものです。
    どのような懲戒が権利濫用となるのかを判断するに当たっては、懲戒の原因となる労働者の行為の性質と態様などの事情が総合的に考慮され、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利濫用に当たるとしています。
    なお、労働基準法第89条では、事業場に制裁(「懲戒」と同義)の定めがある場合には、その種類と程度について就業規則に記載することを使用者に義務づけています。
    懲戒を行う場合には就業規則などの根拠が必要であるとする判例もありますが、労働契約法ではこの部分については触れていません。 しかし、合理性や正当性かあるかどうかを判断する「事情」の一つの要素として重要なことであると言えるでしょう。。
  • 解雇 (法第16条)

    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当てあると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

  • これは、最高裁判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を規定したものです。
    従来の労働基準法第18条の2にも同じ内容の条文がありましたが、民事的な解雇ルールが、罰則をもって規制される労働基準法の規定にはなじまないことから、労働契約法の成立に伴って同法第16条に移行されたもので、労働基準法第18条の2はこの法の成立にあわせて削除されました。
    なお、解雇ルールが労働契約法に規定されたことは、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて、使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではないとされています。
 期間の定めのある労働契約
アルバイトや契約社員など、一定の期間を定めて労働契約を結んでいる場合、契約期間の途中で一方的に契約を終了させると、相手側に少なからず影響を与えることになります。
民法第628条には、期間を定めた雇用について、「やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる」と定められていて、労働者、使用者にやむを得ない事由がある場合に限って契約の解除権があることを示しています。
しかし、この規定がほとんど知られていないため、「アルバイトや契約社員はいつでも辞めてもらえる」、「期間を細切れにすれば解雇の問題は起きない」などと誤解している使用者も少なくありません。
そこで、労働契約法では、第17条に期間の定めのある労働契約(有期労働契約)についてのルールが定められました。
  • 期間の定めのある労働契約 (法第17条)

    • 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。(第1項)
    • 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。(第2項)
  • 第1項は民法第628条と異なり、使用者についてのみ、やむを得ない事由がある場合でなければ中途で契約を解除(解雇)することができないことを示しています。
    ここでいう「やむを得ない事由」とはどのような事由をいうのかは法律では明らかにされていませんが、契約期間は労働者と使用者が合意により決定したものであって、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇ルール(法第16条)における場合よりも狭いとされ、「やむを得ない事由」かあることの立証責任は、使用者側が負うものと解されています。
  • 第2項は、契約期間を設定する際に、労働者の雇用状況が不安定なものになることを避けるため、雇い入れの目的に照らして、契約期間を必要以上に短い期間にしないよう配慮することを使用者に求めたものです。
    例えば、使用者が一定の期間にわたり、ある労働者を使用しようとする場合には、その一定の期間中に、細切れとなる短期の労働契約を反復更新するのではなく、その一定の期間全体を契約期間とする労働契約を締結するような配慮が必要となります。また、どの程度の期聞か「必要以上に短い期間」になるのかは法律では示されていませんが、これは個々のケースに応じて判断されることになります。
    この規定は使用者に一定の「配慮」を求めたものであって、配慮をしても結果的に短期の契約期間となったことや配慮をしなかったことをもって、直ちにその労働契約が無効となったり、契約期開か変更となるものではありません。
    しかし、契約期間を細切れにしたことが原因で雇止めに関する紛争が生じた場合、配慮を行ったかどうかが考慮されるものと考えられます。
    なお、有期労働契約の期間については、厚生労働省が告示した「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準]の第4条にも定めがあり、「使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。」というように、更新の際の契約期間について配慮を求めています。
 有期雇用ガイドライン(有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン)
2008年7月、厚生労働省は「有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン(有期雇用ガイドライン)」を策定、有期契約労働者にも当然適用される法令などを整理して周知させています。
  • 対象となる有期契約労働者とは
    ガイドラインが対象としているのは、「契約を数回更新しているようなフルタイム有期契約労働者」です。ここでの「フルタイム有期契約労働者」とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者と同じ有期契約労働者であって、次のような労働者をいいます。

