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2: 「社会保険・労働保険」 Q
 4月〜6月に給与が多くなる場合は?(健康保険・厚生年金 保険者算定)
  • 社会保険料のもとになる標準報酬月額は、毎年4月から6月の3ヵ月分の給与額に基づいて決められるようですが、当社は毎年この時期の業務量が通常の時期よりも増えるので、残業代が多くなります。
  • その場合でも、この時期の給与額をもとにして届出をしなければいけないのでしようか?  
  • 【定時決定における「保険者算定」】

    • 健康保険や厚生年金保険では、原則として毎年4、5、6月の3ヵ月に支給された各月の報酬(給与)の平均額をもとに決まった標準報酬月額で、その年の9月から翌年の8月までの分の保険料が計算されます。
      これを標準報酬月額の「定時決定」といいますが、通常の方法による定時決定が著しく不当である場合は、保険の運営主体がその額を算定することになっています。これを「保険者算定」といいます。
    • 保険者算定を行うことができる事由としては、4、5、6月に、この3ヵ月分より前の給与の遅配分を受けたり、さかのぼった昇給によって数月分の差額を一括して受けたりしたときなどがありますが、保険者算定の対象となる新しい事由が加わりました。
  • 【追加された「保険者算定」とは…】

    • 追加されたのは、業務の性質上、季節的に報酬が変動することにより、通常の方法によって報酬月額の算定を行うことが著しく不当であると認められる場合で、具体的には次のとおりです。
      • 当年の4月、5月、6月の3ヵ月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額(報酬の支払の基礎日数が17日未満の月があるときは、その月は除く)から算出した標準報酬月額の間に2等級以上の差が生じた場合であって、この差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合、たとえば、4月、5月、6月の3ヵ月平均をもとに算出すると標準報酬月額が32万円で、前年の7月から当年の6月までの1年間に受けた報酬の月平均をもとに算出すると標準報酬月額が28万円となり、2等級の差が出た場合、この差が業務の性質上例年発生するものであれば、28万円を標準報酬月額とすることが可能となります。
      • この扱いを受けることで、通常の給与水準と保険料の水準が大きく乖離することがなくなりますが、当然に年金額や傷病手当金などの給付額もこの標準報酬月額がもとになります。

    • ワンポイント・チェック

      • 新たに追加された事由に基づく保険者算定は、提出する「算定基礎届」から適用されることになりますが、別途に事業主の申立が必要です。
      • 具体的には、その被保険者が保険者算定の要件に該当すると考えられる理由を記載した申立書と、その被保険者の同意書等を算定基礎届に添付して、日本年金機構や健康保険組合に提出します。
 再雇用後の標準報酬月額は(健康保険、厚生年金)
  • 当社には定年制がありませんが、62歳の社員が健康上の理由で勤務体系を変更してもらえないかと申し出ました。
    そこで、いったん退職した形をとって嘱託社員として再雇用し、月の所定勤務日数と賃金を減らすことで話がつきました。
    この場合でも、標準報酬月額に関しては、月額変更届での扱いにしなければならないのでしようか? 
  • 【「同日得喪」とは】

    • 固定的賃金の変更や勤務形態の変更などによって賃金が引き下がる場合、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額に関しては、一定の要件に該当すれば、賃金が下がってから4ヵ月目に月額変更届により改定を行うことが原則となっています。
       しかし、この扱いですと、定年後に再雇用された人で、賃金が引き下がっても引き続き被保険者となるときは、改定が行われる月前までは保険料は従前の標準報酬月額に基づいて計算されます。
      また、年金を受ける権利のある人は、従前の標準報酬月額に基づいて在職老齢年金の支給停止額が決まることになるので、保険料の負担や年金の停止額が、実際の賃金額に比べて犬きくなってしまいます。
    • そこで、年金を受ける権利のある60〜64歳までの人が定年に達した後に再雇用される場合に限っては、特例的に使用関係がいったん中断したものとみなし、被保険者資格喪失届および取得届が定年に達した日の翌日付けで提出されたときは、再雇用された月から再雇用後の賃金に応じて標準報酬月額が決定されます(同日得喪)。
  • 【対象範囲の拡大】

    • このほど厚生労働省の通知により、高齢者の継続雇用をさらに支援するため、この取扱いの対象が、定年による場合だけでなく、年金を受ける権利のある人が、@定年制の定めのある事業所において定年によらずに退職した後、継続して再雇用された場合、A定年制の定めのない事業所において退職した後、継続して再雇用された場合、についても拡げられることになりました。
    • この取扱いは、平成22年9月1日から行われることになっています。

