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1: 「賃金」 Q
 給料を支払うルールについて
 給料は社員が生活するための糧です。そして、働いた後に支払われる後払いが大半なので、会社は確実に支払わないといけません。
そこで、法律では「直接本人に対し、通貨で、その全額を支払う」ように定めています。
この「通貨で支払う」ということは「現金で支払う」ということです。自社の商品などを支給しても給与にはなりません。小切手、手形なども同じで認められていません。あくまでも「現金」で支払うことが必要なのです。もちろん、現金の手渡しではなく、銀行振込もOKです。
 ただし銀行振込の場合、会社が「勝手に」給与を社員の口座に振り込むだけでは違法となります。銀行振込を利用することにつき、社員の同意が必要なのです。形式的には入社時に社員から口座指定書をもらい、同意を確認した方がベストです。
 実務では、
  1. 社員が入社する。
  2. 会社が指定した銀行で口座を開設するように指示。
  3. 新入社員が口座を開設。
  4. 通帳のコピーなどを会社に渡す。
  5. これを以って、同意とみなす。
ということも多いでしょう。この方法は形式的にはベストではありませんが、法的には問題のない方法です。
 それから、振込口座は「本人名義」の口座となります。当然ですが、妻名義や子供名義の口座に振込むことは許されません。また、給料日に給与明細書等を交付する義務もあります。さらに、厚生労働省の通達で「給料日の午前10時頃までには引き出し可能なように実施する必要がある」となっています。

 給料日が休日の場合の取扱いに関する注意点は、給料日を繰り上げるか、繰り下げるかは会社の自由となります。

 この取り扱いは就業規則にその旨を記載します。具体的には以下のように記載しましょう。

(賃金の支払方法)
第○条 賃金は通貨で直接本人にその金額を支払う。ただし、従業員との書面協定により、従業員が希望した場合は、その指定する金融機関等の口座への振込みにより賃金の支払いを行う。
(賃金の計算期間及び支払日)
第○条 賃金は、前月21日から当月20日までの分について、当月25日に支払う(日にちは任意です)。ただし、賃金支払日が休日にあたるときは、その前日に支払う。

 税金や社会保険料は法令で定められているため、給料から「控除する義務」があります。
しかし、これら以外のものを控除する場合「賃金控除協定」が必要です。だから、この協定が締結されていない状態で、社員の給与から控除することは労働基準法違反となります。この部分を確認していない企業も多いので注意するポイントです。
 遡及賃金の支払対象は?

 当社は、賃金体系の改定を4月1日に行う予定でしたが、業績や原材料価格の見通しなど種々の課題を検討した給果、昇給を伴う新賃金規程の最終決定は10月1日にずれ込みました。
 この決定に伴って、昇給差額を4月に遡及して10月20日の給料支給日に支払うことを予定していますが、この場合、4月から9月末までの退職者にjま遡及して支給しないとすると違法になるのでしようか?


 新賃金決定後、その支払対象を在職者のみとするか、退職者を含めるかは当事者の自由とされていますので違法にはなりません。
 労働基準法第24条(賃金の支払い)には、「賃金の全額払い」の原則が定められています。
お尋ねのケースは、10月1日に新しい賃金体系を決定して、それに基づいて昇給した差額を4月に遡って1O月20日に支払うと決定した場合、4月から9月までの退職者について差額を支払わないと、全額払いの原則に反するかということですが、この点について同法の解釈例規として次のように示されています。

【遡及賃金の支払対象】
問=
「9月3日に本年1月からの新給与を決定し、遡及支払を行う場合、1月以降9月2日までの退職者については支給しないと規定するのは違法か。」
答=
「新給与決定後過去に遡及して賃金を支払うことを取り決める場合に、その支給対象を在識者のみとするかもしくは退職者をも含めるかは当事者の自由であるから、設問のごとき規定は違法ではない。」(昭23・12・4基収4092抜粋)
 一般的に、昇給の差額を遡及して支払う場合に、その性格上、遡及差額分は賃金の後払いであると考えられるので、退職者についても在職期間中に支払うべき賃金があれば、それを受ける権利があるのではないかという懸念が生じます。
 しかし、今回のケースでは、昇給が賃金体系の見直しも含めた賃金規程の改定に伴うもので、その確定日は当初予定していた4月1日ではなく10月1日となっています。
また、全額払いの原則は、あくまでも各賃金支払日に支払うべきことが確定している賃金についてのみ当てはまるものと考えられています。
 したがって、当初予定していた4月の改定に沿うように遡及して昇給の差額を支給すると決定した場合、4月から9月までの退職者にも支給すべきかどうかは、この解釈例規が示すとおり、「当事者(=使用者)の自由である」とされているので、在識者に対しては4月分まで遡及して差額を10月20日に支給、退職者に対しては差額は支給しない、と決定した場合でも違法ではないことになります。
 割増賃金の算定対象賃金から除外出来る諸手当
  • 基本給のみならず、原則として諸手当も割増賃金の算定対象賃金に含めなければなりません。
    但し、次に掲げる諸手当に限り、割増賃金の算定対象賃金から除外することが出来ます。(労働基準法施行規則(第21条)