    1. 契約社員
    2. フルタイムで働くパートやアルバイト
    3. 嘱託社員
    4. 期間工 など

    なお、ガイドラインはこれら以外の有期契約労働者(有期契約のパートなど)を排除するものではなく、その就業状況などを踏まえて、適宜参考にすることが望ましいとしています。
    また、「パート労働法」については、フルタイム有期契約労働者には直接適用されませんが、同法に基づく指針において、同法の趣旨が考慮されるべきであるとしています。
事業主は、有期契約労働者について、安定的な雇用関係の確保、およびその労働条件や処遇等の改善を図るため、次のような点に配慮し、雇用環境の整備に努めなければなりません。
  • 労働条件の明示等
    • 労働者の募集を行う者は、その募集に当たって、労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないこと。この場合において、次の事項については、書面の交付又は電子メールにより行わなければならないこと。(職業安定法第5条の3)
      • 労働契約の期間に間する事項
      • 就業の場所、従事すべき業務の内容に関する事項
      • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日に関する事項
      • 賃金の額に関する事項
      • 健康保険等の適用に関する事項
    • 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないこと。この場合において、次の事項については、書面の交付により行わなければならないこと。(労働基準法第15条第1項)
      • 労働契約の期間に関する事項
      • 就業の場所、従事すべき業務に間する事項
      • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時筒、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に間する事項
      • 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これら忙準ずる賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
      • 退職に間する事項(解雇の事由を含む。)
    • 有期契約労働者を募集するに当たってば求人票や募集要項に、また、労働契約の締結に当たっては雇用契約書などに、それぞれ必要な事項を記載することを求めています。
      「労働契約の締結」には雇い入れのときだけではなく契約更新などのときも含まれますので、同じ条件で更新する場合でも、いわゆる「自動更新」とするのではなく、あらためて更新後の契約期間を記載した契約書を交わすことが望ましいでしょう。
    • 使用者は、有期労働契約の締結に際し、労働者に対して、更新の有無を明示しなければならず、更新する場合がある旨明示したときは、更新の判断基準を明示しなければならないこと。
      (有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条) 

    • 「更新の有無」については、「更新する」「更新する場合がある」「更新はしない」などとし、更新する場合があるとしたときの「判断基準」については、単に「業務の都合により判断する]などとせずに、「契約期間満了時の業務量」「労働者の勤務成績、態度」「業務を遂行する能力」「会社の経営状況」「従事している業務の進捗状況」など、具体的な基準を示すことが求められます。
    • 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容にづいで、労働者の理解を深めるようにすること。(労働契約法第4条第1項)
    • 労働者及び使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認すること。(労働契約法第4条第2項) 

    • 「理解を深める」とは、例えば、使用者が労働契約の内容を十分に説明し、労働者から確認や質問があったときは誠実に回答することなどが考えられます。
    • 説明の機会としては、労働契約を結ぶときや就業環境や労働条件が変わるときだけではなく、労働条件などの変更が行われなくても、労働者から就業規則に記載されている労働条件について説明を求められた場合なども考えられます。
    • また、理解を深めるためには、労働条件を記載した書面を労働者に直接交付してお互いに確認することが望ましいでしょう。。
  • 雇止めの予告及び雇止めの理由の明示
  • 企業が有期契約労働者を雇用している理由は、個々の企業、労働者の事情により様々であると考えられています。
  • しかし、契約更新に係る判断基準をどのように設定・運用すべきか、企業においてもそのノウハウの蓄積が十分なされていないなどの課題を抱えています。
  • さらに、急激な業績悪化に対応せざるを得なくなってルールを無視した安易な雇止めが行われるなど、現在の不況下にあっては多くの問題を引き起こしているのが実情です。
    ガイドラインでは、雇止めの基本的なルールについて「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(雇止め告示)の趣旨を示し、周知を図っています。
    • ア雇止めの予告
      • 使用者は、有期労働契約(3回以上更新し、又は雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくども30日前までにその予告をしなければならないこと。 (雇止め告示第2条)
    • イ雇止めの理由の明示
      • アの場合において、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときや、有期労働契約が更新されなかった場合において、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、使用者は、遅滞なく交付しなければならないこと。
      • (雇止め告示第3条)
    • 有期契約労働者にとって、契約の更新を希望していたにもかかわらず雇止めを受けることは、解雇に等しい扱いと言えます。したがって、雇止めを行うときは使用者に労働基準法第20条に定める解雇予告に準じた扱いを求めています。
    • 予告の対象となる有期労働契約は、
      @契約期間にかかわらず有期労働契約が「3回以上」更新されている場合、
      A1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、初回の契約締結時から継続して通算1年を超える場合、
      B1年を超える契約期間の労働契約です。
      ただし、契約締結時や更新時にあらかじめ更新しない旨を明示してある場合は除かれます。
      また、「更新しないこととする理由」「更新しなかった理由]は、単に「契約期間の満了」とは別の理由を明示することが必要です。
      例えば、「担当していた業務が終了したため」「事業縮小のため」「業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため」「無断欠勤をするなど勤務態度が著しく不良のため」などが考えられます。
  • 雇止めの予告及び雇止めの理由の明示
    • 事業主は、女性労働者が妊娠したことや出産したこと等を理由として雇止め等の不利益な取扱いをしてはならないこと。
      (男女雇用機会均等法第9条第3項) 