    • ワンポイント・チェック

      • 「同日得喪」による被保険者資格取得届の届出には、新たな雇用契約を結んだことが確認できる書類(その人が退職したことがわかるもの、再雇用後の雇用契約書または事業主の証明書など)を添付する必要があります。
 パートタイマーなどの健康保険・厚生年金保険適用基準
  • 健康保険・厚生年金保険の適用事業所で働くパートタイマーなどの短時間就労者は、どういう状態で雇用されていれば保険に加入させなければならないのでしようか? 
  •  【法律ではなく内部文書で示す】

    • 健康保険・厚生年金保険の被保険者の適用範囲については、それぞれの法律で、原則として適用事業所に使用される人が被保険者となると定められており、「2ヵ月以内の期間を定めて使用される者」など、一定の人は適用除外とされていますが、パートタイマーなどの短時間就労者については適用除外となっていません。

    • しかし、短時間就労者は、契約期間や労働時間が多様であり、法律上の適用除外者に該当しないからといって一律に適用させることが適切な扱いなのか、という疑義もあったため、昭和55年に厚生労働省が発した内部文書で適用の判断基準が示されています。

      それによると、適用させるか否かは「常用的使用関係」にあるかないかにより判断すべきものとしていて、短時間就労者に係る常用的使用関係の判断については、次の点に留意すべきであるとしています。
      1. 当該就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して認定すべきものであること。
      2. その場合、1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間および所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、被保険者として取り扱うべきものであること。
      3. 2.に該当する者以外の者であっても、1.の趣旨に従い、被保険者として取り扱うことが適当な場合があると考えられるので、その認定にあたっては、当該就労者の就労の形態等個々具体的事例に即して判断すべきものであること。
    • 【「4分の3以上」はあくまでも目安】

      このように、1日の所定労働時間(日によって変わる場合には1週間あたりの所定労働時間)と1ヵ月の所定労働日数が、ともに通常の就労者の「おおむね4分の3以上」であれば常用的な使用関係があると認められ、被保険者になるとしています。(下枠の例を参照)

      • (例)通常の就労者の1日の所定労働時間が8時間、1ヵ月の所定労働日数が21日の事業所において、次の短時間就労者の適用は…

        • 1日5時間、月20日勤務 → 適用しない(1日の所定労働時間が4分の3未満のため)
        • 1日7時間、月12日勤務 → 適用しない(1ヵ月の所定労働日数が4分の3未満のため)
        • 1日6時間、月18日勤務 → 適用する

      • しかし、この「おおむね4分の3以上」というのはあくまでも目安で、前記の判断基準に示されているように、4分の3に満たなくても、個別のケースごとに短時間就労者の就労形態や仕事の内容などを総合的に判断して、常用的な使用関係があるかどうかで認定されるとしています。
  • ワンポイント・チェック

    • パートタイマーなどの短時間就労者は、就労の実態をもとに健康保険・厚生年金保険が適用されるか否かが判断されますので、雇用契約上の勤務時間数などでは被保険者として適用されなくても、実態により適用しなければならない場合も考えられます。
      雇用契約と実態に大きなズレがないか再度チェックをしましよう。
 大入袋は「報酬」に含めるか?(健康保険・厚生年金)
  • 当社は娯楽業および販売業を運営していますが、毎月の目標売上を達成した場合、大入袋を社員に支給していま す。多いときには年に6回支給することもあり、金額は毎回一律1万円で、賃金台帳の項目に計上し課税処理はしています。
    社会保険料については、解説書などに大入袋は「報酬」や「賞与」としない例として掲げられていますが、当社の場合も報酬としなくて問題はないのでしようか?
  • なお、賞与は別に年2回支給しています。
  • 【保険料の対象となる「報酬」「賞与」】

    • 厚生年金保険法や健康保険法では、保険料の対象となる「報酬」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と定められていますが、「臨時に受けるもの及び3ヵ月を超える期間ごとに受けるものはこの限りではない。」としています。また、「賞与」については、「労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものをいう。」と規定されています。

      • 「労働の対償」とは、被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、過去の労働と将来の労働とを含めた労働の対価、事業所に在籍することにより事業主より受ける実質的な収入と考えられます。
        したがって、事業主が恩恵的に支給する見舞金や慶弔金などは通常の報酬ではないとされ、「報酬」や「賞与]とはなりません。