    • (1)家族構成に応じて支給可否と支給額が決定される家族手当及び子女教育手当
    • (2)交通費実費又は通勤距離に応じて支給額が決定される通勤手当
    • (3)単身赴任者のみに支給される別居手当
    • (4)家賃又は住宅ローンの額に応じて支給可否と支給額が決定される住宅手当
    • (5)支払期間と計算期間の両方が1ヶ月を超えている手当

    ※特に中小零細企業においては、過去の様々な経緯から非常にたくさんの種類の諸手当が「調整給」として支給されているケースがよく見受けられます。
    これらの諸手当を割増賃金の算定対象賃金から合法的に除外する為には、上記の(5)に該当するようにその諸手当の支払方法を変更する必要が有ります。
    但し、月額で定めた諸手当を3ヶ月毎に3ヶ月分一括で支払うやり方では上記の(5)に該当しません。


当社は、賃金規程を改正し住宅手当を新たに支給しようと考えています。住宅手当の一律支給は、割増賃金の基礎に含めなければならない、と聞いていましたので、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円という区分を予定しています。
この場合、一律支給とはせず、扶養家族の有無によって差を設けていますので、割増賃金の基礎に含めなくてもよいのでしようか?
住宅に要する費用以外の要素に応じて定額で支給される場合は、割増賃金の基礎に含めなければなりません。

 労働基準法施行規則(第21条)により、住宅手当は残業代などの割増賃金の基礎から除外されていますが、対象となる住宅手当の要件は厳しく定められています。
「割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、『住宅に要する費用に応じて算定される』手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこと。」(平1 1 . 3.31基発170「1」(2))とされていますが、さらに具体例として次のように示されています。

住宅手当の具体例 

◆割増賃金の基礎から除外される住宅手当の例
  1. 住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給することとされているもの。
    例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持ち家居往者にはローン月額の一定割合を支給することとされているもの。
  2. 住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多く支給することとされているもの。
    例えば、家賃月額5〜10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
◆割増賃金の基礎に含めなければならない住宅手当の例
  1. 住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの。
    例えば、賃賃住宅居住者には2万円、持ち家居往者には1万円を支給することとされているようなもの。
  2. 住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給することとされているもの。
    例えば、扶養家族かある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの。
  3. 全員一律に定額で支給することとされているもの。
 今回の質問のように、扶養家族の有無で住宅手当の支給額に差を設けているような場合、そのような決め方は、「住宅に要する費用に応じて算定される」ものではありませんので、割増賃金の基礎に含める必要があります。
 住宅手当として割増賃金の基礎から除外するためには、「住宅に要する費用に応じて算定される」ことが必要です。この場合、費用の何パーセントというように、住宅手当の額を細かく決めなくても、費用が住宅手当を決める基準となっていればよいことになります。 
 残業はタイムカードの時刻を基準にすべきか?
 残業時間の算定は、タイムカードの時刻を基準にすべきでしょうか?
過去の裁判例等を見ると「タイムカードの時間から残業時間を推測している」ケースが見受けられます。

 実際に、裁判所や労働基準監督署の考え方は、
「特段の事情がない限り、事務所にいる時間は労働時間である」
「労働時間の管理にタイムカード等を使用している場合は、その記録が労働時間と推測される」となっています。

 以下の裁判ではタイムカードの時間で労働時間が推定されています。
○イーライフ事件東京地裁平成25年2月28日
→ タイムカードの時刻が退勤時刻と推定され、社員の主張は妥当
○京電工事件 仙台地裁 平成21年4月23日 
→ 管理をタイムカードで行っていたのであるから、そのタイムカードに打刻された時間は、仕事に当てられたものと推定される
 しかし、実際には「タイムカードの時間=残業時間」ではありません。残業時間は「決められた労働時間に処理しきれない仕事を行うため、残って働いた時間」なのです。だから、「タイムカードの時間が本当に残業時間といえるか?」という論点があるのも事実です。
 最近の裁判でこの考え方の参考になるものがあります。
<ヒロセ電機事件 東京地裁 平成25年5月22日>
  •  ○同社に勤務していた元社員が残薬代の支払いを求めて裁判を起こした。
    • →タイムカードがあるにも関わらず、支払われた残業代は「残業命令書」に基づくものであった。
    • →「残業命令書の残業時間 く タイムカードの残業時間」だった。
    • →タイムカードの残業時間が「本当の労働時間」と主張
○未払いの残業代と付加金を請求
 そして裁判所は以下の判断を行ったのです。<br>
○就業規則上、「残業は上司の命令による場合のみ」となっている
○上司の命令が無い残業は認められない
○実際の運用として、残業は本人の希望を踏まえ、毎週、具体的に残業命令書によって命じられている
○実際に行われていた残業についても、本人が「実時間」として記載し、翌日にそれを上司が確認
○残業時間は、残業命令書で管理されていたので、会社の主張を認める
この裁判でのポイントは
○残業は本人の希望を踏まえ、毎週の残業命令書により命じられている
○実際の残業について、本人が実時間として記載し、それを上司が確認している
ということです。このような運用が実施されている以上、いくらタイムカードが客観的なデータとはいえ、結果での判断を行っているので、残業命令が優先となるのです。
 残業時間の端数処理について
当社では、1日の残業時間の端数を15分単位で切り捨てています。
給与計算ソフトの設定でも15分切り捨ての設定があったので、法的にも認められていると思っていましたが、これは違法ですか?
 