    • 男女雇用機会均等法では、女性労働者が妊娠、出産したことなどを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしていますが、「不利益な取扱い」には雇止めや、あらかじめ契約更新回数の上限が明示されている場合に更新回数を引き下げることも含まれます。
 事業場外労働に関する協定
事業場外のみなし労働時間制
  • 出張や外勤の営業のように、労働者が業務の全部または一部を事業場外で行う場合で、労働時間の算定が困難であるときは、その事業場外の労働については、原則として所定労働時間労働したものとみなすことができます。これを一般的に「事業場外のみなし労働時間制」といいます。(労働基準法第38条の2)
  • この制度では、事業場外で業務を行うために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間、または労使協定で定めた時間労働したものとみなされます。
  • そして、労使協定で事業場外でのみなし労働時間を定めた場合であって、その時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合には、原則として「事業場外労働に関する協定届」を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
労使協定で定める事項

労使協定で定める基本的な事項は、@.対象となる業務、A.1日のみなし労働時間、B.有効期間です。
  • @.対象となる業務
    • 事業場外のみなし労働時間制の対象となるのは、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務です。
    • 事業場外で行われる業務であっても次のような場合は具体的な指揮監督が及び労働時間の算定が可能なので、事業場外のみなし労働時間制を適用することはできません。
    1. 何人かのグループで事業場外で業務に従事する際、そのメンバーの中に、労働 時間の管理をする人がいる場合
    2. 随時、携帯電話などで管理者の指示を受けながら業務に従事する場合
    3. 管理者からその日の訪問先や帰社時刻などの具体的な指示を受けて、その指示どおり業務に従事して事業場に戻る場合
  • A.1日のみなし労働時間

    • その業務を遂行するために、通常必要とされる時間を定めます。
    • 労働時間の全部を事業場外で業務に従事する場合(いわゆる直行および直帰)は、協定で定めた時間が労働時間となります。
    • 例えば、1日のみなし労働時間を「9時間」とした場合は、実際は8時間であったり、10時間であったりしても、9時間労働したものとします。

    • しかし、1日のうち労働時間の一部を事業場内で業務に従事する場合は、みなし労働時間制による労働時間の算定の対象となるのは事業場外で業務をした部分であって、労使協定についても、この部分について協定するものとされます。そして、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における労働時間とを加えた時間が、原則としてその日の労働時間となります。

    • 例えば、みなし労働時間を9時間と定めた場合で、事業場内労働(内勤)を2時間行った後に事業場外労働(外勤)を行ってそのまま直帰したときは、合計の11時間がその日の労働時間です。
    • このように、協定でみなし労働時間を定めるときは、内勤の時間は協定で定めたみなし労働時間に加算されることになるので、常態として内勤をともなうときには、協定で定めるみなし労働時間の設定に注意が必要です。
  • B.労使協定の有効期間
    • 協定でみなし労働時間を定める場合は、その協定の有効期間を定めなければなりません。
 労働契約の変更ルール