        また、「大入袋」は、支給があらかじめ決められているものではなく臨時的である、中身が比較的高額ではない、いわゆる「縁起物」といえるものであって極めて恩恵的要素が強い、などの本来の性質として支給されるものであれば、実質的収入とは言い難いので、これも報酬や賞与に該当しないとして、例に挙げられていると考えられます。
      • 【支給条件等によっては「報酬」に】

        しかし、名目は大入袋であっても、支給条件や金額から、実質的にみて報酬や賞与として取り扱うべきかどうかを判断することが必要だといえます。

        質問のケースでは、大入袋の支給条件が毎月の目標達成というような成果報酬的なものであり、発生原因がまったく不確実とは言い難いこと、金額が毎回1万円で賃金台帳に計上していることなどから考えると、本来の大入袋のもつ性質とは異なり、恩恵的に支給するものではなく、むしろ労働の対償として支給するものと判断するべきだといえるでしょう。

        したがって、「3ヵ月を超える期間ごとに受けるもの」ではないときは「報酬」とみて、定時決定や随時改定などのときに、他の手当と同様に大入袋としての支給額も報酬月額に含めることが適当です。
  • ワンポイント・チェック

    • 労働保険においても、保険料の対象となる「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定められています。
 共働き夫婦はどちらが子の扶養者?(健康保険)
  • 当社の女性社員に子どもが生まれたのですが、その子を自分の方の健康保険で被扶養者にしたいと言っています。
     その女性社員の夫も会社で働いており収入もあるので、こういう場合は、本来どちらの被扶養者となるべきなのでしようか? 
  • 【夫婦共同扶養の被扶養者の認定】

    • 健康保険では、被保険者の一定範囲の家族や親族であって、かつ被保険者によって生計を維持されている人が「被扶養者」になります。
    • 夫婦がともに働いていて、それぞれが健康保険の被保険者であり、子どもや親を共同で扶養しているような場合にどちらの被扶養者になるかは、協会けんぽでは、健康保険が政府管掌であったときに出された通達に基づいて、認定が行われています。
      それによれば、年収の多い方の被扶養者とすることを原則として、夫婦双方の年収が同程度である場合は、届出により主として生計を維持する者の被扶養者とすることとした上で、その趣旨については次のように示しています。

      • 夫婦いずれの被扶貧者にするかについては、画―的に年間収入の多い方の被扶養者とすることなく、年間収入の多少を認定に当たっての判断材料として、当該の家計の実態、社会通念等を総合的に勘案して行うものであること。
      • 年間収入の少ない方の被扶昔者とする旨の届出があった場合でも、当該届出の趣旨を踏まえ、当該家計の実態等に照らし、主として年間収入の少ない方により生計を維持している者と認められるときには、年間収入の少ない方の被扶養者として差し支えないこと。
      • こうした柔軟な取扱いをするのは、近年では、夫婦のライフスタイルが多様化し、どちらの収入で家計を維持しているのか判断することが困難であり、単純に収入の多さで判断する必然性が乏しくなっていることなどから、夫婦いずれかの届出に委ねることにするほうが合理的だという考え方に基づいています。
      • 以上のように、夫婦が共同で扶養する場合は、基本的には年収の多い方の被扶養者とすることになっていますが、年収が同じ程度である場合や、年収が少ない方の被扶養者とする届出があった場合の認定にあたってば、家計の実態などを勘案することになっています。

        たとえば、元々は夫の方の年収が多かったものの、残業代が減り、賞与がカットされるなど一時的に収入が減って、その間、子どもが主に妻の収入を頼りに生計を維持しているような場合などは、妻の被扶養者として認められることになります。
  • ワンポイント・チェック

    • 協会けんぽに加入する被保険者については、被扶養者ではない配偶者がいる場合、夫婦で共同して扶養する子や親などを新たに被扶養者として届け出る際は、配偶者の年収と被保険者の年収の両方を申告することになっています。
       一方、健康保険組合では、基本的には同じ健康保険制度のもと、協会けんぽと統一的な取扱いで認定が行われていますが、届出の際には独自の確認資料を必要とする場合もあります。
 「任意継続」を途中でやめられる?(健康保険の任意継読被保険者)  
  • 退職する予定の社員が、退職後はなるべ<保険料が安<てすむように、当面は健康保険の任意継読被保険者資格を取って、途中で国民健康保険に切り替えるのが良いのではないかと考えているようですが、任意継続被保険者を途中でやめることはできるのでしようか?
    また、任意継続の保険料が途中で変わることはあるのでしようか? 
  • 任意継続と国民健康保険の保険料の違い