  • 給料は【原則として】「その全額を社員に支払わなければならない」となっています。それは残業代、休日手当、深夜手当も同じです。

    • だから、残業時間について四捨五入や切り捨てはできないのです。
      さらに、残業時間の端数処理について次の処理方法が通達により認められています。

      • 1ヵ月間における残業、休日出勤、深夜残業の合計時間数に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる
      • 「給与額(基本給)÷労働時間(残業以外)という計算をし1時間当たりの給料、残業代に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる
      • 1ヵ月における残業代、休日出勤手当、深夜手当の割増賃金部分の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる

    • つまり、上記の方法ならOKということです。
      逆に言えば、5分や10分でも実際に労働した時間ですので、毎日の残業時間の端数切り捨ては、労働基準法違反となるのです。
    • 1日単位ではわずかな時間でも、積み重なると多額の残業代に発展する可能性もあります。
      だから、原則として法定労働時間を超える労働については、たとえ1分でも割増賃金を支払わなければなりません。そして、毎日の残業ごとに分単位の集計をすることが必要なのです。
    • しかし、多くの会社はここまでは知らないので、残業時間の端数処理を30分単位、15分単位などとしています。
      また、実際に販売されている給与計算ソフトの設定にも上記に対応する計算ができるものがほとんどです。しかし、この状態で運用していて労働基準監督署の調査があった場合、端数時間の処理の間違いを指摘される可能性は高いのです。

    • そして、

      切り捨てていた残業時間を集計
      その時間に見合う残業代の支払い を求められることになるのです。
      結果として、冒頭のご質問の場合も「違法状態」なのです。
  • では、上で、【原則として】と記載した意味を解説します。

    それは「残業の事前申請(承認)制」を導入すれば、「事前に許可した時間=残業時間」とすることができるからです。
    もちろん、1時間で事前許可したが、結果は1時間半かかった場合は1時間半の計算となりますが。
 残業時間と遅刻時間の相殺
Q 残業時間と遅刻時間を相殺した場合でも、残業に対する割増賃金は支払うべきでしようか?
  • 当社では、従業員が遅刻した場合、その日に残業していれば残業時間から遅刻時間分を差し引きし実労働時間を基準に残業の割増賃金を計算しています。
  • しかし、一部の従業員が、遅刻の時間と終業時刻後に残業する労働時間とは意味が異なるので、遅刻相当分を差し引く代わりに残業時間相当分は割増賃金を支払うべきだと主張しています。
  • このような場合、終業時刻後の残業時間について割増賃金を支払うべきでしょうか?
A 残業時間と遅刻時間を相殺した結果、その日の「実労働時問」が8時間を超えない限り、労働基準法上の割増賃金の支払義務はない。
  • 労働基準法第37条は、使用者が労働者に法定の労働時間(原則として1日8時間)を超えて労働させた場合には、「通常の労働時間又は労働日の賃金計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と定め、その率は時間外労働においては2割5分以上、休日労働においては3割5分以上としています。
  • 労働基準法上の労働時間とは、実際に労働した時間をいいます。
  • 始業9時、終業18時、休憩1時間の会社は、通常勤務の場合の実労働時間は8時間となりますが、例えば、1時間遅刻した従業員がその日に1時間残業しても、実労働時間は8時間ですので、割増賃金を支払う必要はないことになります。
  • 行政通達でも「時間外労働について法第36条第1項に基く協定(時間外労働に関する協定)及び法第37条に基く割増賃金の支払を要するのは、実働時間を超えて労働させる場合に限るものである。従って、例えば労働者が遅刻した場合その時間だけ繰り下げて労働させる場合には、1日の労働時間を通算すれば法第32条、または第40条の労働時間を超えないときは、同協定及び法の割増賃金の支払は必要ない(抜粋)」(昭29・12・1基収6143、昭63・3・14基発150ほか)とされています。
  • このような取り扱いをするためには、就業規則に「割増賃金は、実労働時間が8時間を超えた時間について支払う」などの規定を設けておくことが必要でしょう。
  • ところで、1目8時間労働としている事業場で、遅刻した時間を超えて残業させる場合には、法定の労働時間を超えることになりますので、協定の締結・届出とともに超過した時間に対する割増賃金が必要となります。
  • また、当然のことながら、その日の勤務での相殺はできますが、遅刻をした日ではない別の日の残業時間と相殺することはできません。
 払うべき残業代、払わなくてもいい残業代とは?
社員が勝手に残って仕事をしているが、それでも残業代を支払うのか?
 