  • 労働契約法第6条には、労働契約は労働者と使用者の合意により成立することが定められていますが、労働契約の内容を変更する場合においても、次の第8条のとおり、双方の合意が原則となっています。

    労働契約の内容の変更(法第8条)

    労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

    「合意により」と規定されているとおり、労働契約の内容である労働条件は、双方の合意のみにより変更されるものとなっていますので、労働契約の変更の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものとされています。
  • 就業規則を変更することによって労働契約の内容である労働条件を変更する場合、賃金の引き下げなど、その変更が労働者にとって不利益になることが考えられます。
    労働条件をめぐるトラブルの多くは、こうした不利益な変更がもとになることが多いため、法第9条および第10条では、合意がないままの就業規則の変更による労働条件の不利益変更を原則として禁止したうえで、一定の要件を満たす場合は、就業規則の変更による労働契約の内容の変更を認めています。

    就業規則の変更による労働契約の内容の変更(法第9条、第10条)

    • (第9条)使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合はこの限りでない。
    • (第10条)使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
      ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
  • 第10条は、「就業規則の変更」という方法によって労働条件を変更する場合は、使用者が、

    • @変更後の就業規則を労働者に「周知」させたこと、
    • A就業規則の変更が「合理的なもの」であること、という要件をいずれも満たした場合に、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則の定めによる、という法的効果が生じることを明確にしたものです。
  • また、労働者に不利益となる就業規則の変更が「合理的]かどうかについては、

    • @労働者の受ける不利益の程度、
    • A労働条件の変更の必要性、
    • B変更後の就業規則の内容の相当性、
    • C労働組合等との交渉の状況、
    • Dその他の就業規則の変更に係る事情、

  • を考慮要素として、個別具体的な事案に応じて判断するものとしています。
  • なお、就業規則の変更によっては労働条件が変更されないという合意があるときは、その部分は合意が優先することになりますが、合意の内容が就業規則で定める基準に達していない場合は、法第12条の定めによって、達していない部分は無効となり、就業規則で定める基準に引き上げられることになります。
労働契約を変更するときのルール
労使についての合意
労働条件の変更
就業規則の変更による
労働条件の不利益変更
  • 労働者に周知
  • 変更が合理的であれば可能
 
  
合意がないままの不利益変更は原則禁止
(就業規則の変更による場合)
 その人は社員なのか?、外注先なのか?
「その人が社員なのか? 外注先なのか?」。この問題はいつの時代にもよくある質問です。
「雇用契約と業務委託契約の分岐点はどこにあるのか?」、「雇用契約書や業務委託契約書がない場合はどう判断するのか?」
  • 税務であれ、労務であれ、契約書の形式ではなく、「実態で総合的に」判断します。
    だから、「完全に明確な」線引きはありません。ただし、ガイドライン的な基準はあります。

    • 社員・・・ 労働基準法の適用あり
    • 外注先・・・労働基準法の適用なし、   となります。
  • 労働基準法は社員を保護する法律ですから、実態は社員なのにその適用が受けられないとなると、問題となります。
    そこで、労働基準法が適用になるかどうかは契約書の形式ではなく、実態をみて判断することになっています。実際に、会社が外注先と認識していても、労働基準監督署の調査があったことにより、外注先が労働基準監督署に飛び込んだことにより、「外注先→社員」とされてしまうこともあるのです。
  • この場合、会社は他の同様の方についても取扱いを変えることになります。これは労務に限らず、税務調査で「外注先→社員」と否認された場合も同様です。
    具体的には下記の「ような」基準となっており、これは税務も労務も同じです。