    • 健康保険に加入する人が退職などで資格を喪失する場合、喪失日の前日までに2ヵ月以上の継続した被保険者期開かあれば、所定の申請手続きを行うことで「任意継続被保険者」として引き続き健康保険に加入することができます。

      • 任意継読被保険者の保険料は、原則として退職時の標準報酬月額をもとに決められますが、全ての被保険者の平均に基づいた標準報酬月額(※)を超えている場合は、平均の標準報酬月額に基づいた保険料が適用されます。
        また、事業主負担がなく、全額が自己負担となります。
        • 退職後(任意継続加入後)の収入の増減などの理由で保険料が変わることはありませんが、保険料率の見直しなどで保険料が変わる場合があります。

          (※)協会けんぽでは、平成24年度に適用される標準報酬月額は28万円です。
      • 一方、国民健康保険の保険料については、各市区町村により算定方法が異なりますが、一般的には前年の所得を基準に算定されます。
        したがって、前年の所得の状況によっては、当年度の保険料が大きく変わる場合もあります。
  • 任意継続被保険者の資格喪失

    • 任意継継続保険者の資格を喪失するのは、次のいずれかの事由に該当する場合です。

      1. 任意継続被保険者となってから2年が経過したとき
      2. 保険料を納付期日(毎月10日)までに納付しなかったとき
      3. 就職して、健康保険・船員保険・共済組合などの被保険者となったとき
      4. 後期高齢者医療の被保険者となったとき
      5. 死亡したとき
    • したがって、任意継続をしてから2年が経過する前に、「国民健康保険に切り替えるため」「配偶者などの被扶養者になるため」という理由で届け出ても資格を喪失することはできません。

      • ただし、当月の保険料を納付期日までに納めないときは、上記2の事由により、納付期日の翌日に資格を喪失します。
        この場合、届出は不要で督促もありません。
      • このように、一定の場合に該当すれば、任意継続被保険者でなくなることになります。
  • ワンポイント・チェック

    • 平成22年4月から、倒産・解雇などにより離職した人(雇用保険の特定受給資格者)や雇止めなどにより離職した人(雇用保険の特定理由離職者)を対象として、国民健康保険料が軽減される制度が導入されています。
      当初から任意継続被保険者になるよりも、国民健康保険に加入したほうが保険料の負担が少ない場合もあります。
 役員も傷病手当金を受けられる?(健康保険)
  • 当社の取締役が病気で長期療養することになりました。この場合でも無給であれば健康保険の傷病手当金をもらう事はできるのでしょうか?
  • 給与は、月75万円の役員報酬のみです。?  
  • 【傷病手当金の支給要件】

    • 健康保険の傷病手当金は、被保険者が病気やけがの療養のため働くことができない場合に支給されますが、働けない日が3日間連続(待期期間)していることが必要で、4日日以降の働けなかった期間が支給の対象となります。
    • 傷病手当金の支給額は、1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額です。ただし、その間に会社から報酬(給与)を受けた場合には、支給額が調整されます。
      • 具体的には、1日あたりの報酬の額がこの傷病手当金の日額以上のときは、傷病手当金は支給されません。
        また、1日あたりの報酬の額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額のみが支給されることになります。なお、支給される期間は、支給開始日から1年6ヵ月です。
  • 【役員も支給対象】

    • 会社の役員も健康保険の被保険者であれば、通常の社員と同じように傷病手当金の支給対象となります。
      しかし、役員の場合は、支払われる報酬を変更するにも、原則的には株主総金(定時または臨時)の決議が必要とされていますので、実際は病気やけがで短期間会社を体んでも役員報酬を減額しないケースが多いです。報酬額がそのままでは、もちろん傷病手当金は支給されません。したがって、長期療養のために働くことができず、満額の傷病手当金を受けるためには、療養の間は役員報酬を一時的に不支給とすることが必要です。
      • 質問のケースでは、標準報酬日額が2万5,000円(75万円÷30)ですので、療養中の役員報酬を不支給にすれば、1ヵ月あたり(30日分として)50万円程度の傷病手当金が受けられます。(2万5,000円×2/3×30日)
  • 【実際の手続きでは議事録も提出】

    • 通常の場合、傷病手当金の請求を行うときは、賃金台帳と出勤簿の写しを添えて、保険者(協金けんぽの都道府県支部または健康保険組合)に提出しますが、役員について傷病手当金を請求する場合は、その間に会社から報酬を受けないことの確認のため、療養中は一時的に役員報酬を不支給とすることが記載された株主総金議事録または取締役金議事録(*)の写しの提出が必要とされています。