  • 残業は一般的に会社の指示で行うものなので、業務命令の下に行うことが原則です。
    しかし、社員が勝手に残って仕事をしていることもあります。原則論では「社員が勝手に残っていても、仕事をしている限り残業とみなされる」のですが、勝手に残って仕事をしていても、残業にならない場合もあるのです。

    では、「どこまでが」業務命令の下にあるといえるのでしょうか?
    これに関連する裁判があります。

    <とみた建設事件名古屋地裁平成3年4月>

    • 時間外労働でも使用者の指示に基づかない場合の割増賃金は不要

      しかし、
    • 業務が所定の労働時間内に終了しない量
    • 残業が恒常的となっている
    • というような場合は、具体的な指示がなくても黙認したとすべきと判断されています。

    また、同じような別の裁判もあります。

    <三栄珈琲事件大阪地裁平成3年2月>

    • 喫茶店に営業する社員は営業時間を自分で決定できるが、営業成績を向上させるよう会社から指示を受けていた
    • 会社の暗黙の指示があったとすべき
    • 黙認による時間外労働があったとし、残業代の請求が認められた

    この2つの裁判のポイントは

    • 残業が恒常的となっている
    • 会社からの指示が明確でなくても、発せられている
    • 残業していることについて、会社が黙認している

    ということです。このような条件が含まれていたら、残業代が必要になるのです。しかし、これらと反対で会社が勝訴し、残業代が不要となった裁判もあります。

    <吉田興業事件名古屋高裁平成2年5月>

    • 始業時刻前に行った労働(現場の掃除)
    • 終業後、翌日でもいい後片付け
    • これらは社員の自発的な行為で、会社の指示に基づくものではない

     つまり、

    • 会社の指示がない
    • 業務の必要性がない
    • 社員が勝手に行った

    という業務は残業代の対象にならないのです。
    だから、社員が勝手に残って仕事をしていても、残業にはならないこともあるのです。

    なお、吉田興業事件は裁判なので、こういう結論になりましたが、これが労働基準監督署の調査であれば、逆の結論(残業代あり)となったことでしょう。なぜなら、労働基準監督署は「形式」を中心に判断しますが、裁判では「実態」をより吟味するからです。

    だから、労働基準監督署の調査では「残業代あり」とされたが、裁判では「残業代なし」とされるのは、こういう理由からなのです。
 限度時間を超える時間外労働はどこまで認められる?
当社では、毎年定期に36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結していますが、実態をみると、協定の限度時間を超える場合がみられるので、次回から「特別条項付き36協定」に切り替える予定です。

この場合、限度時間を超える時間外労働はとこまで認められるのでしょうか?
また締結するにあたって留意するべき点はあるでしょうか?
 
  • 特別条頂付き36協定の延長時間

    • 36協定で定める時間外労働の限度時間は、原則として厚生労働大臣が定めた基準の範囲でなければなりませんが、臨時的に限度時間を超えてさらに時間外労働を行わせなければならない特別の事情が予想される場合には、特別条項付き36協定を結べば、例外的に限度時間を超えて労働させることができます。
      • ただし、この場合であっても、原則となる限度時間を超えて労働させることができる時間数についても協定で限度を定めておくことが必要です。
        この延長時間の限度については基準などは定められてはいませんが、無制限に等しいといえるような延長は、健康管理の観点からも好ましくありませんので、労使間で協議して良識的な範囲で決めておくべきでしょう。

    • 特別条頂付き36協定を締結する際の留意点

      このほか、特別条項付き36協定を締結するにあたっては、次の点に留意しなければなりません。

      • @.限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情を定めること。
        • この場合の「特別の事情」とは、臨時的な ものであって、全体として1年の半分を超えないことが見込まれ、事情ができるだけ具体的なものであることが必要です。したがって、特に理由を限定せずに、単なる「業務上の必要があるとき」や、「業務が繁忙なとき」という事情は臨時的であるとは認められません。
      • A.特別の事情が生じた場合に、限度時間を超えるに際して労使がとるべき手続を定めておくこと。
        • 事前の協議や通告など、手続を具体的に定めることが必要です。
      • B.限度時間を超えることのできる回数を定めること。
        • 1年のうち半分を超えないことが必要です。
        • 回数は、一定期間の長さによって異なりますが、一定期間が1ヵ月であれば6回、1週間であれば26回が限度となります。
      • C.限度時間を超える時間外労働をできる限り短くするよう努めること。
      • D.限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率を定めること。
        • 割増賃金の率は、法定の割増賃金率を超える率とするよう努めることとされています。
  • 【特別条項の例】