    • ○業務遂行にあたって指揮命令があるかどうか
      →「拒否できない=雇用契約」、「拒否できる=業務委託契約」
      ○勤務場所および勤務時間の拘束があるかどうか
      →「拘束がある=雇用契約」、「拘束がない=業務委託契約」
      ○労働を他の者が代行できるかどうか
      →「代行できない=雇用契約」、「代行できる=業務委託契約」
      ○報酬の基準は時間か結果か
      →「時間=雇用契約」、「結果=業務委託契約」
      ○欠勤した時に給与が控除されるかどうか
      →「控除される=雇用契約」、「控除されない=業務委託契約」
      ○残業手当がつくかどうか
      →「残業手当がつく=雇用契約」、「残業手当がつかない=業務委託契約」
      ○報酬の額が同様の業務に従事している社員に比べて高額か
      →「同じような額=雇用契約」、「高額=業務委託契約」
      ○報酬は労働に対する対価か、納品に対する対価か
      →「労働に対する対価=雇用契約」、「納品に対する対価=業務委託契約」
      ○業務に使用する機械、器具の費用負担
      →「会社負担=雇用契約」、「本人が負担=業務委託契約」
       実際、裁判などもこれに洽っています。
    • 上記のことを踏まえて業務の種類、内容などをよく検証し、判断することが重要です。

請負と雇用の判定についての判例

労働基準法第9条

(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。〔平一〇法一一二号本条改正〕
  • 嘱託

    • 会社において塗料製法の指導・研究に従事することを職務内容とするいわゆる嘱託であって、直接上司の指揮命令に服することなく、また、遅刻・早退等によって賃金が減額されることはない等、一般従業員とは異なる待遇を受けている従業員であっても、毎日ほば一定の時間会社に勤務し、これに対し所定の賃金が支払われている場合には、右嘱託は労働法の適用を受ける労働者と認めるべきである。
      (最判昭37・5・18民衆一六-五-一一〇八)
  • 傭車運転手の労働者性

    • 労災保険法にいう労働者は、同法が労基法の災害補償にかかわる使用者全額負担の責任保険として制定されたものであることに鑑みて、労基法上の労働者と同一のものである。
      • 会社と傭車運転手(車持込み運転手)との間における業務遂行上の指揮監督関係、時間的及び場所的拘束の程度、労務提供の代替性や業務用機材の負担の実情、報酬の性格等を総合的に考慮して、会社の傭車運転手に対する業務遂行に関する指示や時間的及び場所的拘束が、請負契約に基づく発注者の請負人に対する指図やその契約の性質から生じる拘束の範躊を超えるものである場合、傭車運転手の業務は会社との使用従属の関係の下における労務の提供と評価すべきであり、傭車運転手を労働者と認めるのが相当である。
        (横浜地判平5・6・17労判六四三−七一)
  • 専属的車持込み運転手の労働者性

    • 会社と車持込み運転手との間において、運転手が業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものであり、会社が、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、右運転手の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、運転手が会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ないような場合、右運転手は、労基法上の労働者に該当すると解することはできない。
      (最判平8・11・28判時一五八九-一三六)
  • 取締役に就任した従業員の労働者性

    • 取締役は、会社と委任契約の関係にあり、取締役会を通じて会社の業務執行に関する意思決定を行う権限が認められるので、取締役に就任することにより、労働契約について合意解約をしたとみるべき場合もあるが、取締役に就任したとしても、当該取締役が担当する具体的な職務内容、会社内での地位・権限等によっては、実質的に労働者としての性格を保有している場合もあり、従業員が取締役に就任した場合に、労働者たる地位を失うか否かは、担当する具体的な職務内容及び会社代表者の指揮命令ないし支配監督の下で職務を行っているか否か等によって決すべきである。
      (長野地松本支判平8・3・29労判七〇二-七四)

社員を外注先に転換する
  • 給与が外注費になれば、消費税の控除をすることができるので、資金繰りが楽になる一面があります。ただし、社員を外注先に転換することは一朝一タでできるわけではありません。
    また、労務の問題も関係するので、労働基準監督署の調査で「外注先と認識していた『社員的な人』の未払い残業代」が問題になった実例もあります。さらに、税務調査を考えた場合、よく問題になる項目で、会社は外注費と認識して支払っていたが、税務調査で外注費ではなく給与と指摘された、というものがあります。
    「社員的な人」を外注先として使っている会社は多いので、こういう場合は注意が必要です。

    外注費が給与と否認されれば、消費税の控除ができない、源泉すべき所得税が違う、過少申告加算税、不納付加算税、延滞税もかかる、ということになります。

    では、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
  • まず、やるべきことは「契約書の整備」です。