      (*)株主総金で役員報酬の総枠のみを決定し、各取締役への具体的な報酬配分については取締役金を通じて代表取締役に一任する方法をとっている場合は取締役金議事録で証明します。

      • ワンポイント・チェック

        • 一時的に役員報酬を不支給にしても、その間は標準報酬月額に基づいた保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は徴収されます。
 「雇用保険の再就職手当支給申請書」事業主証明で注意すること
  • このたび採用した従業員が、事業主の証明がほしいと言って雇用保険の再就職手当の支給申請書を提出してきました。
  • その従業員は当初は1年間の雇用契約ですが、業務量や勤務成績などを判断したうえで、必要であれば契約を更新することはあります。
  • このような場合、事業主の証明を記入する際に注意することはありますか? 
  • 【再就職手当の受給要件】

    • 雇用保険では、失業して基本手当の受給資格がある人が安定した職業に就いた湯合に、一定の要件に基づいて「再就職手当」を受けることができます。
      要件には、本人と雇用先の事業所に関するものがあり、その主なものは次のとおりです。
      • 離職した前の事業所に再び就職したものではないこと。また、離職した前の事業所と資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業所に就職したこと。
      • 1年を超えて雇用されることが確実であること。
      • 原則として、雇用保険の被保険者になっていること。
      • 求職の申込みをした日より前に採用が内定した事業主に雇用されていないこと。
      • 再就職手当の支給決定の前に離職していないこと。
  • 【再就職手当の給付率】

    • 再就職手当は、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)によって給付率が決まります。
      • 残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合
        基本手当日額×支給残日数×60%
      • 残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合
        基本手当日額×支給残日数×50%

        このように、失業の認定を受けた後に早期に再就職した場合は、再就職手当の給付率が高くなります。
  • 【事業主の証明】

    • 再就職手当の支給申請書には、対象労働者を雇用した事業主が記入・押印する欄があり、その中に雇用期間の定めの有無について記入する箇所があります。
      • 雇用期間に定めがある場合はその満了日を記載し、
        @契約更新条項、
        A1年を超えて雇用する見込みについて、それぞれ「有」「無」のいずれかを選択します。
        前述のとおり、「1年を超えて雇用されることが確実であること」という要件に該当するかどうかは、この選択で判断されることになります。
      • 雇用期間を定めた場合、雇用契約書などに、契約を更新することがある旨の記載があれば、@、Aともに「有」とすれば問題はありません。
      • また、「雇人年月日」と「採用内定年月日」については、事実に基づいて記入します。
      • このほかに注意することは、再就職手当支給申請書は、雇用された日の翌日から起算して1ヵ月以内に申請者の住所を管轄するハローワークに提出しなければなりませんので、申請書に事業主の証明を求められたときは、期限に間に合うように速やかに対応することが必要です。。
  • ワンポイント・チェック

    • 再就職手当の支給申請書に事業主が偽りの証明をした場合は、手当金の不正受給の連帯責任を負わされますので、支給申請書には事実どおりに記載する ようにしましよう。
 病気療養で退職、失業給付はもらえる?(雇用保険)
  • 病気で長期療養をしている従業員が、復職が叶わず退職することになりました。
    雇用保険の失業給付は退職後1年以内に受けることになっているようですが、この従業員の場合、療養中であっ
    ても給付を受けられるのでしようか? 
  • 【基本手当の受給申込】

    • 雇用保険の一般披保険者が離職し、基本手当を受けるためには、まずハローワークに求職の申し込みをするとともに離職票を提出して、基本手当の受給資格者となることが必要です。
      そして、一定期間経過した後に受給資格者がハローワークで失業の状態にあると認められた場合に、基本手当が受けられることになっています。
    • 「失業の状態」とは、就職しようとする意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない状況にあることをいいます。
    • したがって、病気やけがの療養のため、離職後すぐに求職の申し込みができない場合は、その間は基本手当を受けることができません。 
  • 【疾病等を理由とした受給期間の延長】

    • 所定給付日数分の基本手当を受けられる期間(受給期間)は、原則として、離職した日の翌日から1年間ですが、その間に病気、けが、妊娠、出産、育児などの理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。
    • ただし、延長できる期間は最長で3年間となっています。受給期間中に働けるようになり、失業の状態にあることが認定されれば給付が始まります。
  • 【求職申込後の長期療養には「傷病手当」を申請】