    • 一定期間における延長時間は、1ヵ月45時間、1年360時間とする。
      ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、6回を限度として1ヵ月60時間まで、1年420時間まで延長することができる。
      この場合の割増賃金率は、1ヵ月45時間を超えた場合は30%、1年360時間を超えた場合は35%とする。
 在宅勤務で深夜残業代は必要ですか?
  • IT環境の発達もあり、在宅勤務は数年前から注目されています。また、当初はライフワークバランスの決め手として推奨されてきました。
    最近では東日本大震災後に在宅勤務を導入し、節電対策も含め、これを継続させている会社もあります。

    この流れの中で「在宅勤務の労務問題」のご相談が増えました。中でも一番多いのが「在宅勤務者が深夜にメールをした場合などは残業代の支払いが必要になりますか?」といった残業代についてです。

    • 在宅勤務の場合は労働時間の明確な管理はできませんが、もちろん在宅勤務者も労働基準法が適用されます。だから、「残業の時間帯に働けば、残業代を払わなければなりません」というのが結論です。
    • この話をすると、多くの社長は納得されません。「自宅で仕事をし、勤務時間も自由なのに、遅くなったら残業等の割増賃金が必要なんて…」とこぼされます。特に、深夜や休日に働いている事実があれば、残業手当、深夜手当、休日手当の支払いが必要になるのです。
    • 実際に労働基準監督署の調査で在宅勤務者の労働時間を調べた事例も多くあります。そして、未払い残業代が指摘されるケースもよくあるのです。
      在宅勤務の社員だからといって、労働基準法は見逃してはくれません。
    • とはいえ、無尽蔵に残業代を認めていたら、経営が成り立つはずもありません。では、どうしたらいいのでしょうか?
      それは「みなし労働時間制」の導入です。

      みなし労働時間制とは以下となっています。

      • 実際の1日の労働時間が5時間だったとしても、所定労働時間(例:8時間)の労働をしたものとみなす(逆に、1日10時間働いた場合、8時間とはならない)
      • 作業量が多いことが予め分かっている場合は業前から残業があったものとみなす(最初から残業代を支払う。残業代は最初から固定させてしまう)

      • だから、在宅勤務者がいる場合、以下のような条文を就業規則に記載し、運用することが必要です。
        第○条(事業場外の労働)
        主として事業場外において業務に従事するため、就業時間を算定しがたい者は、所定労働時間労働したものとみなす。また、業務量が多い場合は、あらかじめ残業時間を設定し、その範囲内で業務を完了することとする。
      • この規則に従って在宅勤務の社員を管理しましょう。
        そうすれば、厚生労働省の「在宅勤務のガイドライン」の条件を満たすことにもなり、深夜労働などは認められなくなり、深夜残業代などを支払わなくてもいいことになるのです。
      • 「みなし労働時間制を導入する
        →想定される残業代は事前に設定する
        →想定外の残業、深夜労働などの事前申請、許可、報告を徹底する
        →深夜や休日にメール等で報告させない」という条件ならば、労働時間とみなされないのです。特にメールの送信時間を注意する必要があるでしょう。
 半日勤務の日の休業手当はどうなるか?
土曜日が半日勤務の会社で、土曜日に会社の都合による休業をした場合の休業手当はどうなるのでしようか?
当社は、1日の所定労働時間が月曜日から金曜日まで7時間、土曜日は4時間で、1週39時間の勤務体制となっています。
今回、取引先の都合でどうしても土曜日に休業せざるを得ない状況となりました。この場合、従業員に対する休業手当の考え方ですが、月曜日から金曜日までの労働時間に対する賃金の6割を支払うのはどうも納得できません。

土曜日の場合は、労働時間を1日4時間として換算した賃金額の6割でよいのではないでしょうか?
 
  • 土曜日の休業であっても、月曜日から金曜日のいずれかの日に休業させた場合と同じ額の休業手当を支払うことが必要です。

    • 労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められています。
      お尋ねのケースでは、土曜日の休業手当は4時間に比例した賃金を基礎としてもよいのではないかとのことですが、この解釈として通達では、
      • 「労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき休業の場合においては、その休業期間中、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定しており、従って1週中のある日の所定労働時間がたまたま短く定められていても、その日の休業手当は平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」としています。
    • さらに
      • 「1日の所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければならないから、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない。」(昭27.8.7基収3445)としています。
  • 土曜日の場合、所定労働時間を考慮すると休業手当が過払いになるのではないか、という考えも理解できます。
    しかし、通達でも示されているように、あくまでも休業手当は「平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」ことになります。
    • つまり、土曜日であっても他の曜日であっても、支払うべき休業手当は同じになるということです。
    • 今回の場合、仮に土曜日の4時間労働を基準として休業手当を支給した場合、その額が平均賃金の100分の60相当額に満たなければ、その差額を支払うことが必要です。
 給料は一律どのぐらいまで下げられますか?
経営状況が芳しくないので、社員の給料を削減せざるを得ないのですが、どのぐらいまで下げても大丈夫でしょうか?