    なぜならば、消費税法基本通達の中に「一義的には雇用契約による対価かどうかにより判定する」という旨が書いてあるからです。
    だから、外注先との契約書がない場合、まずは契約書の整備が重要です。しかし、支払われたお金が給与なのか、外注費なのか、明確な区分ができない場合もあります。
    この場合は下記の項目を「総合的に」考え、判断することになります。

    • その契約の業務内容が他人と入れ替わることができるか?→入れ替わることができるならば、外注費
    • 会社の指揮監督を受けるかどうか?→指揮監督を受けないなら、外注費
    • 引渡し前に完成品が不可抗力のため滅失した場合の報酬は?
      • →請求することができないならば外注費
        • 社員(給与)の場合は働いた時間に対するものなので滅失は関係ない、民法で「請負」とは「当事者の一方が仕事を【完成】することを約し、相手がその【結果】に対して、報酬を支払うことを約する」とある。
    • 業務に必要な材料、用具などを誰が購入しているか?→外注先が持ち込んだ物であれば外注費、社員(給与)の場合は必要な物は会社が買ってくれる
  • もちろん、これらの項目は「例えば」であり、これらを「総合的に考える」ものなので、絶対的なものではありませんが、1つの大きな基準にはなります。だから、契約書の整備をする場合、これらの項目を明確にしたものにする必要があります。

    所得税の基本通達の中に下記の記載があります。この通達は「外交員」、集金人を前提にしたものですが、保険会社の外交員などに限ったものではありません。

    1. 支払われるお金が交通費とそれ以外に区分されている場合→交通費は通勤手当と同じで所得税は非課税、それ以外の部分は給与
    2. 1.以外の場合で、固定給とそれ以外に区分されているとき→固定給は給与、それ以外は外注費
    3. 1.と2.以外の場合は旅費の負担状況などにより、総合的に考えて判断する

    だから、固定給を支払っている場合は「一部は給与、一部は外注費」ということもあり得るので、注意が必要です。
    なお、前月の営業成績に応じ、固定給が増減する体系もありますが、これは固定給ではなく、全体が外注費となります。
    それから、この「給与か?外注費か?」がよく問題になる業種の代表例として不動産会社、美容室があります。
    このうち、不動産会社に問しては「源泉所得税質疑応答事例集」(平成12年版)に、

    不動産業者等が土地・達物の売買のあっせん者に支払う報酬

    (質問)
    自社の「従業員である外交員」に支払う報酬は外注費でいいでしょうか?
    ただし、売買のあっせんに要する費用は外交員の負担とし、固定給を別途、支払っています。

    (回答)
    このようないわゆる外交員としての業務に従事している者はもちろん、外交員としての性格を有しているので、外注費でOKです。

    という記載があります(一部を加筆修正して記載)。

    ちなみに、この項目は平成14年の改定版では削除されていますが、税制改正があったわけではありません。
    「従業員である外交員」という表現に違和感を覚える方もいるでしょうが、国税庁のウェブでも給与と外注費を同じ人に支払う事例が掲載されています。
    だから「同じ人が従業員でもあり、外注先でもある」ということはあり得るのです。

    特に毎月に定額を支払い、別途、営業成績に応じたお金を払っている場合、

    1. 固定給(給与)+歩合給 (給与)
    2. 固定給(給与)+成果報酬 (外注費)
    3. 固定報酬(外注費)+成果報酬 (外注費)

    のいずれであるかは100%の基準がないだけに、契約書の整備、それに合わせた運用が必要なのです。
    不動産会社、美容室などで給与か外注費かが問題になった場合は、顧問税理士にお問い合わせください。
  • 今回の話は100%の明確な線引きがないだけに、「○○ならば、否認を回避できます」と言い切れないことが心苦しい部分ではあります。
    しかし、「給与か?外注費か?」は税務調査でも問題になる部分なので、しっかりと契約書を整備して理論武装し、準備しておくことが必要です。

    これができていないことは多いので、もし、あなたの会社に「社員的な外注先」があるならば、ここを見直しておく必要があるのです。

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