    • 病気が治り働ける状態になって、求職の申し込みをした後に、再び病気やけがの療養のために職業に就くことができなくなった場合には、その間は失業の認定か受けられませんので、基本手当を受けることができなくなってしまいます。
    • そこで、基本手当を受けることができない日の生活の安定を図るために、受給資格者が15日以上引き続いて病気やけがの療養のために職業に就くことができなくなった場合には、基本手当の代わりに「傷病手当」を受ける申請ができます。(傷病手当の日額は基本手当の日額と同額です)
  • ワンポイント・チェック

    • 受給期間延長の措置を受けようとする場合には、病気療養などの理由により引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日から起算して1ヵ月以内に、ハローワークに届け出ることが必要です。(この場合の届出は代理人や郵送でも可能です)
    • 療養中に退職する場合には、本人にそのことを伝えておきましょう。
 労災と会社の責任
  • 会社の業務が原因で社員がケガをしたり病気になった場合、その損害を会社が負担することになっています。この場合、原因が業務かどうかを検証することが重要ですが、そこを証明するのは容易ではありません。

    • ケガならば原因は比較的明らかですが、病気の場合は業務との関連を結びつけることはとても難しいことです。
      そこで業務が原因か、そうではないかという基準について、労災保険制度の基準があります。
      特に、過労死については厚生労働省が下記の認定基準を出しています。

      • 発注前の1週間において、特に過重な業務を行った
      • 発注前のおおむね6ヵ月間にわたり、疲労が蓄積する業務を行った

        • →発症前1ヵ月の残業時間が100時間超
        • →発症前2ヵ月〜6ヵ月の1ヵ月あたりの平均残業時間が80時間超
        • このいずれかに該当し、脳疾患、心臓疾患を発注した場合、業務上の病気として取り扱うことになるのです。

    • さらに、「うつ病による自殺」についてみてみましょう。
      まず前提として、自殺の場合は労災の対象にはなりません。なぜなら、自殺は「本人の故意による死亡」だからです。しかし、業務の激しいストレスからうつ病になり、自殺をした場合、業務上の死亡事故として労災が認められる場合もあるのです。ただし、その判断はとても難しいです。
      そこで、過労死の基準と同じように厚生労働省が次のような指針を出しています。

      • 過重なストレスが原因である精神疾患等を発病している
      • 発症前おおむね6ヵ月の間に大きなストレスがかかる業務を行っている
        →1ヵ月の残業が80時間を超えているかがポイント
      • 業務以外の心理的な負荷がないこと
        →例えば、身内の不幸など

    • このいずれかに該当した場合「うつ病による自殺」も労災として認められるのです。

      もちろん、このような状況を防ぐことが会社の責任です。しかし、どうしても業務が優先されてしまい、その結果、労災と疑われる事が発生してしまうこともあります。
      この場合、その社員はそこまでは残業していないというならば、次の書類等で証明します。

      • まず、残業時間の問題は証拠となるのは、「タイムカード」、「出勤簿」、「業務日報」などです。
      • 次に、過重な業務を担当していたかどうかという点ですが、これは判断に迷うところです。
      • この場合の証拠は、「就業規則」、「雇用契約(担当業務の内容は何か)」、「業務日報」、「上司、同僚等の陳述書→それほど過重ではなかったと意見を述べてもらう」などです。

    • これらのことを明確にし、社員の病気が業務に関連していないことを証明するのです。

    • 社員が病気やケガになったら、会社としても大きな損失です。当然ですが、その原因が業務にある場合、すぐに改善しなければなりません。上記の基準などを再検討し、就業規則などの形式を整備し、運用を徹底していくことが重要です。
 通勤災害(労災)になる場合、ならない場合
  • 雪の日に自宅マンション5階の部屋を出たところ、足を滑らせて転倒、負傷してしまいました。この場合は通勤災害として労災保険の受給対象になりますか? 
  • この場合は通勤災害として労災保険の対象となるので、自己負担なく治療することができます。

    • しかし、この方の自宅が一戸建で玄関を出たエントランスで滑って転んだとしても、敷地内の場合は労災保険の対象にはなりません。
      だから、この場合は健康保険で治療することになります。
      • この違いはいったいどこにあるのかというと、「人の通行が自由に認められている場所か否か」ということです。
      • これは、
        • 「マンション等の集合住宅…自宅のドアを出たところから」
        • 「一戸建…敷地を出たところから」

          法的な「通勤」という概念が始まるということです。
    • このように労災保険は仕事中のケガなどだけでなく、通勤途中のケガなどの治療費をカバーする制度です。だから、通勤については法的な定義が定められており、「住居から就業場所への移動」、「合理的な経路および方法により行う」となっています。