 法律では「給料をいくらまでなら下げてもOK」という記載はありませんが、労働条件をむやみに下げてはいけないと決まっています(「労働条件の不利益変更」といいます)。
 給料を下げることは社員にとっての「労働条件の不利益変更」となるので、会社は給料の減額を決断できない場合が多いのです。
ただ、会社経営は良い時期ばかりではありませんので、社員の給料を減額せざるを得ない場合もあります。そんなとき、「どの程度ならOKか?」と考えるのは自然な流れです。

 法律での記載はありませんが、参考となる裁判があります

<住友重機械工業事件 東京地裁 平成19年2月14日>
  • 経営不振に陥った会社が賃金規定を変更し、10%の給料減額を含む経営改善策を打ち出す(給料減額は2年間のみ)。
  • 経営改善策について、労働組合から合意を得て、減額を実行した(社員の約98%が労働組合員)。
  • 給料減額に納得のいかない社員(8名)が裁判に訴えた(減額前の給料と減額後の給料の差額等を請求、給料を下げる合理性がないと主張)。
そして、裁判所の判断は以下となったのです。
  • 賃金規定改定前は2期連続の赤字であり、経営改革は必須である→賃金規定改定による減額は合理性がある。
  • 労働組合の合意があったことは約98%の社員(組合員)の全員から同意を取りつけたことと同じ効力がある。
  • 2年間の限定措置である。
  • 給料の減額は合理的な理由があり、会社の主張を認める。
 この裁判では10%の給料減額について、会社の存続の危機の状況から減額せざるを得ないという結論になったのです。

 さらに、この裁判のポイントは、
  • 社員の大多数が加入する組合の合意が、合理性証明の後押しとなった。
  • 給料の減額が2年間の時限的なものだったということです。
なお、「10%ならOK」ということではありませんので、あくまでも個別事例とお考えください

 実際、10%というのはかなり高い事例です。別の判決で給料の減額が認められたものもありますが、これは約6%の減額でした。
<X銀行事件 東京地裁 平成25年2月26日>

 この2つの裁判からもいえるのは、
  • 「経営状態の悪化」
  • 「労働組合や大多数の社員の同意」
  • 「限定措置や緩和措置が取られているか」
が必要ということです。

給料減額を検討する際は、会社の状況から総合的に判断せざるを得ませんので、その減額率が「どこまでOKか?」には基準がありません。
 給料減額に異論がなければ承諾となるのか?
 アベノミクスで「給料を上げよう」と叫ばれていますが、中小企業はまだまだ厳しいところが現実で、原料・燃料高に喘ぐ製造業者の中には「給料を下げたい」という話しも聞かれます。
 しかし、給料を下げる,ことは社員にとっては厳しい問題でもあり、法的にも「労働条件の不利益変更」は社員の同意がなければ禁止となっています。ただし、同意がないままに減額し単に社員が下がった給料をもらい続けたら、これは「承認した」とみなされるのでしょうか?

これに問する裁判があります。

<技術翻訳事件 東京地裁 平成23年5月17日>
  • 会社の業績が悪化したため、社員の給料を20%下げることとした。
  • 役職者が出席する会議で制作次長は反対した(役職者のみが参加する会議だった、役職者以外の社員にも説明はされたが、実質的に異議を述べる機会は与えられなかった)。
  • 減額された給料が振り込まれたが、制作次長は抗議は行わなかった。
  • その後、制作次長は退職し「減額は違法である]と裁判に訴えた。
そして、裁判所の判断は以下となったのです。
  • 給料は労働条件の最も重要な要素であるので、合意内容を書面化することが望ましい。
  • 就業規則に基づかない給料の減額は賃金債権の放棄と同じぐらい厳格に行うべき。
  • 社員から合意書などの承諾がない場合、それに代わる合理的な事情がなければ認められない。
  • 本件は合意書面がなく、また、これに代わる合理的な事情がない。
以上により会社が敗訴したのです。