      • まっすぐ家に帰る途中に事故にあったら、通勤災害として労災保険の適用となります。
      • しかし、帰りに食事(業務外)に行き、その帰り道での事故は労災の対象とはならないのです。

        なぜなら、通勤災害の対象とならない行為も法的に決まっているからです。
        これを

        ○逸脱……通勤経路から外れること →例:アフター5に友人と、通勤では通らない場所で食事の約束をし通勤経路を外れる
        ○中断……通勤経路の途中でストップすること →例:通勤経路で途中下車し、居酒屋で一杯飲んでいる

        といいます。通常、通勤経路から逸脱したり中断したら、労災の適用はありません。
      • ただし、逸脱や中断が日常品購入、病院への通院、家族の介護のため等であれば通勤に該当し、通常の経路の範囲内で起こった事故等には労災が適用されます。

        通勤経路を外れて買い物をしたり寄り道をしている時など、逸脱や中断をしている最中での事故には適用されません。
    • また、よくご質問があるのは、「通勤に該当するのか?しないのか?」ということです。

      • 例えば、「終業後の社内サークル活動後、帰宅途中のケガ、会社行事の飲み会の後、帰宅途中のケガなどです。
        この場合、終業後すぐに帰宅していない状況ですが、会社関係の行事なので通勤として認められそうな気がしますが、これは通勤災害になるかならないかは以下で決まります。
        • それは、業務命令か、残業代等が支払われるか否か、強制参加か、などがポイントとなっていくのです。

          社員同士での単なる親睦ではその後の通勤災害は認められないでしょう。
 社内行事中に事故でがをしたら?(労災保険)
  • 当社では、ここ数年の恒例行事として休日にウォーキング会を実施しています。
    先日実施した会で、世話役をしていた社員が足を滑らせて捻挫してしまいました。
    すべての従業員に参加を呼びかけていますが、強制してはいません。ただし、数名の世話役は毎回役員が指名していて、辞退はできないことになっています。
    その場合、この社員のけがは労災保険が適用されるのでしようか? 
  • 【業務上災害の認定】

    • 労災保険が適用される業務上災害とは、労働者が事業主の支配下にある状況で、災害発生の原因が業務そのものにあることをいいます。
      したがって、就業時間内であっても、業務を逸脱していた場合や私的な行為など、けがを負った災害の原因が業務以外にある場合は業務上災害とは認められません。
  • 【会社行事に参加中の場合は】

    • スポーツ会や催し物など、会社主催の行事であって、その参加中にけがを負った場合は、行事に参加することが「業務」と認められなければ業務上災害とは認められません。

      • 参加することが業務であるかどうかの判断については、その行事の目的などに鑑みて、参加が事業の運営に社会通念上必要と認められるものであったか、参加が強制されていたか、などがボイントとなります。
      • 参考までに、労災保険に関する通達では、運動競技会に出場中に被った災害について、業務上とする場合の判断基準を具体的に次のように示しています。(一部抜粋)

        • 対外的な運動競技会に出場した場合(次のどちらの要件も満たすこと)

          1. 運動競技会出場が出張または出勤として取り扱われるものであること
          2. 運勧競技会出場に関して、必要な旅行費用等の負担が事業主によって行われ、労働者が負担するものではないこと

        • 事業場内の運動競技会に出場した場合(次のどちらの要件も満たすこと)

          1. 運動競技会は、同一事業場または同一企業に属する労働者全員の出場を意図して行われるものであること
          2. 運動競技会当日は、勤務を要する日とされ、出場しない場合に欠勤しかものとして取り扱われること