 この裁判のポイントは「合意書等の書面があれば、給料の減額を認める、書面等がなくても合理的な理由があれば認められる」という点です。
 しかし、実際に合意書がなくても認められている裁判もあります(エイバック事件 東京地裁 平成11年1月19日)。
この2つの裁判の違いは「書面がなくても合理的な理由があるかないか」ということです。
具体的には「給料が下がるという不利益について、社員に周知徹底されていたか?」、「公的な説明会の場など、異議を申し立てる機会が適正に与えられていたか?」ということがポイントになります。
また、以下の要素も加味されて判断されています。
  • 社員が被る不利益の程度
  • 会社の変更の必要性、内容、程度
  • 変更後の就業規則、給与額の相当性
  • 給与を減額する代償としての措置、その他の労働条件の改善状況→例:労働時間の短縮
  • 社員等との交渉の経緯
  • 同業他社における状況
 以上のように給料を下げることについて必ず合意書が必要というわけではありません。
しかし、合意書がなくても給料を下げることが法的に認められるには社員の合意は必要です。また、後でトラブルを回避することを考えれば、合意書を提出してもらった方が無難です。
 制裁で減給、平均賃金算定の起算日は?
Q 当社は、このほど就業規則の定めによって、減給の制裁を行うことになりました。
  • この制裁事由の発生日(行為日)は5月20日、社内で懲罰委員会の結果、減給の制裁を決定したのが5月30日、対象従業員に通知したのが6月5日となっています。
  • 当社の賃金締切日は毎月末日ですが、この場合、5月20日に制裁事由が発生していますので、直前の賃金締切日となる4月末日を平均賃金算定の起算日としてよいのでしようか?
  • A 減給の制裁の相手方である従業員に意思表示が到達した日が6月5日であれば、その直前の賃金締切日となる5月末日が平均賃金算定の起算日となります。
  • 平均賃金は、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金、災害補償、減給の制裁の制限額の算定基礎として用いられます。
  • 労働基準法第91条では、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が「平均賃金」の1日分の半額を超えることはできないとされています。
  • そして、同法第12条では、
  • 「@平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。(中略)
  • A前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。」と定めています。
  • この「算定すべき事由の発生した日」とは、平均賃金を算定する際の起算日ですが、具体的には、
    • 解雇予告手当=労働者に解雇の通告をした日
    • 休業手当=休業させた日(休業させた日が2日以上にわたる場合は、その最初の日
    • 年次有給休暇=年次有給休暇を与えた日(年次有給休暇が2日以上にわたる場合は、その最初の日)
    • 災害補償=事故が発生した日または診断によって疾病の発生が確定した日
    • 減給の制裁=減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日(昭30・7・19 29基収5875)
    • とされています。
  • 今回のケースでは、減給の制裁事由の発生日が5月20日であり、平均賃金算定の起算日は、直前の賃金締切日である4月末日になるのではないかとのことですが、労働基準法の解釈として示されているとおり、減給の制裁の場合には、実際にその事由の発生した日(行為日)ではなく、減給の制裁の意思表示が相手方、つまり対象となる労働者に到達した日を算定すべき事由の発生した日とします。
  • したがって、6月5日に通知したのであれば、5月末日が算定の起算日となります。
 旅費(日当と宿泊費)を一方的に引き下げられるか?
旅費のうち日当と宿泊費の支給基準を引き下げたいのですが、旅費の具体的な内容は就業規則に定めていないので、従業員代表者の意見を聴くなど、法律で定める就業規則の変更手続きをとらなくても問題はありませんか?
 
  • 就業規則の変更

    • 労働契約法(第8条)において、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定められているように、労働条件の変更は労使間での合意が成立していることが原則となっています。
      また、合意することなく就業規則の不利益な変更により労働条件を引き下げる場合においては、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が以下の事項に照らして合理的なものであるときは、労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとすると定められています。(同法第9条、第10条)
      • 労働者の受ける不利益の程度
      • 労働条件の変更の必要性
      • 変更後の就業規則の内容の相当性
      • 労働組合等との交渉の状況
      • その他の就業規則の変更に係る事情

  • 旅費の基準や規定

    • 会社の命令による出張などに要する「旅費」には、実費が精算される運賃だけではなく、出張に通常必要とされる費用としての宿泊費や日当なども含まれるのが一般的ですが、旅費であっても基準を定めて労働者に支給する場合には、労働条件の一部と考えることができます。
    • 旅費に関する事項は、就業規則に必ず記載しなければならないものではありませんが、旅費に関して、その事業場のすべての労働者に適用される規定をつくる場合は、就業規則の中に記載しなければならないとされています。
    • また、就業規則本体とは別に基準や規定をつくっても差し支えないのですが、その場合は、就業規則に付属する規定とみなされますので、本体と同様な扱いが求められます。
    • したがって、労働基準法の定めにより労働者ヘの周知と就業規則変更の手続き(意見書を添えて届け出る)は必要となります。
  • 旅費の引下げ

    • 就業規則等に、日当や宿消費の支給額等に基準があって、それを引き下げる場合は、「労働契約の内容である労働条件の不利益な変更」あたるので、原則的には一方的な引下げはできず、労使間での合意が必要となります。
    • ただし、合意がない場合でも、変更の内容を労働者に周知させることと、変更が「合理的なもの」であること、という労働契約法で定める要件をいずれも満たした場合には、変更後の基準は有効となります。
      • 今回のケースのように、就業規則に規定していないからといって、事前の説明などもなく旅費の基準を引き下げると、不満が発生しトラブルのもとになる可能性が高くなります。
      • 無用なトラブルを防ぐためには、事前に引下げの内容だけではなく、その理由なども労働者によく説明して、意見を聴くなど、十分に理解を得られるようにすることが大切でしょう。
 手当カットで最低賃金を下回る?
当社は試用期間中の者について、給与規程に基づいて通常よりも低い給与額としています。支給しているのは月額の基本給のほかに皆勤手当、通勤手当、残業手当です。
このほど、試用期間中の社員を監督する者から、遅刻や早退が1回でもあって皆勤手当が全額カットされると月によっては最低賃金を下回るのではないか、という指摘がありました。
この給与を定めた雇用契約書には合意してもらっているのですが、このままでは問題になるのでしょうか?
 