  • 【世話役の指名は参加の強制か】

    • 今回のケースでは、ウォーキング会が定例的に開催されてはいますが、従業員全員が参加しなければならない行事ではない状況ですので、一般参加の従業員がウォーキング中に負ったけがの場合は労災と認定されないと考えられます。
    • しかし、使用者側の立場にある役員から世話役に指名された社員は、世話役の辞退ができないなど、いわば参加が強制的であって、会社主催の行事の運営に携わることが命令されているような状況であると考えられます。
    • 世話役がもしも参加しなかった場合の賃金の扱いなどが明らかではありませんので、断定はできませんが、参加することが業務であると認められる可能性は高いといえます。
 休業と労災給付
  • 休職、休業、休暇
  • 休職 業務外傷病 欠勤 「休職」は労働者の個人事情に起因する点が特長。
    労働者都合で休職するわけですから無給であることが普通です。
    休業 業務上傷病 勤務できない期間 労働者が、労働者の責任範囲にない事情(責に帰すべからざる事由)のために
    労働したくてもできない場合を休業と言います。
    産前産後
    育児介護
    休暇 生理休暇 休暇とは、会社がその労働義務を免除する日のことです。ですから、
    労働する義務がある日にしか休暇を取ることはできません。
    慶弔休暇
  • 業務上の傷病により休業した場合の労災給付
  • 療養開始後 1年6ヵ月まで 1年6ヵ月〜3年未満 3年〜
    疾病が 治るまで 治った後 治ってない 治るまで 治った後 治ってない 治るまで 治った後 治ってない
    療養補償給付
    (治療給付)
    休業補償給付
    傷病補償年金 1〜8級 傷病補償年金 傷病補償年金 傷病補償年金 傷病補償年金
    8〜14級 補償一時金 補償一時金
    傷病年金 1〜8級 傷病年金 傷病年金 傷病年金 傷病年金
    8〜14級 傷病一時金 傷病一時金
  • 打切補償(労働基準法第81条)

    • 打切補償とは、療養開始後3年を経過したときに、平均賃金の1,200日分を支払うことを条件に、その後の療養補償、休業補償、障害補償、その他のすべての補償についての使用者責任を免除させようとするものです。
      同時に、解雇制限の規定(法第19条)も適用されなくなるため、その労働者を解雇することができます。

      • @ 平均賃金1,200日分の補償額を支払って労災給付を止める。   解雇可能
      • A そのまま労災給付を続ける。                       解雇不可
        1. 傷病補償年金を受けている場合は3年を経過した日、
        2. 療養開始後3年を経過した日以後に傷病補償年金を受けることとなった場合は、傷病補償年金が支給開始された日に労働基準法の打切り補償を行ったとみなされ解雇制限が解除されます。
        3. 3年を経過した時点で傷病補償年金に切替えて請求し、傷病補償年金が支給された時点で、打切り補償は支払われたとみなさ、解雇制限は撤廃されたと理解するのが正しい解釈
  • 業務上災害の傷病補償年金、障害補償年金、遺族補償年金、通勤途上の傷病年金、障害年金、遺族年金などは、厚生年金、国民年金と両方もらえる(労災年金を12%から27%一部減額する)

  • 業務災害に関する公的給付(労災)
  • 療養補償給付 治療の給付、治癒するまで全額無料。退職しても給付
    休業補償給付 賃金日額の60%、休業4日目から1年6ケ月まで、
    それ以降は原則として傷病補償年金
    特別支給金 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額
    (「休業補償給付」は会社が賃金の40%以上を支給すると減額されるが、「特別支給金」は給与を全額支給しても給付される)
    傷病補償年金 終身または治るまで。 1級は賃金日額の313日分
    障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金
    特別支給金 (傷病特別支給金) 障害の程度により114万円から100万円までの一時金
    (傷病特別年金) 障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金
    障害補償給付 年金(1級から7級まで、終身、1級は賃金日額の313日分)、一時金
    特別支給金 年金
    (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金
    (障害特別年金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金
    一時金
    (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金
    (障害特別一時金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金
    介護補償給付 常時介護
    の場合
    介護の費用として支出した額(ただし、104,960円を上限とする)。
    ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が56,930円を下回る場合は56,930円。
    随時介護
    の場合
    介護の費用として支出した額(ただし、52,480円を上限とする)。
    ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が28,470円を下回る場合は28,470円。
    遺族補償給付 年金(遺族1人のとき賃金日額の153日分)、一時金(年金を受けられる遺族がいないとき配偶者、子などに支給)
    特別支給金 年金
    (遺族特別支給金) 遺族の人数にかかわらず、一律300万円
    (遺族特別年金) 遺族の人数に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金
    一時金
    (遺族特別支給金) 遺族の人数にかかわらず、一律300万円
    (遺族特別一時金) 算定基礎日額の1,000日分の一時金
    (ただし、すでに支給した特別年金の計額を差し引いた額)
    葬祭料 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額
    (その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)
    通勤災害に関する給付
    • 療養給付(初回200円の一部負担)
    • 休業給付
    • 傷病年金
    • 障害給付(年金、一時金)
    • 介護給付
    • 遺族給付(年金、一時金)
    • 葬祭給付
    通勤災害にには解雇制限が適用されないのでいつでも解雇できるが、解雇権の乱用は許されない。

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