  • 【最低賃金の対象となる賃金】

    • 使用者は、法律により労働者に対して国が定める最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないことになっていますが、最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。ただし、次の賃金は最低賃金の対象とはなりません。

      1. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
      2. 臨時に支払われる賃金
      3. 時間外労働、休日労働および深夜労働の手当
      4. 精皆勤手当、通勤手当および家族手当

  • 【月給制と最低賃金】

    • 現行の最低賃金は時間額で決められていますので、月給制の労働者の場合、実際に支払われる賃金が最低賃金額以上かどうかを確認するためには、次のような計算で、対象となる賃金の月額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金の時間額と比較します。

      • 月給額÷1ヵ月平均所定労働時間数 ≧ 最低賃金額。
      • たとえば、1年間の所定労働日数が255日(1日8時間勤務)、基本給が130,000円、皆勤手当が10,000円、通勤手当が20,000円、合計が160,000円だとすると、皆勤手当と通勤手当は算入しないので、
      • 130,000円÷(255日×8時間÷12ヵ月)=764.7円
      • となり、この額が最低賃金額以上であることが必要となります。

    • 今回のケースでは、皆勤手当がカットされると最低賃金を下回る、という指摘があったようですが、皆勤手当はもともと最低賃金の対象とはなりませんので、皆勤手当の支給の有無にかかわらず、基本給のみで時間額に換算すると、すでに最低賃金を下回っている状態にあることが考えられます。
    • たとえ最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めていたとしても、最低賃金額に満たない賃金を支払った場合には、少なくとも最低賃金額との差額を支払わなくてはなりませんので、早急に皆勤手当のあり方も含めて試用期間中の賃金の見直しが必要となるでしょう。
  • 【最低賃金の減額の特例許可制度】

    • 雇用する労働者に一定の障害があって一般の労働者より著しく労働能力が低い場合、就業規則などに定められた試の使用期間中である場合などに、労働者を特定した上で、使用者が都道府県労働局長の許可をあらかじめ受けることを条件として、特例的にその労働者に適用する最低賃金の減額が認められています。
      • ただし、試の使用期間中にある労働者について減額の特例許可の対象となるのは、減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限られます。
 定額の賞与は「賞与」ではない?
当社の賃金規程の賞与に関する定めでは、「毎年6月に基本給の1.5ヵ月分、12月に2.5ヵ月分の賞与を支給する」となっており、実際にもその定めに従って支給しております。

このように賃金規程において賞与の支給額まで定めている場合、賞与とはみなされないという指摘を受けましたが、このような規定では問題があるのでしようか?
  • 現状の規定では、賞与の支給額を確定して支払うことをあらかじめ定めていることになりますので、労働基準法の上では、賞与には該当せず、通常の賃金として毎月支払いの対象となります。

    • 労働基準法第24条第2項では、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない。」と定められています。
    • また、ここでの「賞与」については、通達で以下の通り示されています。

      • 「賞与とは定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうこと。
        定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと。
    • したがって、かかるもので施行規則第8条に該当しないものは、法第24条第2項の規定により毎月支払わなければならないこと。」(昭22・9・13発基17)

      • (参考:労働基準法施行規則)

        第8条 法第24条第2項ただし書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。

        1. 1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
        2. 1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
        3. 1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
    • このような根拠から、質問のケースのように「毎年6月に基本給の1.5ヵ月分、12月に2.5ヵ月分の賞与を支給する」と、賃金規程に確定した支給額まで定められている場合は「賞与」とみなされず、労働基準法施行規則第8条の「精勤手当」、「勤続手当」、「奨励加給又は能率手当」のいずれにも該当しないため、同法弟24条第2項の定めにより、毎月払いの対象ということになります。
    • したがって、あくまでも「賞与」として支給するのであれば、賃金規程の上で支給額が確定しないような定めにしておくことが必要です。
      • たとえば、会社の業績などに応じて賞与の支給時期や額の変動が予想されるようであれば、「賞与は、冬期の業績を勘案し原則として年2回、6月と12月に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由かある場合には、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。」としておけば問題ないでしょう。
 「解雇予告手当」の経理

 解雇予告手当は、どういった経理処理をしたら良いですか?
  • 解雇予告手当は、退職を原因として一時に支払われるものであるため、金額の大小に関わらず退職所得となります。(所得税基本通達30-5)

    • (解雇予告手当)
      労働基準法第20条《解雇の予告》の規定により使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する。
      (昭63直法6−1、直所3−1改正)

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を使用人から提出してもらい、所得税の源泉徴収を行います。この場合、使用人は改めて確定申告する必要はありません。 。

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